米Appleは10月20日(現地時間)、米カリフォルニア州クパチーノの本社で開催したスペシャルイベントでMac OS Xの次期メジャーリリースとなる「Mac OS X Lion」のプレビューを披露した。

CheetahからSnow Leopardまで、Mac OS Xは7つのメジャーリリースを重ねてきた

Mac OS X、8番目のメジャーリリースは"Lion"

今回のスペシャルイベントをAppleは"Back to the Mac"イベントと呼んでいたが、実はその名称にMac OS X Lionの開発理念が隠されていた。

「ふたたびMacへ」…… どういうことかというと、OS Xをベースにタッチインターフェイスを組み合わせたiPhone OS (現iOS)が2007年に登場し、その後のiOSの進化がタブレットデバイスiPadを生み出した。AppleはiPadを「スマートフォンとノートパソコンのすき間を埋めるモバイルデバイス」という位置付けで提供している。だが最近、iPadがネットブック市場やノートパソコン市場を侵食しているというレポートが出てきている。理由の1つとして、iPadが従来のノートパソコンからは得られない利用体験を提供しているからと考えられる。それは必ずしもタブレットデバイスでしか実現できないものばかりではない。iPadが開拓した新たなコンピューティングから、パソコン(=Mac)が吸収できるものも多い。その実現がMac OS X Lion開発の大きなテーマの1つであり、だから「ふたたびMacへ」なのだ。

OS Xから生まれたiOSがiPadを経て、今度はMacを変える!

スペシャルイベントではMac OS Xにも活用できるiPadの長所として、以下の6つが挙げられた。

  • マルチタッチジェスチャー
  • App Store
  • アプリケーションのホームスクリーン
  • アプリケーションのフルスクリーン動作
  • 自動保存
  • 起動状態でのアプリケーションのレジューム

Macでは、Magic MouseやMagic Trackpad、MacBookシリーズのトラックパッド操作で、すでにマルチタッチジェスチャーを実現している。これをさらに強化する。なお、今日のMacのデザインでは、ユーザーが直接Macのスクリーンに触れるマルチタッチジェスチャー操作は考えていないという。理由は、垂直に近い角度で立っているパソコン画面では、ユーザーテストにおいてしばらくタッチ操作するうちに手の疲れ訴えたユーザーが多かったからだ。「マルチタッチジャスチャーは平面で」というのが、Appleのタッチインターフェイスに対する考え方だ。

今日のデザインのパソコンで、画面に直接触れるタッチ操作は人間工学に基づいたソリューションとは言い難い

指先での快適な操作を優先すれば、平らな面がタッチ操作には適っている

Mac OS X Lionのデスクトップ画面

Mac OS X Lionには数多くの新機能が投入されるというが、この日はそれらのうちのごく一部「Mac App Store」「Launchpad」「フルスクリーン・アプリケーション」「Mission Control」のデモが披露された。

Mac App Storeは、無料および有料のMac用アプリケーションを配信するアプリケーションストアだ。iOSデバイス用のApp StoreのMac版と言える。1クリックで、すぐにダウンロードが始まり、自動的にインストールが完了する。アプリケーションのアップデートも同ストアを通じて提供される。同ストアから入手したアプリケーションのライセンスは、購入者個人が所有するすべてのMacで有効になる。

Mac用のアプリケーションストア「Mac App Store」

アップデートが存在するアプリケーションが通知される

App Store同様、1クリックで簡単に購入でき、自動的にダウンロード・インストールが完了する。デモではPagesを購入し、その場でインストールして起動、ドキュメントを作成して見せた。ちなみに購入したPagesの価格は19.99ドル。もちろんデモなので、この価格は情報として全く参考にならないが、Mac用アプリケーションもオンライン配信へとシフトすることで価格がどのように変化するかは興味深いところだ

Launchpadは、Mac内のアプリケーションにすばやくアクセスできるようにするアプリケーション起動インタフェースだ。起動すると、iOSのホーム画面と同じようなインターフェイスで画面全体にアプリケーションのアイコンが広がる。機能もiOSのホーム画面に近い。たくさんのアプリケーションが存在する場合、自動的に複数のページが展開する。ページ間はスワイプで簡単に移動できる。アプリケーションのアイコンはドラッグ&ドロップで並べ替えられ、またLaunchpad内にフォルダを作成することも可能だ。

iOSデバイスのホーム画面のようにアプリケーションが並ぶLaunchpad

iOSと同じように、アイコンをドラッグして別のアイコンに重ねるとフォルダが作成される

フルスクリーン・アプリケーションのデモでは、プレビューを使ってPDFドキュメントをフルスクリーンで表示・操作して見せた。フルスクリーンへの切り替えは1クリック。フルスクリーン表示がシステムレベルで強化されており、例えばプレビューのPDF表示の場合、フルスクリーン状態でも簡単なジェスチャーだけでページを操作できる。さらにフルスクリーンを離れることなく、ジェスチャーのみでフルスクリーン・アプリケーション、デスクトップ(マルチウインドウ状態のアプリケーションにアクセス)、Dashboardを簡単に切り替えられる。

プレビューで普通に開いたPDFドキュメント

フルスクリーンでPDFドキュメントを表示・操作

Mission Controlは、ExposeとSpacesを統合し、Dashboard、フルスクリーン・アプリケーションも1カ所でコントロールできる機能だ。簡単なジェスチャー(デモでは数本の指を下にスライドさせたように見えた)でMission Controlに切り替わる。デスクトップで開いているウインドウがアプリケーションごとにグループ化されて中央にExpose状態で広がり、上部にはDashboard/ デスクトップ/ フルスクリーン・アプリケーションが並ぶ。画面下部にはDockだ。複数のアプリケーションを起動し、数多くのウインドウが開いている状態でも、ジェスチャー操作とクリックだけで1カ所からすばやく目的のウインドウにたどり着ける。

複数のアプリケーションが起動し、ウインドウだらけのデスクトップ

Mission Controlで整理して表示。デスクトップで開いているウインドウはアプリケーションごとにグループ化され、Expose状態で中央に表示される。上部にデスクトップ、フルスクリーン・アプリケーション、Dashboardが並び、ワンクリックで切り替えられる

Mac OS X Lionは、2011年夏に登場する見通しだ。ただしMac App StoreだけはLionを待たずに、Mac OS X Snow Leopardユーザー向けに90日以内にオープンさせる。開発者からのアプリケーション登録は、11月に申し込み受け付けを開始する予定。同ストアで有料アプリケーションを提供する場合、開発者の取り分は売上げの70%になる。

Mac OS X Lionは2011年夏リリース

Mac App Storeは90日以内にオープン