BenQは8月30日、台湾・台中市で「GLOBAL DISTRIBUTROR'S MEETING 2010 TAIWAN」(以下GDM)と題したディストリビューター向けの商品説明会を開催した。同社は例年、クリスマス商戦に合わせて新製品を投入しているが、その新製品について解説し、また実際の製品に触れる機会となっているとのこと。本レポートではまずGDM冒頭の基調講演からBenQの2010年年末商戦から2011年に向けての戦略をレポートしたい。
基調講演に立ったのは発表会の第一部がBenQグループChairmanであるK.Y. Lee氏、BenQのプレジデント兼CEOのConway Lee氏、BenQのExcutive Vice PresidentであるPeter Chen氏の3人。また、第二部ではAU OptronicsのVice PresidentであるMichael Tsai氏、Texas InstrumentsのSenior Vice PresidentであるKent Novak氏、Google TaiwanのGeneral ManagerであるLee-Feng Chien氏、BenQのVice ChairmanであるJerry Wang氏の4人が登壇した。
K.Y. Lee氏はその講演の冒頭で同社の業績について触れた。氏によればリーマンショック後の経済危機で一時出荷量が減少したものの、中国を含め新興国市場の景気回復などから2009年以降の業績回復と成長を見込んでいる。その鍵となるのが5つの「C」とから成るチャレンジだ。「Caring」「Climate Change」「Convergence」「Cloud Computing」「Emerging Coutries」で構成されている。
Caringは中国国内での「BenQ病院」が紹介された。同社は3年ほど前に自社工場でのヘルスケアから南京にBenQ病院を設立している。ヘルスケアやバイオテクノロジのリサーチを行うという目的があるとのことだが、病院内でのネットワークシステムや表示端末としての液晶パネル、照明などで最初に自社製品を採用できるというのもメリットであるとのことだ。さらに2番目のBenQ病院を蘇州にも建設予定であるとされる。
Climate Changeは「異常気象」を意味していると思われ、その重要政策として同社のグリーン環境対策を紹介している。工場・ビルでの省エネや風力・太陽光などのグリーン発電事業といったものから、製造や運送におけるカーボンフットプリント(いわゆるカーボンオフセットであると思われる)、ディスプレイ事業ではLEDバックライトの採用拡大などが紹介された。また、これは後の講演で紹介されたが、同社はCCFL管やLED電球、そしてソーラーパネルなども事業化している。BenQグループが液晶パネル製造を柱としているのに関連して、その技術を転用しさらに「エコ」というトレンドにも即した事業でもある。
そのほかConvergenceとCloud Computingは、主に電子書籍を中心とした情報端末事業、Emerging Coutriesは言うまでもなく新興国市場であり、同社もここを重視していくとのことだ。
Conway Lee氏のプレゼンテーションから。従来からのコアビジネス拡大と同時に、同社の得意とする技術をさらに発展させるという。その鍵となる技術というのが、インテリジェントディスプレイやMID、液晶技術開発とともに培った照明技術やソーラー、BenQ病院に代表されるようなケア分野だ |
BenQ病院では情報システムや照明機器、消耗品などでBenQグループの製品が優先的に使用される |
次世代光源として期待されるLED照明にも注力する。CCFL管も含め、液晶バックライトのコンポーネントを製造していた子会社の技術をBenQブランドとして展開する |
ソーラーパネルも製造。これも液晶パネル製造技術の延長線上、ということになる |
さて、液晶ディスプレイやDLPプロジェクタといった国内でも展開されている同社事業の今後についてはConway Lee氏が紹介している。2010年下期で最も注目されるのはVAタイプでLEDバックライトの24型ワイドモニタ、そして120MHz対応でLEDバックライトの23.6型ワイドモニタの2製品だ。どちらも現時点では世界初の製品となる見込み。また、同社としてはビデオ視聴用、業務用、ゲーム用、プロシューマ向けという4つのセグメントを重視しているという。ビデオ視聴用にはVA LEDモニタ、業務用にはエコ技術を搭載したモニタ、ゲーミングもLEDモニタや120MHzの3D対応モニタ、そしてプロシューマ向けにはVA LEDと同社のTrue Color技術を搭載したモニタ等を投入していくと説明した。
2010年Q3にはVAパネルでLEDバックライトの製品(従来製品はTNパネルのLEDバックライト)などが登場する見込み |
今後フォーカスしていくとされる分野は4つ。映像視聴向け製品、省電力をアピールする業務向け製品、ゲーマー向け製品、写真編集や映像編集といったプロシューマ向け製品 |
プロジェクタ事業では、教育市場向け、ホームエンタテインメントやパーソナルエディテインメントといった家庭向け市場に注力することが紹介された。教育市場向けには15製品を投入するとされる。特に投影距離の短いモデルを拡充するとともに、マウス機能をもつポインターやソフトウェアなどトータルで対応するとされる。また、家庭向けでは高輝度モデルやLED光源モデルを拡充するとしている。なお、BenQはデジタルカメラやデジタルビデオカメラも発売しているが、そのなかで注目なのがピコプロジェクタを搭載したデジタルビデオカメラだ。フルHD録画に対応したビデオカメラにテキサスインスツルメンツのDLPピコプロジェクタを内蔵し、撮影した映像をその場で投影できる。なお、第二部で登壇したTIのKent Novak氏もピコプロジェクタ市場の拡大を想定している。
同社のプロジェクタ事業は、DLPタイプで1位、教育分野で1位とのこと(2010年Q2) |
特に力を入れるとされるのが教育分野向けのプロジェクタ。大画面ながら投影距離が短く、PCと連動したポインター機能なども統合 |
また、同社日本法人であるベンキュージャパンのマーティン氏によれば、電子書籍端末も国内投入計画があるとのことなので紹介しておこう。基調講演で触れられたのは「nReader」というBenQブランドの電子書籍端末だ。最上位モデルは液晶パネルを搭載したiPadサイズのカラー端末、そして新書サイズのモノクロ電子ペーパー端末が紹介されている。WiFi対応モデルおよびWiFi/3G対応モデルとして登場する見込みだ。まずは台湾・中国においてGoogleBookやeBook台湾などとの協業からスタートし、日本での展開は3Gキャリアとの協業や供給量が安定した後となるという。また、電子書籍端末以外のクラウドコンピューティング関連としてはネットブックのほかテレビ・モニタ自体、プロジェクタ自体にシンクライアント機能を盛り込んだ製品も紹介があった。
さて、第二部からはAUOのMichael Tsai氏の講演から同社の液晶パネルのトレンドを紹介しよう。最初にAUOについて説明しておくと、同社はBenQグループの液晶パネル製造メーカーであり、BenQへの供給はもちろん他社にもOEMをしている。現在55型ワイド×6面を製造可能な第8.5世代の工場を所有しており、長期的には第11世代のパネル製造機を台湾工場に導入予定であるとされる。ちなみにBenQというと周辺機器メーカーというイメージが強いが、実際にはAUOなどBenQグループ企業の技術をまとめあげ、ハードウェア・ソフトウェアサービスと合わせた製品化とブランディングを手がけているというのが正しい。
AUOの紹介ではLEDバックライトのラインアップが紹介された。テレビ製品では24型から65型まで、モニタ製品では18.5型ワイドから27型ワイドまでがLEDバックライト製品として展開されている。また、今後注力する技術としてはマルチタッチ、TNパネルよりも視野角の広いVAパネル、そして3Dテレビを挙げている。さらに電子ペーパーやソーラーパネルなども同社が手掛ける製品だ。
同発表会では製品ショーケースも行われた。発表会で触れられた新製品や、新技術を盛り込んだコンセプトモデルなども展示されていたので、そちらの様子は別記事にて紹介したい。