チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー ・リミテッド(チューリッヒ保険) 日本支店の顧客対応拠点である『カスタマー・ケア・センター』を紹介する第2回目。前回は、スタッフの直接採用や、スタッフがフロント・バックオフィス業務も手がけるワンストップ型サービスを提供するなど、いわゆる「コールセンター」とは異なる特徴のある運営を行っていることを紹介した。
「後編」となる今回は、カスタマー・ケア・センターのスタッフへの研修内容や、働く環境、サービスの品質管理のための評価方法などについて、同センター 統括部長の福永敏郎氏や、スタッフ本人にインタビューした内容を紹介したい。
――「カスタマー・ケア・センター」においては、スタッフを直接採用し、「傾聴力」の大切さなどのチューリッヒ保険ならではの理念を、研修を通じてスタッフと共有していくとお聞きしました。具体的な研修内容は、どのようになっているのでしょうか?
スタッフに関しては、研修と、その後の品質管理の継続的チェックというところを意識しています。当然スタッフも、いきなり全部できるわけではありませんから、まず最初は、新規のセールスの場合は、見積りを電話口で実施することから始まります。
まずその前に、約1カ月の集合研修において、半月ほど座学で知識を身に付けたり、ロールプレイングを行ったりして、その上で知識面での見極めテストをして、今度は現場の配属になります。そこでは、先輩が対応している姿を、横でモニタリングしながら、得た知識を定着させていき、フォローの研修も平行して行っていきます。
1カ月の研修が終わると、一旦そこでデビューするのですが、この段階ではまだ、1つだけのスキルです。ここで2~3カ月たって慣れてきて、「安心して任せられるね」となると、次は契約締結のプロセスになるのですが、見積書が手元にあるお客様から電話をいただいて、問い合わせに答えるだけではなく、その場で保険証券を作成できるようになってもらいます。ここまで来るのに、約3カ月くらいかかります。
こうして、現場のOJTと研修を繰り返しながら、本当の意味で全ての業務ができるようになるまで、約1年ぐらいかかります。カスタマー・ケア・センターの特徴として、一旦入社していただくと、長く勤務してくれる人が多いことが挙げられます。在籍期間は、平均でも4年、長い人は10年以上在籍している人もいます。
――居心地のよさそうな職場ですね。
ケア・スタッフは、イスに座って長い時間対応しますし、いろんな意味で知識も身につけなければいけません。また、応対は対面でない分、気をつかわなければいけませんので、なるべく、ストレスを減らす環境を作るように心がけています。
一人ひとりの座っているスペースなんですが、机の形は少しユニークで、いわゆる長方形ではなく、山型になっていて、配置もジグザグにしています。ジグザグにすることで、正面に人がいない分、圧迫感がありません。机の横幅は、80cmぐらいのところもあるようですが、140cmと広くなっています。机の奥行きも持たせていて、空間が広く感じられるようにしています。
スタッフのイスも、ハーマンミラー社の「アーロンチェア」を採用していますが、このイスは、長時間座っていてもいいように、自分の好きな角度に曲がるようになっています。また、メッシュなので、夏場などでも下がむれないようになっています。
照明の色にも配慮していまして、空間によって使い分けるようにしています。例えば、オペレーションを行うところは白色系、休憩室や通路などは、リラックスできるように暖色系としています。通路は広めにして余計な物を置かないことで、仕事のモチベーションを上げるような工夫をしています。
会議室はいろんな色を使っていて、黄色など活気が出るような色使いをしています。スタッフは地元の人も多いので、色を鮮やかにすることで外と仕事の切り替えをしてもらい、「さぁ、仕事をするぞ」という気持ちになってもらうというような事も意識しています。
――そうしたことを通じて、スタッフのやる気を引き出しているのですね。インタビューの冒頭で、お客様のニーズを聞くことのできる「傾聴力」が重要というお話がありましたが、働きやすい環境も、お客様の話をじっくり聞くという姿勢を作る上で役立ちそうですね。
我々も設立当初のころは、お客様にこういうメリットがありますよとか、訴えるような電話の応対も一時期やっていたこともあります。ですが、やはりまず、お客様の声をしっかり受け止めることから始めようということで、お客様が望まれていることを一旦そっくり受け取って、キャッチボールをしながら応対することを大切にしていこうということになったのです。
その上で、ニーズが何かお客様に深く聞いて、そこから(需要を)喚起していくようにしています。やはり、最終的に契約をしてもらえることが大切なので、我々のよさを伝えるということよりも、サービスの品質を通して、売り上げにつなげるという方針をとっています。
――お客様への対応内容が、サービスの品質ということですね。
当センターでは、品質管理のために、オペレーションから独立した「クオリティ・アシュアランス(QA)」チームという専門の部隊を設けています。QAチームでは、スタッフがお客様と応対する電話をモニタリングして、サンプリングを行い、フィードバックが必要なところはフィードバックしています。
各スタッフに対する定期的なモニタリングでは、「コンプライアンス」「コミュニケーション」「ホスピタリティ」「正確性」などの項目について、評価します。評価では、前回と比較して、どの項目の点数が上がったか、あるいは落ちたかを見ることができます。チームごとのレポートでは、在籍年数による分析などもあり、ベテランとなって慣れが出てきた人でも、「気をつけなきゃ」と思わせるような評価結果も出ます。
また、スタッフ一人ひとりの「アセスメントシート」もあり、その人の電話応対の長所や短所、コンプライアンス面でどうだったか、コンサルティング面でどうだったかということが分かるようにしています。
通常、部下の評価はスーパーバイザーが行いますが、当センターでは専門のQAチームからスーパーバイザーに、スーパーバイザーからケア・スタッフにという、フィードバックの一連の流れとなっています。
――なるほど。専門の品質管理チームが、厳しく顧客対応をチェックするのですね。かなり厳しい内容にも思えますが。
4年前にQAのフォローを作って導入した当初は、「監視されているみたいだ」というような声もありましたが、今では、「不適切な説明をしてしまった時など、そういったことを次回から未然に防げるようになる」など、自分の癖や誤りが分かるとスタッフの間でも評価されるようになっています。
成約件数が下がり気味な人を優先してフィードバックするようにもしていまして、QAチームを設置して以降、全体の成約件数は確実に上がりました。また、優秀な人を評価し、表彰するなどして、モチベーションを高めるようにしています。
――ありがとうございました。
スタッフに対する丁寧な研修と働きやすい環境づくり、厳しい品質管理が、「カスタマー・ケア・センター」の特徴であり、チューリッヒ保険の顧客対応を支えていることが、福永氏へのインタビューから伺えた。今回はさらに、ケア・スタッフの川那子和浩氏が、カスタマー・ケア・センターでの勤務について語ってくれたので、以下に紹介したい。
――「カスタマー・ケア・センター」で勤務しての感想をお聞かせいただけますか?
一人ひとりに目が行き届いているというのが感想です。少人数制での研修では、理解がしっかりなされているか、きちんと確認されています。ですから、放りっぱなしになるというような事は、ありませんでした。
――チューリッヒ保険を、勤務先をして選ばれた理由はどのようなものでしょうか?
そもそも損害保険に興味があったということがあります。以前は、大手PCメーカーのコールセンターに勤務していたのですが、規模が大きすぎて、どうしてもこぼれてしまう、置いていかれてしまう人がいました。しかしチューリッヒ保険は、一人ひとりに対して手厚く指導を行っていることも、選んだ理由の1つです。
――「クオリティ・アシュアランス(QA)」チームによる、品質管理も大きな特徴ですが、どのような感想をお持ちですか?
QAには、2つの側面があると思っています。1つは、コンプライアンス面で、誤った案内をしていないか、防御する側面です。また、コンサルティング面では、お客様からの質問があった場合、どのように対応すればいいか分かるようになり、スキルの上達につながります。
――設備面などでは、満足されていますか?
ヨーロッパ風の間接照明などで、独特の雰囲気もありますね(笑)。仕事のみならず、ゆとりの持てる環境だと思っています。
――ありがとうございました。