国税庁は20日、遺族が年金として受給する生命保険金のうち、相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象とならないと最高裁が判決した問題で、過去5年分(2005年~2009年分)において納めすぎとなっている所得税の還付手続きを開始した。

国税庁では、最高裁において、遺族が年金として受給する生命保険金のうち、相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象とならないとする判決が2010年7月6日にあったことを受け、取扱いの変更と納税者への対応について検討してきた。

納税者の還付手続きなどに関する対応の方針については、2010年10月1日に財務省・国税庁から、「相続又は贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いの変更等の方向性について」を公表。所得税法施行令が20日公布・施行され、これに併せ、所得税法の解釈通達を発遣し、取扱いを変更した。

国税庁は20日から、過去5年分(2005年~2009年分)において納めすぎとなっている所得税の還付手続きを開始するとともに、国税庁ホームページに保険年金の還付手続きに関するポータルサイトを設置した。

所得税が源泉徴収されている人には、生命保険会社から個別に通知

取扱いの変更対象は、相続、遺贈又は個人からの贈与(相続など)により取得したものとみなされる生命保険契約や損害保険契約などに基づく年金を受給している人。具体的には、次の1から3のいずれかに該当する人で、保険契約などに係る保険料の負担者でない人。

  1. 死亡保険金を年金形式で受給している人

  2. 学資保険の保険契約者が亡くなったことに伴い、養育年金を受給している人

  3. 個人年金保険契約に基づく年金を受給している人

※ 相続などにより取得したものとみなされる生命保険契約や損害保険契約などに係る年金の受給権は、相続税や贈与税の課税対象となっている。実際に相続税や贈与税の納税額が生じなかった人も対象となる。

取扱い変更後の所得計算については、「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額の計算書」で計算を行うことになる。なお、国税庁ホームページに掲載予定(10月25日の週)の「保険年金の所得金額の計算のためのシステム」では、年金情報などを入力することで、自動的にこの計算書が作成できる。

今回の取扱い変更の対象となる保険年金を受給している人のうち、年金の支払を受ける際に所得税が源泉徴収されている人には、20日以降、生命保険会社などの保険年金取扱い各社から、還付手続きに必要となる年金情報などが個別に通知されることとなっている。この通知には、「税務署からのお知らせ」が同封される。

なお、年金の支払を受ける際に源泉徴収されていない人や、住所変更などにより通知が届かない人についても、取扱い変更の対象ではないかと思う人は、生命保険会社などに照会すれば、生命保険会社などから年金情報などが案内されることとなっている(還付手続きに関する相談は税務署に問い合わせ)。