全米第1位の携帯キャリアVerizon Wirelessは10月6日(現地時間)、米カリフォルニア州サンフランシスコ市内で開催されている携帯電話業界カンファレンス「CTIA Enterprise & App 2010」の会場において、今年2010年末までに全米38都市、同都市圏に存在する60以上の空港エリアで次世代携帯技術「LTE(Long Term Evolution)」をベースにしたデータ通信サービスを提供すると発表した。当初はPC向けのデータ通信のみとなり、2011年前半より順次対応携帯端末やタブレットが市場へと投入される。
米Verizon Wirelessプレジデント兼CEOに就任したばかりのLowell McAdam氏は今回のLTEサービス開始について「過去数年間の成果が実った。Verizon Wirelessだけでなく、業界全体にとっても大きなマイルストーン」と表現している。同氏はスライドを提示し、2010年のサービスイン時点で1億1000万人と全米人口の約3分の1をカバーし、2013年までには2億8500万人以上と米国のほとんどのエリアをカバーするのが目標だと説明する。
今回提供されるVerizonのLTEサービスは、以前にGoogleの参入表明で話題になった周波数オークションで同社が獲得した700MHz帯のCブロックを利用したものだ。この帯域はTVのアナログ放送終了とともに利用可能となった領域で、その電波特性からデータ通信での利用に向いており、さらにVerizonの獲得したCブロックは帯域幅も広く、大規模なサービス展開が可能になることが予測されていた。Verizonによれば、同社の4G LTEサービスで当初提供される通信スピードは下り方向が5~12Mbps、上り方向が2~5Mbpsになる見込みだという。
前述のように、当初はPC向けのUSBモデムからの利用など、データ通信に特化したサービスとなり、後に携帯端末のリリースで一般向け製品ラインでもLTEの活用が始まるという。ただし、LTEはデータ通信専用となり、音声通話は既存のCDMA(EV-DO)ベースの3Gネットワークを利用することになる。これは米Sprint Nextelで提供されているHTC Evo 4Gがデータ通信ではWiMAX、通常の音声通話やWiMAXサービスの圏外では3Gサービスを利用するのと似ている。McAdam氏によれば、将来的なLTEへの一本化は時期を見て検討していくという。LTEサービスはすべてIPベースのネットワークで構築されており、ここでの音声通話はVoIPを利用することになる。LTEへの一本化は、こうしたVoIPアプリケーションの組み込みが必須となる。なお、LTEをサポートした3Gと両対応のデュアルモード端末のラインナップの詳細については、来年2011年1月初旬に米ネバダ州ラスベガスで開催されるInternational CES 2011で順次公開していくという。
このVerizonの会見でもう1つ話題になったのは、同社が間もなくiPhoneの販売に乗り出すという噂だ。現状、米国では米AT&TがiPhoneの独占販売を行っている。だが最近になり、Appleが台湾系ベンダーと共同でCDMA版iPhoneの開発を進めており、これをAT&Tの独占販売権が切れる今年末から来年初のタイミングにかけてVerizon Wirelessが販売に乗り出すのではないかという噂が持ち上がってきた。McAdam氏の記者会見の直前、米Wall Street Journalら複数のメディアが2011年第1四半期のタイミングでVerizonがiPhoneを市場投入するとの報道を行っている。これに関して質問されたMcAdam氏は「現状でコメントすることはないが、しかるべきタイミングでAppleからアナウンスが行われるだろう。もしAppleがVerizonをパートナーに選んだのなら、それはスマートフォンやタブレットでの利用に適したLTEネットワークの将来性を見込まれたものだと考えている」と述べている。