パソコンまたは携帯デバイスから利用するネットコンテンツが実際に増えていることを考えると、「1つのスクリーンで、1つのインターフェイスを通じて、すべてのコンテンツにアクセスできる」というのは確かに魅力的なソリューションだと思う。それがTVならば、スクリーンが大きくAV機能が充実している。エンターテインメントコンテンツを楽しむのに最適だ。

ただし現時点で「1つのインターフェイスで、すべてのコンテンツ」が実現するのは、Dish NetworkのTVサービスを契約している場合のみだ。ケーブルTV会社がGoogle TVに参加していないため、多くの米国家庭が契約しているケーブルTVサービスでは双方向的な機能を利用できない。Google TVの背後には一通りのパートナーが揃っているものの、ユーザーに選択肢があるほど幅広くないのが現状だ。シームレスでシンプルな利用体験がGoogle TVの普及のカギになるならば、パートナーの拡大が今後の課題になる。

ソフトウエア、ハードウエア、家電メーカー、TVサービス、コンテンツ、流通とパートナーが揃っているのがGoogle TVの強みだと語るLogitech CEOのJerry Quindlen氏

またジェネラルセッション後のQ&Aセッションで299.99ドルという価格が議論になった。AppleがiPhone 3Gを199ドルで投入したように、米国では新しい市場を開拓する製品の値札は200ドル以下が望ましいという見方が根強い。「ゲームコンソールならともかく、セットトップボックスが300ドルで売れるとは思えない」という手厳しいコメントも出てきた。これに対してGoogleのグループプロダクトマネージャーのRishi Chandra氏は、アップデートやアプリの追加で常に進化し続けるGoogle TVデバイスは既存のセットトップボックスとは異なると述べた。多機能携帯がモバイルWebやモバイルゲームを開拓したように、Google TVもTV視聴を便利にするだけではなく、TVの新たな可能性を引き出すと言いたいのだろう。ただ、良くも悪くもGoogle TVの今後を予想するのは難しい。発表会では「Seeing is believing (百聞は一見にしかず)」という言葉が何度も用いられたが、最初の糸口をつかめなければ、見てもらえずに広まらない。ユーザーが増えないから、開発者の意欲が高まらないという悪循環に陥る恐れもある。