1つひとつの山に刻まれた思い出

『山女子宣言』(山女子 著 / 発行: イカロス出版 / 定価: 1,200円・外税 / A5判・160ページ)

空前の登山ブームと共に登場した"山ガール"。おしゃれなウェアを身に纏った女子を山々で頻繁に見かけるようになった近頃。かく言う私も2カ月ほど前に山デビューし、毎週末、高尾山御岳山、飯盛山といった初心者向けの山を登って楽しんでいる。

「次の週末はどこに登ろうか」と考えながら、色々なガイド本を見るのが最近の楽しみの1つでもあるのだが、そんなときに出会ったのが10月9日に発売された『山女子宣言』(山女子 著 / 発行: イカロス出版 / 定価: 1,200円・外税)である。

同書は、人気登山ブロガーであるyamajoshiさんの登山エッセイ。東京近郊の山々を中心に、高尾山や飯盛山といった初心者向けの山、ブームの火付け役ともいえる富士山、そして富士山に次ぐ高峰である北岳まで、30以上の山行記が収録されている。

山に興味を持ってから初めて登った妙法ヶ岳山頂での爽快感、単独行の女性と出会い、一緒に下山した扇山・百蔵山での思い出、千畳敷カールで見たこの世の光景とは思えないほどの絶景……。筆者の世界にぐいぐいと引き込まれていき、まるで一緒に山を登っているような錯覚に陥る。それほど、ワクワクしてくるのだ。

山での危険に改めて気付く

しかしながら、そんな山でのすばらしい体験以外に、登山口がわからず時間をロスしたり、寝不足から登山途中での体調悪化といった実際の失敗談、急な雨の中、装備不足で震えながら下山した、という苦々しい思い出も盛り込まれている。登山ブームの一方で遭難事故も増えている中、こういった生の情報が掲載されているからこそ「山での体験はいいことだけじゃない。注意しないと命にかかわる重大な事態へと発展する」と改めて気付かされ、事故を未然に防ぐことにもつながるのではないだろうか。

山行記は2008年9月~2010年9月にかけてのもので、掲載されている山情報や交通情報は実際に登山する前に確認する必要があるが、読んで楽しいだけではなく、ガイド本としても活躍してくれる一冊である。