既報の通り、ソフトバンクモバイルは2010年冬春モデルの新製品を発表した。発表の中心となったのはAndroidを搭載したスマートフォンで、孫正義社長は、「iPhone/iPadが王者で、ソフトバンクの主力機種なのは揺るぎないが、iPhone/iPad以外を望む一部の人のために、こだわり抜いた端末を発表したい」として、Android端末にも注力していく考えを示している。
最先端にこだわるソフトバンク、全機種Froyoを搭載
今回発表されたのは、Android搭載スマートフォンが6機種(ディズニーモバイル向けを入れると7機種)。シャープ製「GALAPAGOS Softbank 003SH」「GALAPAGOS SOFTBANK 005SH」の2機種、台湾HTC製「HTC Desire HD Softbank 001HT」、米Dell製「DELL Streak Softbank 001DL」、中国Huawei製「Softbank 004HW」、中国ZTE製「Libero SoftBank 003Z」の6機種で、全機種に最新のAndroid OS 2.2を搭載した点が特徴だ。
孫社長は、「一番大きなこだわりは、技術にこだわる、モバイルインターネットにこだわるソフトバンクだからこそ、最先端のOSを全機種に搭載した」と強調。国内で販売されたAndroid端末は、Android 1.6または2.1を搭載したものがほとんどだが、孫社長は「Android 2.1と2.2では雲泥の差がある」と指摘する。
Android 2.2(Froyo)を搭載したことで、「PC並みのインターネット体験ができる」(孫社長)のが特徴だ。通常のサイトだけでなく、Flash Player 10.1を利用できるため、Flashを利用したYouTube、ニコニコ動画、USTREAMといった動画配信サイトなどで、動画をそのまま視聴できる。「(ほかのAndroidのバージョンと比べて)見られる、見られないは決定的な差」(同)。
Android 2.2の機能。こちらはFlash対応。 |
アプリの高速化もされており、このデモではGoogle Earthが起動して画面が表示されるまでの時間を測定しており、2.2の方が早く起動していた |
さらに「スマートフォンの魅力」(同)であるアプリの処理速度が向上し、標準のアドレス帳でヨミガナ検索、外部メモリへのアプリケーションのインストールもサポート。Google Chromeで閲覧中のWebサイトのURLや選択したテキストなどをAndroid端末に1クリックで送信するChrome to Phone機能も搭載。Microsoft Exchangeのメール、予定表、連絡先の同期機能に加え、「企業にはこれがないと進められない」(同)というリモートロック/削除機能も備えている。「ソフトバンクは最先端のテクノロジーに常にこだわるので、全機種Android2.2を搭載した」と孫社長は胸を張る。
孫社長は「iPhoneは王者であり続け、強みは揺るがないと心から信じている」と話し、今後も全力で売り続けると強調する。その上で、iPhone/iPad以外を求める一部の人に、フィーチャーフォンの機能をすべて盛り込んでAndroid端末を販売していく考えを示している。その上で、「従来型の携帯も手を抜かずに、最新・最高機能を追い求めていく」(同)としている。
電子書籍やゲームもAndroidに
サービス拡充にも力を入れ、「ソフトバンク ブックストア」を開設する。GALAPAGOS 003SHの発売に合わせ、12月上旬以降にサービスをスタートさせる予定で、スタート時点で10万点以上の電子書籍を準備する。「最新の話題作から過去の作品まで」(同)を用意し、携帯料金と合算して支払いを行える。
ブックストアでは、アップルのiBookstoreライクな外観の本棚アプリで購入した書籍を管理し、アプリ上から購入画面に遷移できる。検索や人気ランキングなどで電子書籍を検索し、購入自体は出版社などのコンテンツプロバイダ(CP)から購入する仕組みだ。
スタート時点で10万点の書籍を用意できたのは、これまでフィーチャーフォン向けに配信してきた電子書籍コンテンツをそのまま配信できるようにしたからだ。海外とは異なり、国内ではフィーチャーフォン向けに電子書籍が一般化しており、そのコンテンツをフォーマット変更などせず、そのまま配信できるため、CP側に手間やコストがかからず配信できる。
なお、iPhone/iPadなどに提供しているビューンでは、Androidの新端末発売に合わせてさらに9媒体を追加し、40の新聞・雑誌を配信する。iPhoneなどにも同様に媒体は追加される |
対応するのはDELL Streakなど |
フィーチャーフォン向けのため、SIMカードに関連付けたDRM(デジタル著作権管理)を装備しており、購入時のSIMカードと一致しない場合は閲覧できない代わりに、SIMカードが同じなら、Android端末を買い換えても書籍を移行できる。アプリ側の対応フォーマットはXMDF、.book、Booksurfingの3形式で、本棚に表紙が並ぶ感覚で管理できる。書籍をタッチすると、それぞれのフォーマットに対応したビューワーアプリが立ち上がる仕組みだ。
さらに、ユーザーが自分で作成した電子書籍などを表示することを想定しており、PDF、Word/Excel、EPUBの各ファイルの管理にも対応。購入した書籍とは異なり、表紙の表示などは行えず、外部メモリカード内のコンテンツを表示するファイルエクスプローラー的な動作をする。購入した書籍と同様に、書籍ファイルにタッチするとそれぞれのフォーマットに対応したアプリが起動して閲覧する仕組みだ。なお、青空文庫などで使われるテキストファイルへの対応は「当初はあったが省かれた」(ソフトバンク担当者)らしく、今後のバージョンアップでの対応を検討しているそうだ。また、ZIPファイル内の画像ファイルの管理は非対応だ。
電子書籍の料金は各CPによって異なるが、携帯料金と合算して支払うため、携帯電話加入3カ月以内は1カ月3,000円まで、それ以降は1カ月1万円までしか購入できない。対応機種は現在003SH、005SHでアプリをプリインストールする。また、DELL Streak 001DLも対応予定。
Android向けアプリ配信プラットフォームの「Android Market」では、マーケット上のタブにソフトバンクのおすすめアプリなどを紹介する「SoftBank ピックアップ」他部を設け、さらに「携帯料金と一緒に(アプリ料金を)決済できるのはソフトバンクだけ」(同)と言うように、Androidアプリを、日本円で、かつ携帯料金と合算して支払いを行える。
そのほか、「選べるかんたん動画」「S-1バトル」「ギフトお得便」の3サービスにも対応。ソーシャルゲームのジンガジャパンとともに、「FarmVille」の日本語版を先行提供するほか、mixiゲーム「まちつく!」でアイテムと交換できる通貨を期間限定で提供する。
さらにmixiとコラボレーションし、「ソーシャルフォン」と銘打ってmixiの情報とAndroidを連携させる。スマートフォンの電話帳とマイミクの情報が連動するほか、マイミクの現在地を地図上に表示することが可能で、これもソフトバンク向けに先行提供する。
「今までのスマートフォンはどちらかというとビジネスよりのイメージだったが、それとは一線を画し、ソフトバンクらしい、楽しいエンタメ充実のスマートフォンにしたい」と孫社長は意気込んでいる。「モバイルインターネットがライフスタイルを変える動きが出ている。世界中が、日本中が新しい時代の幕開けを体感するようになってきた」と現状をまとめ、「スマートフォン全盛の時代がやってくる。本当にソフトバンクが活躍する時代が来たと思っている」と話す。
国内のスマートフォン市場は、上半期で8割をiPhone、残り2割をAndroidなどが占めているが、その2割に対しても「こだわり抜いた端末」(同)をリリースしてシェアを獲得していきたい考えだ。