インテルは25日、「Intel vPro」技術に関する最新の市場動向、および最新ソリューションを紹介する記者会見を開催した。同技術は、2006年9月の初代vPro発表から1,500日を迎えており、出荷台数は全世界累計で5,500万台を達成、採用実績と対応ソリューションの拡大も順調であることが説明された。

インテルの取締役副社長である宗像義恵氏。「ビジネスク・ライアントの中では、事実上、vProはスタンダードになった」とアピール

2006年9月の初代vPro発表から1,500日を迎えており、現在、出荷台数は全世界累計で5,500万台を達成

Intel vProは、企業のIT部門が求めるクライアントの保守管理や資産管理、セキュリティ保護などを、ハードウェア・ベースの統合機能でTCO削減を実現するビジネス・クライアントPC向けの技術。インテルの取締役副社長である宗像義恵氏は冒頭、リーマンショックの影響下での半導体製造32nmプロセス技術への投資や、先週発表された同22nmプロセス技術への投資といった、同社の半導体プロセス技術への投資実績を例に挙げ、同社が、将来を見据えた戦略的な投資には積極的であるという姿勢を説明し、vProについても、同様に将来に渡って継続してチャレンジを続けていくという姿勢を示した。

さて、2006年9月に発表されたvProだが、セキュリティや管理費用の抑制といった根本の部分こそ当時から引き続いているものの、企業のIT部門が抱える課題は、現在にいたるまでに様々に変化を経てきているのだという。日本国内では、例えば2008年の北海道洞爺湖サミットがあったころの変化が顕著で、企業のIT部門の新たな課題として、エコロジーやグリーンITといったキーワードが大きくクローズアップされるようになった。そういった新たな要求に対して、vProも技術を進化させることでニーズに応えてきているというが、では、今現在のvProがどういった状況になっているのかを報告するというのが、今回の会見の趣旨とされた。

企業のIT部門が抱える課題は変化してきている

あわせてvProも進化。2011年には「Sandy Bridge」ベースの製品も予定

宗像氏に続いて登壇した、インテル マーケティング本部の徳永貴士氏が、最新のvProの状況ついて報告を行った。まず、最新のvPro技術は、「Intel AMT」、「Intel TXT」、「Intel VT」、「Intel AT」という4つの技術要素で構成されていると説明された。そのうち、Intel AMTとIntel ATについては、当日に新たな導入事例および、パートナー連携によるソリューション提供の事例が発表された。

インテル マーケティング本部の徳永貴士氏

最新のvPro技術は、「Intel AMT」「Intel TXT」「Intel VT」「Intel AT」で構成

Intel AMTでは、ひとつはNTTデータの導入事例で、リモート操作時以外での待機電力の削減やセキュリティ向上を目的に、累計10,000台以上のvProクライアントが導入、稼動中で、社内PCの電源制御に活用されているという。また、聖路加病院では、主にクライアントのアップデートのためのパッチやデータ配信を目的に、累計2,000台のvProクライアントが導入、稼動中であると報告された。ほか導入事例では、インテルの自社IT部門が、全世界で9万台のクライアントを管理しており、来年初頭にはその95%がvProクライアントに置き換わる状況であることも実績のひとつとして紹介された。

Intel AMTを活用した導入事例。Intel自身も同社IT部門で数万台単位でのvPro運用を開始する

Intel AMTの「リモートKVM」をサポートするソリューションもひろがりを見せている

同じくIntel AMTの事例では、パートナーとの連携による成果として、NTTデータウェーブならびに大塚商会がそれぞれの顧客に提供するソリューションの事例も報告された。NTTデータウェーブでは、vProを活用したリモート・メンテナンスのサービスを提供しており、既に数千台規模での導入実績を上げているという。一方の大塚商会でも、vProを活用したリモート管理およびバックアップサービスの展開を開始しているとされた。

「こういった運用管理の部分が"予防対策"なら、事後対策にあたる部分がこちら」(徳永氏)として、続いては、Intel ATを活用したパートナー・ソリューションの事例も報告された。NECキャピタルソリューションの提供するサービス「SecureDoc Managed Service」が本日新たに発表され、同社のシニアディレクターである荒谷茂伸氏が、そのサービス内容を紹介した。

NECキャピタルソリューションのシニアディレクターである荒谷茂伸氏。持ち出しPCのセキュリティ対策を目的としたサービス「SecureDoc Managed Service」を発表

「SecureDoc Managed Service」の概要。Intel vProとクラウド技術を活用して低コストでの提供を実現している

「SecureDoc Managed Service」の、リモートでのシャットダウン処理およびHDD暗号化のデモンストレーションを披露

SecureDoc Managed Serviceは、業務効率化のために、社内でも社外でも同じように仕事ができる環境を整備しようとする際に必要な、ノートPCなどの持ち出しPCのセキュリティ対策を目的としたサービス。持ち出しPCでは、盗難紛失のリスク回避が大きなセキュリティ課題となる。SecureDoc Managed Serviceでは、盗難紛失への対策を、Intel ATとクラウド技術を活用することで、大規模企業だけでなく小規模企業でも採用可能なほど低コストで提供できるようにした。

SecureDoc自体は、もともと20万ライセンスの実績を持つソリューションだ。データ暗号化技術を駆使し、盗難紛失時などの情報漏えいを防ぐものだが、IT部門に管理者を置く必要があったりと、一定の導入ハードルがあるが、今回のSecureDoc Managed Serviceでは、Intel ATを利用しNECキャピタルソリューション側で管理やオペレーションを担うクラウド型のサービス形態となっている。提供時のサービスコストはクライアント1台あたり 数百円とされており、高度な遠隔データ消去機能などを小規模企業でも安価に利用できるようになっている。

また徳永氏は、さらに今後、vProが対象とするクライアントPCの利用環境において、クライアントPCの利用環境が多様化するに従い、例えば同じクライアントPC上で業務向け仮想マシンと個人向け仮想マシンを共存させるといったような仮想化環境の利用が進むという可能性も紹介。そういった環境に効果的に対応できるデスクトップ仮想化ソリューションとして、ゲスト登壇したシトリックス・システムズ・ジャパン マーケティング本部の北瀬公彦氏が「Citrix XenDesktop 4 Feature Pack 2」を発表した。

シトリックス・システムズ・ジャパン マーケティング本部の北瀬公彦氏が、「XenDesktop」の機能を紹介。「2014年までに全クライアントの72%がノートPCになる」(同氏)という予測もあるそうで、モバイル重視のワークスタイルの変化にも対応できるのが今回の新ソリューションとなる

XenDesktop 4 Feature Pack 2では、Intelの協力もと開発したというvPro活用のノートPC向けハイパーバイザー「Citrix XenClient」により、vPro搭載ノートPCのハードウェアで、各仮想マシンが独立性を保持したまま、複数の仮想マシンを同時起動でき、ホストOSも必要としない柔軟な仮想環境を実現できるとされる。当日は、Intel VT-dを利用した仮想化環境でのGPUアクセラレートの効果で、HD動画をスムーズに再生できている様子や、各仮想マシンの独立動作を示すという、アクティブな仮想OS上に、バックグラウンドの仮想OS上のアプリケーションのウィンドウを表示させるといったライブデモも実施された。

「Citrix XenClient」の概要。ホストOSを必要とせず、高パフォーマンス&セキュリティなどの特徴がある

Intel VT-dを利用した仮想化環境でのGPUアクセラレートの効果で、HD動画をスムーズに再生できているというデモ

各仮想マシンの独立動作を示すという、アクティブな仮想OS上に、バックグラウンドの仮想OS上のアプリケーションのウィンドウを表示させるデモ