カシオ計算機は19日、都内にてデジタルカメラ新製品発表会を開催。不況による個人消費の冷え込み、メーカー間の競争など厳しい状態が続いている中でも、「ユーザーの期待を超える新しい機能や用途を提供する商品は、お客様に確実に支持されている」と語るのは、同社 常務取締役の樫尾彰氏だ。

メーカーとして、"差別化できる"商品を重要視するという姿勢が、新製品発表会の「写真革命~デジタルアートの世界、新しい写真文化の創造~」というテーマにつながっているようだ。

会場に展示された新製品、技術説明などの様子はこちらから確認できる

0から1を生み出すのがカシオ流

発表会の冒頭、世界で初めて液晶モニター付きデジタルカメラを開発したのは、「なぜカメラメーカーではなく、カシオだったのでしょうか?」と樫尾氏。同社にとって歴史的モデルであるQV-10を掲げながら、「デジタル技術をもとに、新しい発想で、新しい価値を創り出す、"0から1を"というカシオのものづくりがあったから」と続け、2002年にはカードサイズの「EX-S1」を、2008年には決定的瞬間を逃さないハイスピードカメラ「EX-F1」を生み出してきた同社のデジタルカメラの歴史を振り返った。

世界初のモニター付デジタルカメラ「QV-10」を掲げる、カシオ計算機 常務取締役 樫尾彰氏

さらに、「デジタルカメラを進化させたのはカシオであるという自負のもと、新たなデジタルカメラの価値を創造していく」とアピール。高速画像処理や高速撮影、低消費電力駆動など同社が強みとするデジタル技術を駆使することにより、新たに誕生したのが、ハイブリッドGPS搭載モデル「EX-H20G」(製品詳細はこちら)とHDR技術により芸術的な写真が創り出せる「EX-ZR10」(製品詳細はこちら)の2製品だ。

発表会会場入り口には「写真革命」の文字が

両モデルとも、「撮る、見る、記録する」というカメラ本来の性能を高いレベルで実現しながら、「楽しむ」という新しい価値を提案するもの。新モデルに関して説明したのは、QV-10時代から"カシオのデジカメ一筋"という同社 QV事業部長の中山仁氏だ。

「EX-H20G」では「トラベルエンターテイメント」を、「EX-ZR10」では「デジタルアートエンターテイメント」を提案する

中山氏が「究極の次世代エンジン」と説明するのは、マルチCPUと2つの画像処理回路を持つ新開発の「EXILIM ENGINE HS」。夜景や逆光、青空、木々の緑、夕日といった撮影シーンに加えて、顔の有無、被写体の動き、被写体の位置、三脚使用の有無などをカメラが自動で分析する「プレミアムオート」の処理時間も大幅に短縮された

GPSとモーションセンサーによる自律測位を組み合わせた「ハイブリッドGPS」を搭載することにより、屋内でも位置情報を測位できるEX-H20Gは、「電源オフで持ち歩いていても、移動経路がわかる優れもの。旅の前にはカメラの地図を見ながら計画を立て、旅行中は現在位置や目的地などを地図上で確認しながら行動。旅行後は、PicasaやGoogle Earthなどを利用して、旅の思い出をより鮮明にしてくれる」(中山氏)。また、徹底した省電力化を実現した同モデルでは、「GPSデジカメは電池消耗が激しいというイメージを払拭する」と意気込んだ。

有効1410万画素の1/2.3型正方画素CCDを搭載する「EX-H20G」。3軸の加速度センサーと3軸の方位センサーを活用し、独自のアルゴリズムにより、GPS衛星からの信号が届かない屋内でも連続した位置情報を取得できる

世界約140都市と日本12都市の詳細地図を含む全世界の地図データを収録。世界の著名な観光地の撮影スポット約1万点の写真も収録する

撮影可能枚数は約600枚。ここにも、これまで培った長電池寿命テクノロジーが応用されているという

身近な風景も"アート"にしてしまうEX-ZR10では、Web上などにアートギャラリーを開設予定。「新しいものを知らしめるのは難しいこと」とQV戦略部長 重岡正之氏は前置きしつつも、「デジタルアートに関しては、まず作例を見ていただきたい。どれだけ多くHDR アートを露出できるかが鍵になってくると思う」と話し、Webと連動した作品露出のほか、店頭でのタッチ&トライなどにも力を入れることで「多くの人に知っていただきたい」と語っていた。このほか、油彩風、水彩風などの写真を創ることができる絵画変換ソフトもあわせて提供予定とし、「"デジタルアートの世界"をつくっていく」という姿勢を示した。

有効1210万画素の1/2.3型高速CMOS(裏面照射型)を搭載する「EX-ZR10」。スローモーション映像が撮影できるハイスピードムービーにも対応する

作品を「創る、見せる」楽しさを提供するという「HDRアート」

右の写真が「HDRアート」が適用された画像。局所的にコントラストや彩度の強弱をコントロールすることで"アート作品"が簡単に作成できる

新モデルは「デジタルカメラ市場に旋風を起こし、成熟市場といわれるマーケットを活性化させる」と胸をはった樫尾氏。独自の技術により、"新しい価値"を生み出す同社の「写真革命」に期待したい。