iPodにiPhone、iPad、そしてMacなど、Apple製品の魅力を高めている要因の1つがiTunes Storeの存在だ。いま、このiTunes Storeの運営コストが話題になっている。
この件をレポートしているのは、先日紹介したiPod touchの販売台数予測を出した米Asymcoだ。同社によれば、現在のiTunes Storeの運営コストは月間ベースで約7,500万ドルであり、2009年時点の3,000万ドル程度から倍増しているという。これにならえば、2010年における年間運営コストは概算で9億ドルということになり、Store自身の年率成長分を加味すればほぼ10億ドルの水準に達する。Asymcoは自らをデータセンター運営関連のエキスパートではないと前置きしながらも、年間10億ドルという運営コストは高すぎると考えているようだ。特に問題となるのはデータセンターのみならず回線コストの部分で、2009年以降に運営コストが急増したことからみて、数十MB以上クラスのアプリや動画など重量級コンテンツの利用増加が影響している可能性がある。
ではなぜ、AppleはこれほどまでにiTunes Storeで効率の悪い運営を行っているのだろうか? Asymcoが指摘するように、AppleはつねづねiTunes StoreやApp Storeの仕組みが"損益分岐点"レベルで運営されていることを強調しており、基本的にStore運営で利益を出すことは眼中にないようだ。これらについては、あくまでiPodやiPhone、iPadといった各種iOSデバイス、さらにはMacといったハードウェア製品を売るための仕掛けと見なしている。一方でiTunes Storeが抱えるコンテンツライブラリは業界屈指の膨大なものであり、登録クレジットカードユーザー数は1億6000万に達する。これが意味するのは、こうしたオンラインストアの運営のみでライバルがAppleに対抗するのは容易ではないということ。片や利益度外視で攻めてくる相手に対し、オンラインストア運営のみで利益を得なければならないようでは勝負にならないといえる。