東京証券取引所グループ 代表執行役社長の斉藤惇氏は24日、定例の記者会見において、急激な円高に関し、「(今の円高は)根拠なき熱狂の最たるもので、明らかに投機筋の遊びにすぎない。(国家による)介入はあるという姿勢を、はっきり示すべきである」と述べた。
斉藤氏は会見で、現在の世界の経済状況について、「一番危惧しているのは米国の状況」とし、「米国における住宅・不動産の問題は、解決していないのが現状」と指摘。その影響で各州に不動産税が入らなくなり、州が雇う地方公務員の解雇などが行われ、さまざまな職業が「一気に失業集団になっている」と話し、米国で地方の困窮が深刻化していると述べた。
同時に、輸出促進という政策から、かなり保護主義的な動きが米国に蔓延していると言及。今年11月に行われる中間選挙の後、経済が回復軌道に乗れるかは、「(米国の)現場を知っている人ほど、非常に警戒している」と述べた。
一方、ヨーロッパに関しては、ユーロが南東欧諸国をベースにした評価になっているため、ユーロ安を背景にし、輸出がGDPの約3割を占めるドイツが特に恩恵を被っていると指摘。富める国と富まざる国がEUの中で同居しているとしながらも、「ヨーロッパは、当面はそんなに悪くない状況」との見方を示した。
欧米の状況について述べた後、斉藤氏は「日本の位置づけは決して悪くないが、円の問題は相当真剣に考えるべき」と発言。「日本の円(高)は、"根拠なき熱狂"の最たるもの。熱狂のまま、大暴騰している」と指摘した。
さらに、将来の経常収支の赤字の可能性があることや多額の国債発行残高があるにもかかわらず、円高が進んでいる現状を指摘し、「(今の円高は)明らかに投機筋の遊び」とし、「国家が毅然とした姿勢を示せば、この種の投機筋は、少なくとも根拠なき熱狂はしない」、また、「介入はあるという姿勢を、はっきり示すべきである」との意見を述べた。
さらに、「中国は堂々たる介入をやって、スイスだってもう2回くらい通貨介入をやっている。どこだって、自分が生きるために必死の事をやるのは当たり前で、あまりもってまわった話ばかりしていても、市場になめられる」とも述べた。
24日の東京株式市場で日経平均株価が9,000円台を割り込んだことについては、「株は体温計みたいなもので、日本の経済の先は厳しいですよというサインだ。国家をあげて総合対策を打つべきだ」と主張としながら、「値段よりも、取引量が少ないことのほうが気になる」とし、売買代金の低迷に対しても懸念を示した。
日本銀行の金融政策については、「日銀がとれる政策はかなり限定されており、政策が誤っているとは思えない」と話していた。