主だった経済指標もない中、懸念されていた米新規失業保険申請件数は、市場の予想よりは低下したことで、ドルが買い戻される展開になったが、週平均で見れば上昇傾向にあり、米経済に対する懸念が払しょくされた地合いにはならなかった。
GDPのほかに各国中央銀行総裁が集まるシンポジウムを控えて、まだまだ様子見であろうか。また、ドイツおよびカナダ当局から米経済に対する懸念コメントも発せられたことも重しとなり、株式市場は終始上値が重く、終値ベースでウォール街株価指数(原市場ダウ平均)はついに10000ドルを割り込んで終了。ユーロは、話題のアイルランドが短期国債入札を順調に消化されたことが好感され、対円でも堅調に推移し、107円台を回復した。ただ、市場における不透明感が払しょくされた地合いではないことから、リスク回避的な地合いは継続された。
主な経済指標
・08:30 (日)7月全国コア消費者物価指数
・08:30 (日)8月東京都区部消費者物価指数
・08:30 (日)7月有効求人倍率
・08:30 (日)7月完全失業率
・08:30 (日)7月家計調査
・15:00 (ドイツ)7月輸入物価
・17:30 (英)第2・四半期GDP 改定値
・21:30 (米)第2・四半期 GDP 改定値
・22:55 (米)8月米ミシガン大消費者信頼感指数 確報値
・23:00 (米)バーナンキ米FRB議長 講演
ついにウォール街株価指数が大台を割り込んでしまう展開になった。各国当局が米経済に対する懸念を発し、その影響が自国経済に波及することをかなり懸念しているのではないだろうか。また、別の視点で見れば、米当局がある程度黙認しているドル安傾向が、他の国にとっては通貨高という側面になることから、米国のような巨大消費市場を抱えていない国にとっては懸念される材料にはなっているかもしれない。
この点は、日本当局にとってはむしろ好材料。市場においては、各国との協調介入の可能性は低いものの、日銀の単独行動の可能性は否定していないようで、FRBがどのようなスタンスをとるかは不透明ながらも、援軍コメントの可能性が出てくるかどうか。
こういった中で、今晩からウィスコンシンで各国総裁が集まってシンポジウムが予定されており、白川日銀総裁も出席し、FRB議長の講演も予定されている。個別の会談予定は現状では設定されていないがようだが、現状認識の意見交換は当然されるであろう。
ただ、ポイントとしてはECBのスタンス。ユーロ圏内の意見調整もさることながら、現状のユーロの水準に関しては、むしろ歓迎しているスタンスであり、各国政府・産業界からも容認姿勢が多い。よって、コメントによる援軍はあったとしても、協調行動に関しては、あまり期待しないほうがよいか。
そうなると、日銀の単独行動が実際にあるのかどうか、ということを気にすることになるが、はたしてどの程度の効果があるであろうか。本邦実需筋の円買い需要は、対ドルだけではなく他の外貨においても旺盛に控えているという観測がある。また、外貨準備の動きに関しても、ユーロ・ドル以外の通貨としての興味がアジア筋などからある。マクロ的にも欧米経済に対する警戒感がある。その意味では単純に可能性が出てきたからと言って現状水準からの外貨ロングはまだ厳しい展開であろうか。
ましてや、株式市場を取り巻くリスク回避的な地合いが払しょくされていないのであれば、なおさら単純な行動をとる場合では効果は限定的になるかもしれない。ただ、最終的な現金化というリスク回避の展開になれば、ドルが好感されやすくなる可能性があり、そのタイミングにおいて当局が動けば、効果が増幅されるのだが、そこまでうまくタイミングをはかることができるかどうか。実際の権限は財務省にあるために、事前調整をしっかりと行えるか。また、今晩の会合及び米GDP改定値の内容を控えていることから、アジア時間における株式市場の展開を見つつ、もみ合いの展開となろうか。
ちなみに、朝方には日本の経済指標が集中して発表されるが、よほど市場の予想(ロイターなどでもチェック可能)とかい離しない限り、市場への反応は株式市場ぐらいで、為替への影響は少ないとみられる。