静電容量方式タッチのトレンド

静電容量方式タッチパネル・ボタンおよびコントローラは、市場では2つの異なるカテゴリに分けられます。それはマイクロコントローラ・ベースのカテゴリと、ステートマシン・ベースのカテゴリです。カテゴリの違いによって、システムが必要とする消費電力量に直接的な影響があります。また、現在はITO単独層を使用する静電容量方式タッチパネル・コントローラが多くなる傾向となっています(これについては後半で説明します)。

マイクロコントローラ・パス

マイクロコントローラ・ベースの静電容量方式タッチ・ソリューションは、マイクロコントローラの汎用I/Oブロックを利用して、外部のキャパシタに充電電流を供給できるようにする構成になっています。多くのマイクロコントローラには、デフォルトでカウンター/タイマーが組み込まれています。必要なのはコンパレータ(ヒステリシス付き)のみです。したがって多くのマイクロコントローラ・メーカーは、タッチ・コントロール事業部門も存在しています。実質的にマイクロコントローラを扱う企業であればタッチ/ボタン・センサ製品を製造することができます。図5でマイクロコントローラをタッチボタン・コントローラとして使用する方法を示します。基本的には、ファームウェアのみを新たに追加すれば、静電容量方式タッチボタン・センサを生成できます。

図5 マイクロコントローラ・ベースの静電容量方式タッチボタン・コントローラ(左・上から順に、その他の周辺パーツ、RAM、ROM、CPUコアARM/MIPS、制御部、コンパレータ、カウンタ/タイマ、D/Aコンバータ、レジスタ、ホールド・コンデンサ)

ただし、トレードオフが存在します。標準的なマイクロコントローラは、異なるアプリケーションのさまざまなニーズや需要に柔軟に対応する点で非常に優れています。たとえば、マイクロコントローラでは、設計の実用化のためにファームウェアにおいて多少の工数が必要になります。通常、テンプレート・コードがあれば設計サイクルを短縮できますが、これもまた最適ではありません。マイクロコントローラ・ベースの設計を使用する明確なメリットの1つは、すでにマイクロコントローラを持っている場合にファームウェアに比較的容易に実装可能である、ということです。

一方でデメリットとしては、そのソリューションが電力の最適化を行っていない場合、消費電力が常に高くなることです。これは、マイクロコントローラは、エネルギーを保全する目的で、複数の電力を節約する段階を踏む必要があるためです。たとえば、スリープおよびウェイクアップ、タッチ・イベントの検出段階、およびそこから再びスリープ状態に戻る段階などがあげられますが、これらのイベントに限りません。マイクロコントローラ・パスは、起動時に関しては遅く、消費電力に関しては無駄が多いというのが実情です。キャパシタ・センス・モードで利用する場合に、マイクロコントローラの消費電力は、500μWから4.5mWまで及ぶ可能性があります。