既に報じられているとおり、Windows 7 Service Pack 1 RC(Release Candidate)版がリリースされました。ここ数週間はPre-RC版のリーク情報が巷を騒がせていましたが、ここに来て正式なRC版が登場し、Windows 7 Service Pack 1 RC版を試すことが可能になりました。そこで本稿では、いち早く最新のWindows 7を試してみたい方を対象に、Windows 7 Service Pack 1 RC版の導入から、これまでとの相違点などを中心に様々な情報をお送りします。

そもそもService Pack(サービスパック)とは、毎月および随時リリースされている修正プログラムの集合体であり、Windows UpdateやMicrosoftダウンロードセンターで公開されている修正プログラムに加え、すべてのユーザーに関連する一般的なセキュリティパッチを含むGDR(General Distribution release)や、特定の環境やユーザーにおいて発生する問題に対処するLDR(Limited Distribution Release)の修正プログラムを含んでいます。そのため、Windows 7 Service Pack 1を導入することで、これまで発見できなかったトラブルが新たに発生する可能性は従来と同様です。

また、RC版であることにも注意してください。RC版を日本語に訳するとリリース候補版。つまり、プログラムの開発を終え、最終的なRTM版(出荷版)を目指すため、バグを洗い出すバージョンとなります。そのため、Windows 7 Service Pack 1は、あくまでも評価用であり、日常的に使用するコンピューターに導入することはお勧めできません。また、夏ごろにリリースされたWindows 7 Service Pack 1ベータ版を既にお試しの場合、一度Service Pack 1ベータ版をアンインストールする必要があります。Service Pack 1 RC版からRTM版にアップグレードすることも想定されていませんので、あくまでもService Pack 1の検証が必要なハードウェア・ソフトウェア開発者や、トラブルが発生しても自身で対処できる方のみお試しください。また、同時にシステム全体のバックアップを作成することを強くお勧めします。

本稿ではWinodws 7 SP1 RC版をインストールしておりますが、ソフトウェアの利用は使用者の責任で行ってください。

Service Pack 1 RC版の入手と導入

それでは、Windows 7 Service Pack 1 RC版のダウンロードから取りかかりましょう。システム要件は無印のWindows 7と変わりません。ダウンロードページにアクセスしますと、評価版のユーザー登録を行ってからダウンロードするリンクと、すぐにダウンロードする二つのリンクが用意されています。前者はWindows Live IDを使用し、RC版に関する最新情報や有効期限日に関する情報を電子メールで送付されますので、必要であればお手持ちのWindows Live IDを用いてください(図01~04)。

図01 ダウンロードページには二つのリンクが用意されています

図02 ユーザー登録する場合は、Windows Live IDを用いてログオンします

図03 職業の選択をうながされますので、ドロップダウンリストから適切なものを選択して<次へ>ボタンをクリックします

図04 執筆時点ではリンク先が用意されていませんでした

ただし、執筆時点ではダウンロードリンクが用意されていませんので、今回は直接ダウンロードする方法で先に進みます。ダウンロードには、Windows 7が正式版が確認するWindows Genuine Advantageが必要となりますので、画面の指示に従って導入を実行してください。また、Mozilla Firefoxなどをお使いの場合、GenuineCheck.exeを用いたコード生成で認証チェックに対応できます(図05~08)。

図05 直接ダウンロードするリンクをクリックしますと、ダウンロードページが現れます。最初に<Continue>ボタンをクリックしてください

図06 Windows Genuine Advantageの導入をうながされますので、情報バーをクリックし、メニューから<このコンピューター上のすべてのユーザーにこのアドオンをインストールする>をクリックします

図07 Windows Genuine Advantageのインストール確認をうながされます。<インストールする>ボタンをクリックしてください

図08 これでダウンロードリンクが現れます。各<Download>ボタンをクリックしてファイルをダウンロードしてください

図08をご覧になるとわかるように、ダウンロード可能なファイルは5種類。一つめのISO形式ファイルは、32/64/IA64版のWindows 7 Service Pack 1 RC版が格納されています。そのため、実際に必要となるのは「windows6.1-KB976932-X86.exe」「windows6.1-KB976932-X64.exe」のいずれかでしょう。「WUSignUpTool_x86.exe」「WUSignUpTool_x64.exe」は、レジストリの内容を変更し、Windows Update経由でWindows 7 Service Pack 1 RC版のダウンロードおよびインストールを行うというものです。こちらも通常は必要ありません(図09~11)。

図09 「7601.17105.100929-1730-3_Update_Sp_Wave1-RC1SP1.1_DVD.iso」の内容。各バージョンのWindows 7 Service Pack 1 RC版が格納されています

図10 「WUSignUpTool_x86(x64).exe」を実行しますと、レジストリの内容が書き換えられます

図11 Windows Updateを実行しますと、Windows 7 Service Pack 1 RC版が一覧に現れます

Windows 7のバージョンに合わせて「windows6.1-KB976932-X86(X64).exe」を実行しますと、Windows 7 Service Pack 1 RC版のインストーラーが起動します。ライセンス条項を確認し、同意してから先に進みますと、システムの復元ポイントを作成してからService Packの適用が実行されますので、そのままお待ちください。筆者が試した限りでは、40分程度でインストールが完了しましたが、お使いのコンピューターによっては1時間近くかかる場合もあります。また、メッセージには「コンピューターの再起動が何度か必要になる可能性がある」とありますが、この時点での再起動は発生しませんでした。過去のService Pack導入パターンを思い出しますと、未適用の修正プログラムが存在する場合に再起動およびService Packの導入が実行されるのでしょう(図12~16)。

図12 「windows6.1-KB976932-X86(X64).exe」をダブルクリックしますと、Windows 7 Service Pack 1 RC版のインストーラーが起動します。<次へ>ボタンをクリックしてください

図13 ライセンス条項の確認をうながされます。同意できるようであれば<同意します>をクリックしてチェックを入れてから<次へ>ボタンをクリックします

図14 使用中のアプリケーションを終了してから、<インストール>ボタンをクリックします

図15 これで、Windows 7 Service Pack 1 RC版のインストールが始まります。完了までしばしお待ちください

図16 図14のダイアログで<コンピューターを自動的に再起動する>のチェックを外しますと、本画面が現れます。この場合は<再起動>ボタンをクリックしてください

通常の修正プログラムと同じように、Windows 7終了時および再起動時にService Packの構成処理が実行され、Windows 7に再ログオンしますと、Windows 7 Service Pack 1 RC版のインストール完了となります(図17~18)。

図17 Windows 7終了時、および再起動後の起動時にサービスパックの構成処理が実行されます

図18 Windows 7にログオンしますと、同Service Pack 1 RC版のインストールが完了したことを示すダイアログが起動します。<閉じる>ボタンをクリックしてください

Service Pack 1で更新される機能

Hotfixes and Security Updates included in Windows 7 and Windows 2008 R2 Service Pack 1 Release Candidate.xls」を確認しますと、Windows 7 Service Pack 1 RC版では625種類もの修正プログラムが統合されています。同ベータ版では473種類でしたので、約3ヶ月で152種類増えたことになります。基本的なポジションはベータ版と変わらず、Windows Server 2008 R2に焦点を当てたものであり、新機能の追加などはありません(図19)。

図19 Windows 7 Service Pack 1 RC版を導入しますと、バージョンは「6.1(v.721)」に更新されます

Windows 7における数少ない改良点ですが、一つめはHDMIオーディオデバイスに関するパフォーマンスの改善。Windows 7では、まれにHDMIオーディオデバイスを検出できなくなる問題が発生していましたが、このバグが修正されました。もう一つは縦書きおよび横書きが混合したXPSドキュメント印刷時に発生していた不具合の改善。三つめはリモートアクセス時に使用するIPSecでIKEv2認証プロトコルが使用可能になりました。エンドユーザー向け改良点とは言い切れませんが、外出先から社内のサーバーにアクセスする際のセキュリティ強化につながるでしょう。

四つめはAVX(Advanced Vector Extensions)のサポート。AVXはSandy Bridgeマイクロアーキテクチャでサポートされる拡張命令で、従来のMMX/SSEといった拡張演算命令を連想するとわかりやすいでしょう。具体的なメリットは現時点で少なく、同アーキテクチャをサポートするCPUがリリースされるのは2010年末ごろ。また、AVXをサポートするCPUとWindows 7 Service Pack 1を組み合わせても、直接的なパフォーマンスの向上につながるわけではありません。AVXを使用したアプリケーションが登場して、初めて真価を発揮することになります(図20)。

図20 Intelが用意するAVXの公式Webページでは、主に開発者向けの情報が掲載されています

エンドユーザー的にもっとも大きな改良点となるのが、<ログオン時に以前のフォルダーウィンドウを表示する>オプションに対する動作の変化でしょう。以前は同オプションを有効にした状態でも、最後にアクティブだったウィンドウサイズや位置を利用し、重ねて表示していました。しかし、Windows 7 Service Pack 1では、各ウィンドウサイズや位置を正しく保存し、文字どおりログオフ・終了前の状態を正しく復元します。同オプションを使っているユーザーには有用な改善ポイントとなるでしょう(図21~22)。

図21 フォルダーオプションダイアログに並ぶ<ログオン時に以前のフォルダーウィンドウを表示する>オプション。名称的な変更はありません

図22 SP1で同オプションを有効にすると、各フォルダーの位置は正しく復元されます

Windows 7には直接関係ありませんが、Windows Server 2008 R2 Server Pack 1とWindows 7 Service Pack 1を連動させた環境では、GPUを仮想化し、リモートアクセスするWindows 7 Service Pack 1から仮想GPUを利用するMicrosoft RemoteFXが大きな更新ポイント。VDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップインフラストラクチャー)環境でも、GPUアクセラレーションを用いたWindows Aeroのパフォーマンス向上や、ホスト側で再生する動画をクライアント側へ描画することが実用レベルに達します(図23)。

図23 リモートデスクトップ接続のバージョンも「6.1」に上がり、RDP 7.1のサポートが有効になります

このようにWindows 7 Service Pack 1は、エンドユーザー的なメリットは大きくありません。それでも前述したように、Windows Updateから入手できない修正プログラムも含まれていますので、Windows 7 Server Pack 1 RC版を導入することで、既存の問題が解決する可能性もあります。もっとも列挙した更新内容を鑑(かんが)みますと、開発者や好事家以外は無理して導入する必要はないでしょう。

阿久津良和(Cactus