10月8日~12月12日まで、東京上野の東京国立博物館・平成館において、特別展「東大寺大仏 -天平の至宝-」が開催される。7日には、一般公開を前に展示品がプレス向けに公開された。この特別展では、バーチャルリアリティにより、創建当時の東大寺の大仏および大仏殿を再現している。
今回の特別展は、光明皇后1250年御遠忌という節目を記念して開催されるもの。国宝である八角燈籠や法華堂本尊の不空羂索観音菩薩立像(ふくうけんさくかんのんぼさつりゅうぞう)の光背は寺外初公開となる。館内には4つの会場が設けられ、第2会場ではVRシアターとして、バーチャルリアリティ・コンテンツ「大仏の世界」が再生される。
国宝 八角燈籠 |
八角燈籠の火袋には4枚の羽目板と4枚の扉が交互にあり、西北面の羽目板(尺八を吹く音声菩薩)、西面の扉、西南面の羽目板(横笛を吹く音声菩薩)はオリジナルだという。写真は西北面の羽目板(左)と西面の扉(右) |
東大寺は、1180年と1567年の2度火災に合い多くを焼失、現在の大仏殿は江戸時代に建てられたもので、大仏については創建当時のものは台座と下半身の一部といわれている。そこで今回、コンピュータ・グラフィックスにより、創建当時の大仏および大仏殿を再現。作成は、日本建築史の専門家である鈴木嘉吉氏の監修のもと、奈良・朝護孫子寺所蔵の国宝「信貴山縁起絵巻」に描かれた大仏殿や、唐招提寺金堂など奈良時代の建築を参照し、凸版印刷が制作を行っている。映像の再生は、日本HPのワークステーション9台を使ってリアルタイムで行い、プロジェクタ5台を使い、天井にも投影しながら包みこまれるような立体感を演出している。
コンテンツの作成は、今年の4月から行い、大仏の表情や姿かたちのほか、鋳造時期による表面の違いを表現するため、東大寺の協力を得ながら5日間の撮影を実施。通常は見ることができない、背中や脚部上部を含む約28,000枚にのぼるデジカメ写真を撮影したという。撮影では、色の再現性を高めるため、カメラのCCDとプロジェクタの相性も考慮したという。
凸版印刷 デジタルコンテンツ部 三枝太氏によれば、このような文化財のバーチャルリアリティ・コンテンツは10年前から手がけ、今回で27例目だという。東京国立博物館は3回目で、ほかにも国立科学博物館や東京都美術館などでも作成したという。今回のコンテンツでは、大仏の顔の部分の作成がとくに難しかったという。また、天井をスクリーンとして使用するのは今回が初めてで、正面の映像と天井の映像の光の加減を調整するのに苦労したという。