Amazon.comの第3世代Kindle (以下Kindle 3)が好調に売れているようだ。7月28日に予約受付開始してから数日でソールドアウトになり、その状態が今も続いている。
Kindle 3は前世代と同じ対角6インチのE Inkディスプレイを搭載しながら、サイズが21%小さく、17%軽くなった。手に取ると小さくなったと実感できる。持ちやすい。それは軽くなったからだけではない。横幅がKindle 2の135ミリから123ミリになり、ディスプレイを囲む枠の幅が狭くなったものの、Kindleを持ったときに親指で支えるスペースがきちんと確保されている。また背面下部分にくぼみがつけられており、片手(左右どちらでも)でしっかりとホールドできる。持って読むことを考え抜いたデザインだと思う。
本体幅が狭くなったことで左右のページ操作ボタンも小さくなった。前世代までは、この最も使用するボタンが大きくデザインされていたので、細いボタンは頼りなく見えてしまうが、実際には大きな改善点だ。従来のペコっという騒がしい押下感が、カチっというしっかりしたボタンになった。また誤って押してしまうほどボタンが大きすぎず、目でボタンの位置を確認しなくても間違いなく押せる適度な大きさだ。
E Inkの新世代電子ペーパーPearlは、コントラスト比が前モデルから50%向上した。ディスプレイの解像度が前世代と同じ800×600なので、小さな文字の読みにくさは相変わらずだが、フォントを大きめに設定すると格段に読みやすい。E Inkペーパーの問題点としてページ移動の遅さがよく挙げられるが、Pearlは表示が20%高速になった。もちろんE Inkの特性で、リフレッシュの度に白黒が反転するためスムースなページ移動とは言い難いが、一瞬待たされるような感じはなくなり、ページを繰っていてストレスは感じない。
実験的なツールとしてWebKitブラウザを搭載している。これが複雑なレイアウトのWebサイトでもきちんと表示し、思いのほか使える。もちろん800×600のE Inkディスプレイなので、入り組んだレイアウトのページは表示できても読みにくい。スクロールもぎこちない。GmailなどE Inkディスプレイでも読めやすいサイトに限られるが、ブラウザ自体は底力がある。時々力つきて落ちてしまうのもご愛敬だ。
Kindle 3では日本人ユーザー待望の日本語表示が実現した。日本語のWebページ、テキスト、PDFファイルが問題なく表示される。ただし禁則処理が利いていないなど、日本語としての読みやすさまでは配慮されていない。Kindleが日本語に目を向けたのは大きな一歩だと思うが、表示はできてもリーダーデバイスの日本語対応としては不十分というのが現状だ。
Kindle 3は、本を読むための電子書籍リーダーとしてマイルストーンに到達したモデルだと思う。これまでは本に対して、Kindleユーザーは何千冊の電子書籍を持ち歩けるというような読書感以外の部分で納得して使っているところがあった。それが第3世代で、読書というもっとも大事な点で本に対抗できるようになってきた。これで139ドル(Wi-Fi)/ 189ドル(3G+Wi-Fi)という200ドル以下の価格を実現したのだから、売れているというのもうなずける (ちなみに07年11月に登場した初代Kindleは399ドルだった)。また文字を読むためのタブレットにフォーカスした結果、iPad登場後でもKindle 3が大ヒットしたのは興味深い。Kindle 3の読みやすさの改善はE Ink "Pearl"に負うところが大きく、Pearlの採用が広がれば、追い追いE Ink搭載の電子書籍リーダー全体がマイルストーンに達するということになる。本と電子書籍の逆転が現実味を帯びてくる。
不満点を挙げれば5wayコントローラの操作性とEPUB非対応だ。5wayコントローラでは、辞書機能やハイライト機能などを使うために目的の単語や文にたどり着くのに手間ひまがかかる。タッチスクリーンを備えたデバイスに慣れていると、思わずディスプレイを触りたくなる。ソニーのSony Reader Touch Editionのようなタッチパネルの導入を実現してほしい。そうなれば、Webブラウザもさらに魅力的になるだろう。EPUBについては、Kindle以外のほとんどの電子書籍リーダーがサポートし、DRMフリーのEPUB形式のファイルが数多く存在する。それらをKindleで表示できないのは残念だ。
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