――この作品には、様々な映画やバラエティ番組のパロディ風の映像が含まれていますよね。

柴田「そうですね、そういったアイディアは脚本段階からなんとなくありました。劇中で映画『犬神家の一族』風に両足が川から出ているシーンがあるんですが、実は映画『犬神家の一族』で実際に使用された佐清の足を使っているんですよ(笑)。この作品のプロデューサー・一瀬隆重さんが市川崑監督のリメイク版『犬神家の一族』を手がけた方で、ちょっと相談してみたら借りることができたんです。あれはかなり感動しましたね。映画のなかで別の作品のモチーフを使用できるというのは、初めて映画を撮る人間にとっては凄くありがたいことですし、同時に映画ならではと思った瞬間でしたね」

映画『さらば愛しの大統領』

史上最悪の不況と治安の悪化に苦しむ大阪府知事に世界のナベアツが当選。大阪の独立を宣言し、大阪合衆国初代大統領に就任するのだが、そんな彼のもとに暗殺予告が届けられる。大阪府警のアホ刑事コンビ、早川刑事(宮川大輔)と番場刑事(ケンドーコバヤシ)がその犯人を突き止めるために立ち上がるのだが……

――何かCMでは絶対出来ないような演出などにチャレンジしたということはあったのですか。

柴田「銃撃戦ですね。CMでは銃撃戦なんて絶対にありえないんです。そういうバイオレンスな映像の演出が出来たということは自分にとって至福でしたね」

――"大阪合衆国を作る"や、"世界のナベアツが大阪知事"など、"お笑い"のなかでもいわゆる"関西のお笑い"という印象を強く受けました。

柴田「あまり関西色を前面に出すのも正直どうなのかなと思うんですが、結果的にそうなっていますよね(笑)。仮に『三谷幸喜さんのコメディ』や、『宮藤官九郎さんのコメディ』というものがあるとするならば、僕としては、この作品を新たなコメディのジャンルとして観てほしいです。これだけ徹底的に"お笑いをしたいんだな"ということが伝わってくる映画って意外と少ないんですよ。この企画を立ち上げた当初話していたのは、映画『裸の銃を持つ男』くらいの作品にしようということでした。要はとにかくオープンニングからエンディングまでずっとボケ続けるという。日本人はウェットな人種で、ストーリーもウェットに成りがちですから、こういう作品は、これまで日本人がなかなかできなかったものじゃないかなと思うんです。そこをなんとか歯を食いしばってギャグをやり続けたら、なにか新しいものができるんじゃないかと。そういった意味では、この作品は成功していると思いますね」