サイバーエージェントFXは7日、サイバー・ファイナンス・スクールのセミナーとして、和田仁志氏が講師を務めるオンラインセミナー『米雇用統計直前セミナー』を開催した。和田氏は、今回の雇用統計の世界経済の流れの中での位置づけや、9月15日に行われた日本政府・日本銀行による為替介入がどうやって行われたかなどについて解説した。

6年半ぶりの為替介入は"逆切れ"介入だった?

和田氏は、1968年生まれの長野県出身。立命館大学卒業後、米シティバンク銀行や英スタンダードチャータード銀行で十数年間に渡りインターバンクディーラーとして一線で活躍。その後は、証券会社などで外国為替証拠金業務を立ち上げるなど、業務全般に携わる。コンプライアンス業務についても熟知しているとのこと。2006年8月からは、情報配信会社社長として本場ニューヨークからホットな金融情報を提供。2008年5月からグローバルインフォ代表取締役社長。

サイバー・ファイナンス・スクールとは、外国為替証拠金取引(FX)の取引に必要となる相場分析方法を、連続開催のセミナーで習得するカリキュラム。今回のセミナーでは、10月8日に発表された米国の「雇用統計」発表前夜の10月7日に、今回の雇用統計の世界経済の流れの中での位置づけや、9月15日に行われた日本政府・日本銀行による為替介入がどうやって行われたかなどについて、和田氏が解説した。

和田氏はまず、『米雇用統計を前に』と題し、11月2、3日のFederal Open Market Committee(FOMC、連邦公開市場委員会)で「Quantitative Easing2(QE2、量的緩和第2弾)」の導入が期待されている中、今回の雇用統計は重要度が高いと説明。日銀が10月5日に、3つの措置からなる包括的な金融緩和政策を実施すると発表したことにより、「米国に(QE2の実施についての)かなりのプレッシャーがかかっている」(和田氏)。さらに、ウィリアム・ダドリーNY連銀総裁も「追加金融緩和」の必要性を強調したが、「FOMC内部では意見が分かれている」とも述べた。

和田氏は、『米雇用統計を前に』と題し、11月2、3日のFOMCで「Quantitative Easing2(QE2、量的緩和第2弾)」の導入が期待されている中、今回の雇用統計は重要度が高いと説明した

次に和田氏は、9月15日に行われた日本政府・日本銀行による為替介入について、介入の前に多くの予兆があったと説明。和田氏が今回の介入について名付けた「介入狂想曲」の「序曲(1)」として、野田佳彦財務相が介入当日の財務省当庁時に何も語らなかったことを挙げた。さらに、「序曲(2)」として、財務省の中尾武彦国際局長が都内の講演をキャンセルしたことを挙げ、これらの情報をキャッチした"勘のいい人"が「怪しい、何かあるぞ」と構えたと述べた。

さらに、介入した理由として、菅直人首相が民主党の新代表決定後の市場の反応に激怒したという「逆切れ介入」説や、菅氏、小沢一郎氏のどちらが代表戦で勝っても動いたら介入する準備をしていたという説を挙げた。その後和田氏は、介入当日の経過を、臨場感あふれる様子で説明した。

介入狂想曲「第二楽章」として和田氏は、介入後の各国当局(米財務省、FRB、カナダ財務省、ECB、英財務省、BOE、ホワイトハウス、NY連銀)の反応が「コメントを差し控える」というものだったことを挙げ、「少なくともG7当局に『何も言わない』というコミットメントをとりつけた」と説明。しかし「第三楽章」では、予想以上に介入への批判が強まったとし、その例として、アラン・グリーンスパン元FRB議長が「日本の介入は機能しない、意味の無いこと」と述べたことなどを話した。

和田氏は、予想以上に日本政府・日銀による為替介入への批判が強まったとした

今回の介入について批判が高まったことについて和田氏は、「国際的な協調の枠外で介入を行ったことが、海外の不満を招いた」と解説した。

米国の「追加量的緩和」実施の観測強まる

介入の経緯と海外の反応を説明した後は、『ようこそ「QEクラブ」へ』と題し、米国の追加量的緩和の可能性について話した。和田氏は2つのFOMC声明文について触れ、「11月2、3日のFOMCで『QE2(Quantitative Easing2、量的緩和第2弾)』が導入されるのではないか」、「長期国債の新たな買い取りプログラムが発表されるのではないか」との観測が強まっていると説明した。

また、FOMCの先手を切って包括的金融緩和策を決断した白川方明(まさあき)日銀総裁について、「ヘリコプター・マーシーという名を付けてもおかしくないほど、思い切ったことをした」と述べた上、この包括的金融緩和策を米国の「メドレーレポート」が予測していたことについても指摘した。

人民元の問題については、「とにかく米国は本気」と説明。米下院本会議で「対中制裁法案」が可決されたことを挙げた。さらに、10月22日に韓国・ソウルで開幕するG20の財務相・中央銀行総裁会議の後、「何らかの動きが出る」と説明した。

セミナーの最後に和田氏は、「人民元を中心とした通貨安戦争がどうなるか、1カ月たてば分かる」と話し、次回セミナーの視聴も呼びかけていた。