AppleがLalaを買収して以降、iTunesの拡張に向けたさまざまな噂が登場し、次なる同社の動きについて予測が飛び交った。中でも典型なのが音楽サービスのダウンロード形態からWebストリーミングへの転換で、Lala閉鎖や巨大データセンター設立などはこのための布石だというのだ。だがAll Things DigitalのMediaMemoが音楽業界関係者らの話として伝えるところによれば、Appleの関心はストリーミングよりもむしろ、ソーシャルネットワークの部分にあるという。
MediaMemoのPeter Kafka氏は音楽業界エグゼクティブらの話として、Appleが来週開催予定の音楽イベントで、iTunes Music Storeの大規模な模様替えを発表することになるという予測を紹介している。ただしここで発表されるのは多くが予想している音楽ストリーミングではなく、むしろソーシャルネットワーク的なものになるというのだ(「Think social, not streaming」)。
Lala買収の件では、同社が行っていたサービスのライセンスは買収等によって他社に譲渡できるものではなく、たとえAppleがLalaを買収したとしてもそのままWeb音楽ストリーミングサービスを継続できなかった。だが前述の関係者らの話によれば、Appleはストリーミングサービス継続に必要なライセンス更新を現時点で行っておらず、直近でiTunesでの音楽ストリーミングサービスを提供できる状態にはないという。代わりにAppleが間もなくiTunesで提供しようとしているのが、Webベースで軽量化されたiTunes Storeであり、ユーザー同士が互いに音楽をより楽しむための仕掛けにあるというのだ。iTunes SNSは、そうした過程で登場してくる新サービスなのだとみられる。そして重要なのは手軽さの部分で、従来であれば音楽をiPod等に取り込むのにいったんアプリを切り替えてiTunes Storeへの接続動作が必要だったが、これをSNS上の簡単なリンク等で利用可能にするなど単純化することで、より利用シーンが拡大するというのがメリットになるという。
またここで登場した音楽エグゼクティブらの話によれば、現状で用意されているiPodの同期システムそのものにも手が加えられる可能性があるという。現在、音楽はMac等のマシン上でiTunesを経由してダウンロード/蓄積し、適宜プレイリスト単位でiPodへと転送している。同期はUSBケーブルを通じてのみ行われるため、シンプルな反面、手軽さでは若干の制約があったといえる。これをワイヤレス通信経由で同期可能にすれば、より使いやすくなる可能性があるという考えだ。
配信システムが固定化しつつあるとみられることもあるデジタル音楽サービスだが、まだまだいろいろ工夫の余地があるのかもしれない。このように新しいスタイルを模索する姿勢は支持したいものだ。