UI技術に必要な電力について
各ユーザー・インタフェース・トポロジの基本的な技術的メリットおよびデメリットを理解することは重要です。実際、多くの視点から見ていくことが可能ですが、ここでは既存のユーザー・インタフェースに使用される電力に主に焦点をあてていきます。図1は、現在使用されている代表的なユーザー・インタフェース・アーキテクチャを示しています。
携帯機器の機械式ボタン・ソリューションは、キーパッド・スキャニングと呼ばれる割り込みベースの時分割検出方式を採用しています。ユーザーがある特定のボタンを「押す」と、割り込みが内部で発生し、実際にキーボードのスキャニングが行われます。理論上の静電流はゼロ(または少なくともリーク電流のみ)になります。しかしながら、実際にキーをスキャニングして位置を特定する際は、数百μAのわずかなピーク電流が短時間流れるため、平均電流は小さくなります。図2は概念的なアーキテクチャを示しています。電源電圧(VDD)が3.3Vでプルアップ抵抗が10kΩの場合、プルアップ電流は3.3V/10k=330μAとなります。この電流はボタンが「押された」場合に流れます。瞬時にボタンが押された際、スイッチが閉じて330μAのピーク電流が流れます。
抵抗膜方式メカニズムは機械式ボタンのメカニズムと似ているものの、電流量および回路の複雑さが増しています。抵抗膜方式タッチ・アーキテクチャは、サブストレート(通常はガラス)またはポリエチレン・テレフタレート(PET:PolyEthylene Terephthalate)の上に、半抵抗成分であるITO(Indium Tin Oxide)を蒸着し、2枚の蒸着済みのスクリーンを貼り合わせて電源を直列に接続すると可変抵抗を生成します。
これは「2枚のパネルが接触する」xとyの位置に比例する電圧を、電源ソースに合わせて出力します。直流(DC)の静電流が比較的高くなる可能性がありますが、一時的な消費電流は1インチあたりのドット数(dpi)の解像度と、必要とされる読み取り速度によって全く異なります。したがって、位置を正確に伝えるために必要な電流の量はスクリーン密度に比例します。この際の電流は機械式ボタンの場合よりもはるかに大きくなります。
これは、抵抗膜方式タッチパネルは「機械式ボタン」を大量に配列させたものとして考えることができるためです。したがって、dpiが多ければ多いほど、スクリーン上の任意のポイントを検出するために必要な電力は大きくなります(図3を参照)。電流経路は「タッチ(接触)」が行われると形成されます。これによって抵抗膜方式タッチパネル・コントローラが立ち上がり、内部のA/Dコンバータ(ADC)がポイントAから電圧を読み込み、その結果をポイントB(結果レジスタ)に反映させます。ADCを起動し、片方がX座標を伝達しもう片方がY座標を伝達することで、2枚のスクリーンが同時に「押された」場合のXとYの座標がわかります。最新の抵抗膜方式タッチパネル・コントローラは、通常、スリープ・モード中に直流の静電流を切断するため、スイッチをグランドに統合しています。ただし、既述のとおり、ピーク電流の数mA程度の電流(I_コンバート)がフェーズAとフェーズBのわずかな間隔に供給および同期されます。
静電容量方式タッチ・メカニズムは、さらに複雑になります。静電容量と電荷を用いた非常にシンプルな原則をもとにしているものの、信頼性が高く使いやすいインタフェース・ソリューションを構築して最適化することはきわめて難しいといえます。静電容量方式タッチパネル・ソリューションの基本原理は、シングルポイントボタン製品を確認することでよく理解できるでしょう。図4は、静電容量方式タッチボタン・ソリューションをわかりやすく示しています。
動作は非常に簡単ですが非常に有効的です。電荷は外部の保持キャパシタに保持され、関連するカウントダウン(またはカウントアップ)・タイマーがキャパシタ・ピンで比較電圧と接続されます。すると、電荷が放電され、抵抗とキャパシタ間(RC)の放電回路が接続され、RC時定数を計算し知らせます。指などの伝導経路により放電がより早く行われるとタッチ・イベントが発生します。このシンプルでありながら効果的な技術を使用すると、静電容量検出素子アレイを使って静電容量タッチパネルを形成できます。これは、抵抗膜方式タッチパネルが機械式ボタンのアレイに類似している点において非常に似ています。接触検出の静電容量を変換する場合に使用される電力量は、システムからの感度を変換する場合と同様に、サンプリング時間に直接比例します。タッチボタン・コントローラを確実に有効にするために、数μAから数十mAの電流までの範囲で電流が流れる可能性があります。