ロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」をはじめとする家庭用ロボット製品を世界で500万台以上販売してきた米・iRobot(アイロボット)。今年、創立20周年を迎えた同社の設立者で、現CEOでもあるコリン・アングル氏が来日、7日に都内にて会見を行った。
ロボットの活躍現場は家庭にあり
アイロボットは、1990年にマサチューセッツ工科大学で人工知能(AI)研究を進めていたロボット研究者、ロドニー・ブルックス氏、その教え子であるコリン・アングル氏とヘレン・グレイナー氏の3人により設立。以降、地球外探査を目的としたロボット「Gengis(ジンギス)」、地雷の探査・除去用ロボット「Ariel(アリエル)」、多目的作業用ロボット「PackBot(パックボット)」などさまざまな目的に応じたロボットを開発・販売してきた実績をもつ。
中でも、日本でよく知られているのは、アメリカでは2002年に発売され、手頃な価格帯としては初となった家庭用ロボット・自動掃除機、ルンバだろう。アイロボットの開発したロボットの活躍現場は、紛争地帯や瓦礫の下だけではない、毎日の家事の負担に困っている人たちの手助けもしたい、という想いから製品化された掃除ロボットである。
自動掃除機「ルンバ 537」。ルンバは2004年より日本での販売を開始。これまで14万台を売上げ、国内掃除機におけるシェア3%を獲得している |
2002年に発売された初代「ルンバ」(左)とプール洗浄ロボット「Verro(ベロ)」(日本未発売) |
学生時代は「かっこいいものをつくりたいと思っていた」と話すのは、アイロボットCEOのコリン・アングル氏。しかし「かっこいいものを追求しているだけではダメだ(Cool is not enough)」と気づき、「人間が必要とする作業を行う、実用性のあるロボットをつくろう」と決心したのだという。
ルンバを開発するまでにも、人々を「退屈・不衛生・危険な仕事から解放したい」という"目的"のもと、製品化が可能なロボットを多数手がけた同氏。「地道な作業で辞めたくなったこともある」と振り返るが、「ロボットには大きな需要がある」と確信していたからこそ開発を続けてきた。
軍事技術を「ルンバ」に転用
「いわゆる"オタク"や博士号をもつ人のためだけではない、全ての人に向けたモデル」(コリン氏)として販売しているルンバは、人工知能「AWARE(アウェア)」を有し、各種センサーの働きにより、部屋の形状や広さ、汚れの具合を判断。最も適した走行パターンと稼動時間を計算して掃除をする優れもの。ユーザーの中には、可愛らしいルンバの動きや掃除をする姿に愛情を感じ、名前をつけたり、ペットや家族の一員のように扱っている人も少なくないという。
そんなルンバにも、アイロボットが手がける軍事用ロボットで培った技術も継承されている。「地雷探知など軍事用の技術が活用されています。テクノロジーの用途は限定されるものではありません」とはコリン氏の弁だ。「まだルンバの性能に懐疑的な人もいる」というが、その性能は推して察するべしというところなのだろう。
今後の課題を問われたコリン氏が唱えたのは「高齢化社会に役立つ、介護ロボット」。特に、高齢化社会が進む日本でのニーズが大きいとし、「日本にはロボットを信頼し、助けてくれるとわかっている人たちが多い。日本の研究者たちは、その開発を先導していくべき」と提案していた。