レノボ・ジャパンが先週の10月19日に発表した「ThinkCentre M70z」は、同社がビジネス向けオールインワン(AIO)デスクトップPCの新時代を告げる製品として投入した「ThinkCentre M90z」の兄弟機にあたる新モデルだ。

「ThinkCentre M70z」

一見ただのサイズ違いに見えるM90zとM70zだが、利用するユーザーのニーズにあわせて、同社らしいきめ細やかな仕様変更が施されていると言う。今回は、Lenovoグループのワールド・コンペティティブ・アナリストで、ThinkCentre M70zの製品開発にも深く関わったKevin Beck(ケビン・べック)氏から直接、製品の勘どころを伺うことができたので、その内容をレポートしたい。

Lenovoグループのワールド・コンペティティブ・アナリスト、Kevin Beck(ケビン・べック)氏

まずは製品の位置付けだが、23インチ液晶を備えるThinkCentre M90zに比べると、19インチ液晶のAIOであるThinkCentre M70zは、もちろん単純に設置時の省スペース化が実現しているという特徴がある。もともとレノボでは、AIOについては、セパレートタイプと比較して省スペースであり、企業利用時の限られたデスクスペースの有効活用の効果をうたっている。

日本市場で言えば、ディスプレイサイズは未だ17インチクラスが主流だそうで、M90zの23インチとのギャップがある。実際ケビン氏も、その隙間を埋める格好になるM70zは、日本の顧客にぴったりの製品であると考えているそうだ。また、今回の製品のデザイン時には、企業内での用途をコンテントクリエイタとコンテントコンシューマの2系統に設定していたそうで、前者には23インチのM90z、後者には19インチのM70zを想定していたとのこと。M70zの投入で、ビジネス向けAIOのラインナップ補完が完成したという側面もある。

コスト削減が重要視される企業向け製品ということもあり、M70zでは初期導入コストが大きく削減されているのも特徴だ。M90z比でもだいぶ下げられており、M70zのWeb直販の本体販売価格は10万円を切るところからスタートしている。トレードオフで、M70zでは、ツールレスでのメンテナンスが可能だったM90zでの機構は削除され、「Intel vPro」の機能も非サポートとなった。特に顧客からvProの要望は、近年非常に大きいものであるそうだが、そういった機能を必要とする顧客に対しては、M90zを勧めるというのが同社のスタンスであるそうだ。

そういった補完関係のある兄弟機ではあるものの、しかしながらM70zは単なる下位モデルというわけではなく、M90zでの顧客からのフィードバックが活かされた新モデルならではの特徴も多々ある。M90zで実現したタッチスクリーンは、M70zでもオプションとして継続されることになった。本体を持ち運べるハンドルを備える点は、M90zで日本の顧客から非常に好評だったことから、M70zでも採用されることになった機能だという。大企業向けのThinkCentre Mシリーズに属する製品であることから、シリアルポートなどレガシー系外部ポートのサポートが「しつこいくらい充実している」(ケビン氏)というのも特徴だろう。

M90zから引き続き、M70zでも用途にあわせられるようスタンドは2種類用意される

日本の顧客から好評だったという本体を持ち運べるハンドル。ちょっとした社内プレゼンに伴う移動などで便利なのだそうだ

企業向けAIOならではの最新の電力コントロール機能にも注目できる。M70zでは、Active Directoryのポリシーを利用して、ネットワーク参加単位で、Think Vantage機能の省電力マネージャーによる管理ができるようになっている。ここでは、ThinkPadで培ったバッテリ駆動時間の延命ノウハウも活かされている。例えば、毎日12時になるとディスプレイ電源をシャットダウンするといった設定を適用し、運用時の省電力化を達成するなど、高度な電力コントロールが可能となっているそうだ。

ちなみに、省電力に関連して、M70zが非常に環境に配慮した製品であることも紹介された。定番のENERGY STARRの取得や、TCO Certified Edgeの認定などは取得済みである上、本体に使用されているプラスチック部材は、約49%がリサイクル材なのだという。さらに製品の梱包材もリサイクル材、かつリサイクル可能なものが使用されている。またケビン氏は、梱包材にまつわる面白いエピソードも紹介してくれた。M70zの梱包材はコンパクトにスタックして保管できる形状になっているが、これは日本の顧客の要望で生まれたものだそうだ。引越しなどでマシンの運搬の際、購入時の梱包材を再利用したいという要望があったため、その保管スペースや部材費用を少しでも減らそうと考案したのだという。

スタックできる梱包材。顧客のフィードバックは非常に大事にしているという同社。そのコダワリは梱包材にまで!?

さて、今回のM70zをはじめ、レノボは最近オールインワン型のデスクトップPCに非常に積極的だ。ケビン氏は、その理由をIBM時代の企業向けPC「NetVista」にまで遡って説明する。NetVistaには、初期の15~17インチ液晶ディスプレイ一体型であるXシリーズがラインナップされていたが、当時は何よりも販売価格が高かった。価格のうち液晶ディスプレイ部が占める割合が非常に大きく、ディスプレイ部とPC本体ではライフサイクルも違うため、本体コストに占める比重がディスプレイに寄り過ぎる当時のAIOは、今となってはバランスが悪い製品ジャンルだったと見ているそうだ。

ケビン氏は、ディスプレイのコストは劇的に下がり、PC本体とのバランスが大きく改善したのが、今現在の状況であると説明する。また、日本国内でAIOと言うと、高付加価値な高級モデルというイメージもあるが、ケビン氏によれば、「レノボの常識では、AIOはコストで優れる製品ジャンル。企業用途でのセットアップと資産管理(液晶とPCが一緒に資産管理できれば、別々に管理するより単純に物件が半分で済む)のコストを含めれば尚更」といった見解なのだと言う。「その証拠に、M70zは単体液晶ディスプレイとPC本体を足した価格より安く発売できているでしょう?」(同氏)と、コストのメリットは、同社がAIOに積極的な理由のひとつとしてアピールされていた。