毎日新聞社は13日、都内で記者発表会を行い、作家・よしもとばななの新刊『もしもし下北沢』を書籍版(単行本)に加え、電子書籍版でも発売すると発表した。電子書籍版はApp Storeを通じて、iPhone/iPad向けに10月1日から配信予定。価格は10月7日まで900円、以後1,200円。書籍版は9月24日から配本を開始。販売価格は1,575円。

電子書籍版を手に持つよしもとばななさん

『もしもし下北沢』は父親の自殺で茫然自失の日々をすごしていた主人公の若い女性が下北沢に移り住み、母親とともに街に癒されながら少しずつ立ち直っていく姿を描いた小説。毎日新聞の土曜朝刊の連載で、単行本および電子書籍版が出版される。書籍の電子書籍化は同社にとって初の試みとなる。

毎日新聞社が電子書籍版に取り組んだのは、紙面に掲載された大野舞氏による挿絵、全49枚の活用を模索したことがきっかけ。同社の長谷川篤 コンテンツ事業本部長は「カラーの挿絵をすべて書籍に盛り込もうとすると高コストになるため、電子版を作った」と説明。あくまでテストケースとしての位置づけになるという。

電子版では特典としてすべての挿絵を掲載するほか、著者本人よる「連載にあたって」「連載を終わって」なども収録。また、10月に下北沢生まれの雀士、桜井昇一氏との対談を行い、バージョンアップ版として電子書籍版の購入者に無料配信をする予定。

著者のよしもとばななさんは記者会見の席上、「電子版の話をいただいたのは2週間前。まだ電子版を読んではいませんが、挿絵が入るというのはうれしい。iPadで面白いアプリがないかなと探しているような人に読んでほしい」と述べた。一方で、「作品がApp Storeで検索されないと埋もれてしまうかもしれない。そう考えたときに、電子書籍の行方がどうなるのかに関心があります」と話した。