米Amazon.comがAndroid向けのアプリストア・サービスに乗り出す計画だという。米Bloombergなど複数のメディアが10月7日(現地時間)に一斉に報じている。Bloombergが関係者の話として伝えるところによれば、Amazon.comは独自のアプリ販売システムと開発者ネットワークを構築し、自身の課金システムを使ってAndroidユーザーへとアプリを販売していくという。10月中にも何らかのアナウンスが行われる見込みのようだ。
現在急拡大中のアプリストアだが、Bloombergでは今年時点で143億ドルだったアプリストア市場が、2014年には400億ドル規模へと拡大が見込まれるというBooz & Co.の予測を紹介している。Google謹製アプリストアである「Android Market」の今日の最大の問題の1つは課金システムにあり、Googleの決済システムである「Google Checkout」の利用がユーザー利用のハードルを上げていることが指摘されている。AppleがApp Storeで一定の成功を収めたのも、iPhoneという人気プラットフォームの存在のほか、同社がこれまで音楽販売で培ってきたiTunes Storeのシステムをそのまま利用できたことが大きいといわれている。こうした声を受けGoogleではAndroid Marketの利用規約を変更し、携帯キャリアなどのサードパーティによる課金を可能にしたほか、PayPalがMarketでの課金代行を可能にするためにGoogleとの交渉を進めていることが報じられるなど、足慣らしをしている様子が伝わってきていた。
こうした予測に則れば、すでにオンラインストア事業で最大手の地位にあるAmazon.comが自らの課金システムとユーザー数を武器にアプリストア事業へと参入してくるのも自然な流れだ。同種のAndroid向けサードパーティ製アプリストアはVerizon Wirelessが自社ユーザー向けにV Castアプリの配信を行っており、これに近いスタイルをとることになるとみられる。同件に関して開発者向け資料から情報を入手したとするWall Street Journalによれば、アプリストアにおける開発者とAmazon.comの分配比率は7:3で、これはライバルとなるAppleのApp StoreやGoogleのAndroid Marketと同等だ。また9月にTechCrunchが報じた情報によれば、Amazon.comはApp Store同様に開発者に年間99ドルの費用を課してストア運営を行うほか、同社独自のDRMによるアプリの保護を検討しているという。
詳細はまだ不明だが、1プラットフォームに対して1つのアプリストアではなく、複数のストアが乱立して互いに競合するトレンドは興味深い。iOSにおけるApp Storeのように、ベンダーが完全にプラットフォームをコントロールしないAndroidならではの現象かもしれない。