図1 マカフィー インターネットセキュリティ 2011

マカフィーは、2011年版個人向けセキュリティ製品を9月3日から販売開始すると発表した。製品ラインナップは次の通りである。

  • マカフィー トータルプロテクション 2011
  • マカフィー インターネットセキュリティ 2011
  • マカフィー アンチウイルスプラス 2011

それぞれのエディションのおもな違いは、表1の通りである。

表1 マカフィーの各エディションの違い

- アンチウイルスプラス インターネットセキュリティ トータルプロテクション
ネットブック対応
リアルタイムセキュリティ
Webセキュリティ
快適なパソコン環境
ネット犯罪対策
保護者機能 -
バックアップ - ○(1GB) ○(2GB)
ネットワーク - -
有害リンクブロック - -

対応OSはWindows XP SP以降、Vista SP1以降(32/64ビット)、7(32/64ビット)。CPUは動作クロックが1GHz以上。RAMは、XPが256MB以上(512MB以上を推奨)、Vista/7が1GBB以上(2GB以上を推奨)。HDDの空き容量は360MB以上が必要となる。その他にインターネット接続環境、Webブラウザは、IE6以降、Firefox 3.5以降などに対応する。2010年2月には、ウイルススキャンが従来製品から325%以上高速化され、新しいインタフェースが採用されている(図2)。

図2 インターネットセキュリティのトップ画面

図3 畠中有道氏

これらの強化された機能に加え、今回の2011年版では、ウイルス検出能力の強化と未知の脅威への対応が行われた。これは、基盤技術であるGTI(グローバル・スレット・インテリジェンス)の脅威検出力、防護力を強化することで達成した。

これにより、偽陽性を排除し、ゼロディ攻撃、Operation Aurora型攻撃などを防ぐことができる。発表会は、まずマカフィーの取締役常務の畠中有道氏からの挨拶からスタートした。

畠中氏は、マカフィーがクラウドコンピューティングに対し、先駆的に取り組んできたことを強調。そこで培われた技術をセキュリティ製品に応用し、企業のみならず個人へも有効であると述べた。さらに、PC以外のデバイス、インターネットを使ったあらゆる環境に対応していくことを表明した。

コンテンツやメディアもクラウド化

最初に札幌市立大学デザイン学部教授の武邑光裕氏が基調公演を行った。タイトルは「進化するメディア環境」で、現在のインターネットやメディア環境から、将来の姿などを大胆に論じた。おもしろい話題が多かったのであるが、その中でも1つ取り上げたいのは「ウルトラ・バイオレット」である(図5)。

図4 武邑光裕氏

図5 ウルトラ・バイオレット

早ければ、年内にもトピックになると思われる。まず、クラウド上にコンテンツを保存する(これをデジタルロッカーという)。これまではメディアに応じたデバイスが必要であったが、ウルトラ・バイオレットでは、デバイスの差異を必要としない、つまり、どんなプラットフォームでもコンテンツを利用できるようになるというものだ。武邑氏は、コンテンツとメディアの境目が見えなくなることと理解しているとのことだ。最後に、今後10年のメディア環境の焦点をまとめた(図6)。

図6 今後10年のメディア環境の焦点

コンテンツやメディアもまたクラウド化し、変貌することが予想されるとのことだ。ここでもクラウドがキーワードの1つとなる。

マカフィーの個人向け製品の戦略とインテルについて

次いで、マカフィーのエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのトッド・ゲブハート氏が、マカフィーの個人向け製品への取り組みを語った。

図7 トッド・ゲブハート氏

セキュリティリーダとして、エンタープライズから個人まで幅広く対応していくことを語った。個人向けを見ても、SNSなどでマカフィーの製品が高い評価を受けているとのことだ。この発表会の1週間前に大きなニュースがあった。それは、マカフィーがインテルに買収されたことである。

図8 インテルによる買収について

トッド氏は、両社にとって、エキサイティングで、喜ばしいものであると語った。ソフトウェアとハードウェアが組み合わさったアプローチにより、さらに高度なセキュリティを提供できるとし、ソフトウェアのみアプローチとは異なるものが提供できるだろうと語った。今後の営業形態も、完全子会社として経営を続けるとのことだ。インテル側からマカフィーには、あらゆるプラットフォームを網羅する包括的なセキュリティを継続して提供が期待されているとのことだ。具体的な非インテルプラットフォームとは、SymbianやAndroidなどである。また、将来に向け、新たな投資を行い、その時々に存在するデバイスを守っていくとのことだ。PCだけを守る時代は終わっている。現在、インターネットには10億のデバイスが接続している。将来はこれが、500億となると予測する(図9)。

図9 インターネット接続するデバイス

マカフィーはあらゆるユーザに対し、今必要な保護を提供し、将来においても提供することを私からの最大のメッセージとしたい、と締めくくった。

2011年版セキュリティ製品について

最後に登壇したのは、マカフィーマーケティング本部プロダクトマーケティングマネージャーの葛原卓造氏である。

図10 葛原卓造氏

ここでは、2011年新製品のおもな特徴が紹介された。まず掲げられたのは「未知の脅威に瞬間対応」というキャッチであった。現在、1.7秒に1つの割合で新種のウイルスが発生している。これまでのウイルス定義ファイルの更新だけでは防げない。

図11 頻発するウイルスと未知の脅威

そこで使われるのがクラウドである。クラウドを使えば、一瞬にして情報を共有することができる。マカフィーは1999年という早い段階からクラウドベースの技術を利用し、それをセキュリティサービスとして提供してきた。現在では、ウイルス定義ファイルに未対応の新種のウイルスに対しても、瞬時でブロックすることが可能となった。その基盤技術が、GTI(グローバル・スレット・インテリジェンス)である(図12)。

図12 GTI(グローバル・スレット・インテリジェンス)

全世界のマカフィーラボの専任研究者、さらにエンドポイントやゲートウェイなどからの情報、様々なリサーチ、これら数多くの、そして裾野の広い情報を集めてデータベース化する。これをクラウドから提供することで、全世界のあらゆる場所で発生した新種のウイルスに対して対応が常時可能となる。そして、この技術を個人向けに提供するにあたり、図13のような形で提案している。

図13 マカフィーのクラウドベース技術

この図にある人型を、マカフィーでは「クラウドマン」と呼んでいるとのことだ。このクラウドマンが、ユーザのPCを守るというイメージを考えればよいであろう。新機能の1つウェブダウンロードプロテクションを例にその仕組みを説明しよう。PCにファイルをダウンロードする場合、従来の方法ではPCにダウンロードされてから、ウイルススキャンが行われる。この時点でウイルスが発見されれば、駆除となる。しかし、一度はPCに危険なファイルを入れてしまうことになる。マカフィーの場合には、クラウド上のデータベースに問い合わせ、その危険性を判定する。もし、ウイルスと判定されれば、ダウンロード前に警告をする。ウイルスなどの危険なファイルをPCに落とす必要がなく、ウイルス定義ファイルになくとも危険を防ぐことができる(図14)。

図14 ウェブダウンロードプロテクション

これ以外にも、負荷分散機能やオンラインバックアップ(アンチウイルスプラスを除く)などの新機能が搭載されている。マカフィーといえば、ウェブの評価としてサイトアドバイザをいち早く導入したことで知られる。大手セキュリティメーカとしての安心感のあるセキュリティソフトといえよう。マカフィーでは、2011年上半期にメジャーバージョンアップの提供を予定している。機会あれば、こちらも紹介したい。