全国3カ所を巡回する「ロボットと美術」展に相澤ロボットが登場
昭和の"ロボット博士"、故・相澤次郎氏が、自身の設立した財団法人日本児童文化研究所で誕生させた大型ロボット兄弟、通称「相澤ロボット」。昭和30年代半ばから50年代にかけて活躍し、EXPO'70 大阪万博への出展をはじめ全国のデパート等を回って多くの人たちに未来への夢を与えた彼らが、現在、青森・静岡・島根の県立美術館3館を巡回して開催中の「ロボットと美術 ~機械×身体のビジュアルイメージ」展に出展されている。
相澤ロボットについてはこれまで何度かレポートをお届けしたので、詳しくはぜひそちらもご参照いただきたいのだが、寄託展示されていた「ゆうばりロボット大科学館」の閉館に伴い12"人"(次郎氏はロボットを必ずこのように数えた)の大型ロボットたちが東京で存続していた財団に"里帰り"したのをきっかけに、2009年より修復プロジェクトが始動。ロボット業界有志と厚木市にある神奈川工科大学の学生たちによるボランティアベースでの修復作業が順次進められてきた。
プロジェクト始動後初のお披露目の場となった「ジャパンロボットフェスティバル2009 in TOYAMA」に4人が出展された後、2010年1月5日(火)~1月17日(日)に札幌市青少年科学館で開催された「大ロボット展2010」にも「一郎」と「テッちゃん」の2人が出展されたが、いずれも短期間の展示だったため、今回の「ロボットと美術」展は全国3カ所で約半年に渡り、より多くの人が相澤ロボットに触れられる機会となった。
「ロボットと美術」展はそのタイトル通り"ロボットと美術との関わりの歴史を紹介し、その文化的意義を問うもの"で、その趣旨を"20世紀に生み出された「ロボット」を科学技術と芸術、そして私たちの身体観の相互的な結びつきを明らかにしようとする試み"としている。
「ロボット」はチェコ語の「労働」を語源とした造語で、文学者カレル・チャペックが1920年に発表した戯曲『R.U.R.(ロッサム社のユニバーサル・ロボット)』で初めて使われた。だがロボット的な存在は、ユダヤ教のゴーレムやギリシア神話の青銅巨人タロスなど伝説や神話にも数多く登場するし、精巧な機械仕掛けの自動人形(オートマタ)も18世紀には作られていた。チャペックの『R.U.R.』は有史以来脈々と続いてきた"人に作られ人に使役される、人に似たもの"という系譜に「ロボット」という決定的な名前を与えたと言えるだろう。
『R.U.R.』は世界各地の舞台で上演されて話題を呼び、さらに1927年には魅惑的な女性ロボット「マリア」の登場する映画『メトロポリス』も公開され、現実世界にもロボットが登場。かくして史上初の世界的なロボットブームが巻き起こったのだが、当時のロボットのイメージには、両大戦間のマシンエイジを反映してキュビズムや未来派、シュルレアリズムなどの前衛芸術で描かれた機械的人体像も大きく影響していた。
「ロボットと美術」展は、こうしたロボットのイメージのなりたちと、そこから現代に至るまでの歴史を様々な分野の豊富な展示物で解き明かす。ロボットファンなら必見の展覧会となっている。
小松崎茂「パトロールロボット」/バンダイ蔵 |
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