10月11日から15日までの5日間、中国・北京の中国国際展覧中心にて「P&T/Expo Comm China 2010」が開催された。同イベントは、中国の通信事業者全社に加え、大手企業が名を連ねる本展示会は名実共に中国で最大の通信関連の展示会である。主催は中国情報工業化部及び中国国際貿易促進委員会。

中国もワンセグ、おサイフ、アプリストアの時代

中国の通信事業者は2008年に3社に再編された後、2009年に3Gサービスがスタート。固定電話は加入者が急減している。そのため展示会でも携帯電話事業者である中国移動(China Mobile)はもちろんのこと、固定/携帯/ブロードバンドサービスを提供する中国電信(China Telecom)、中国聯通(China Unicom)のブースでも目立っていたのは携帯電話関連の展示だ。

では中国の携帯電話はどのようなサービスが提供されているのだろうか? 昨年までの本展示会ではまだまだ端末の紹介が中心であり、3G関連もキラーアプリを模索している最中といった感があった。だが今年の展示会ではようやくサービスを中心とした展示が増えており、特に各社のブースで目立っていたのがアプリケーション販売や「おサイフ」サービスだ。また中国移動は中国版ワンセグともいえるモバイルTVサービスのCMMBに力を入れている。

中国の3Gは3事業者が3方式で展開している。中国移動がTD-SCDMA、中国電信がCDMA2000 EV-DO、中国聯通がW-CDMAである。CMMBは中国が独自に開発したモバイル向けTV放送システムで、CMMBが搭載されている携帯電話は現時点では中国移動のTD-SCDMA端末のみとなっている。中国移動ブースではCMMB搭載端末を多数展示しており、実際に現在北京で放送している放送のデモが行われていた。料金は有料で、100円程度で数チャンネルからと中国の物価に合わせて安価に設定されている。中国移動としては自国技術のTD-SCDMAの普及を促すために、CMMB搭載端末を今後も増やしていく予定とのことだ。

中国最大の通信関連展示会、P&T/Expo Comm China 2010

中国移動ブース

CMMB対応端末の展示は人気のコーナーであった

視聴は有料だが料金は安い

さて日本でもスマートフォンの注目が高まっているが、中国でも端末の大画面化とフルタッチ化、そしてスマートフォン製品の数が急増している。また通信速度も3G開始により高速化されたことからようやく携帯電話向けのダウンロードサービスが利用しやすい環境が整ってきており、本格的な普及が始まろうとしている。各通信事業者はコンテンツやアプリケーションを配信する各社独自のアプリケーションストアの提供を開始しており、例えば中国聯通はiPhoneやAndroidなど複数のOSやプラットフォーム上で、共通のUIで利用できるものを提供している。

各社はアプリケーションストアを今年から開始しているが、特に注力しているのが電子書籍の販売だ。ゲームや音楽は特定の年齢層にユーザーが偏りがちだが、電子書籍は小説や雑誌、漫画などが手軽に読めるとあって老若男女幅広い層からの利用が見込まれている。中国ではすでに2Gの時代から携帯小説の配信サービスが提供されているが、スマートフォン時代になったことで今後は写真入りの雑誌や新聞など、よりリッチな内容の書籍配信が本格化する兆しを見せている。

中国聯通ブース

OSに関係なく同じUIで利用できる

電子書籍販売は価格が安いこともあり注目が集まっている

こちらは中国移動ブースの電子書籍コーナー

一方、こちらも日本では一般的なサービスになっている、携帯電話を使った非接触型決済サービスである「おサイフ」サービスも中国では今年から一部都市で開始されている。中国移動はSIMカードにRFIDチップを埋め込んだRFID-SIMカード方式で北京や上海などでサービスを開始しているほか、中国聯通、中国電信も追従を始めている。中国では大都市の公共交通機関の乗車券は非接触型ICカードの採用が進んでおり、コンビニエンスストアやファーストフード店へも拡大する見込みである。携帯電話側の対応が進めば、おサイフ携帯サービスも急速に普及することが期待されているようだ。

中国電信ブース

人気を集めているのがおサイフサービス

中国電信のものはまだ試作タイプで、SIMカードとアンテナを直結している

おサイフサービスで先行する中国移動は公共料金支払いも可能な複合端末を展示