『片腕マシンガール』や『ロボゲイシャ』など、過激な残酷描写とギャグ満載の映画を撮り続け、日本のみならず世界の映画ファンから熱い注目を浴びる日本の映画監督 井口昇。彼が原案を担当し、坂口拓(『魁!! 男塾』)、西村喜廣(『東京残酷警察』)と3人で共同監督した最新作『戦闘少女 血の鉄仮面伝説』のDVDが発売された。世界を相手に、「グロと笑いと家族愛」で戦い続ける井口監督に話を訊いた。
十八番の残酷少女アクションをセルフパロディ化
――『戦闘少女 血の鉄仮面伝説』は3人で監督されたそうですね。
井口昇(以下、井口)「今回、僕は原案となっていますが、プロットを作るまとめ役という感じでした。3人の監督がバラバラに出したアイデアを、僕がまとめてひとつの話にしたという感じです」
――本編は全3章仕立てなのですが、それぞれの監督が1章ごとに監督したのでしょうか?
井口「便宜上、そういうことにしていますが、実際は少し違うんです。例えば、1章の冒頭は西村監督が担当、前半の高校でのいじめのシーンは僕、そのあとの商店街での大殺戮は坂口監督というように、3人が場面ごとに監督した映像をミックスしています」
――オムニバスならまだしも、複数の監督による、そういうセッション的な監督スタイルというのは、あまり例がないと思うのですが……。
井口「ひとつの話を3人で監督するというスタイルは僕も初めてだったので、新鮮で楽しかったですね。現場でも、他の監督のパートを見つつ、自分の演出場面の出方を決めるというような、良いグルーヴ感がありました」
――この作品も「TOKYO SHOCK」(※北米のソフトメーカー FEVER DREAMS PRODUCTION出資による過激なアメリカ製"ニッポン"ホラー映画シリーズ。外国のマーケットを念頭に置きつつも、レイティングに縛られず、和テイスト+残虐路線を爆走する作風が特徴)からの流れを継承した作品という印象を受けます。
戦闘少女 血の鉄仮面伝説
学校で激しいいじめに遭う女子高生 渚凛は、右腕の痛みに悩まされていた。凛の16歳の誕生日に右腕が激しく変形し、凛は自分が人間ではなく、人間に忌み嫌われるヒルコ一族の末裔であることを知る。凛たちヒルコ一族を抹殺しようとする人間達を怒りのまま虐殺する凛の前に、ある人物が現れる…… |
井口「今作は東映映画なのですが、確かに『TOKYO SHOCK』に近い感覚はありますね。僕と西村監督がTOKYO SHOCKで『片腕マシンガール』、『東京残酷警察』、『ロボゲイシャ』を撮った後に、日本でも残酷描写の多いガールズアクションムービーが増えました。そこで、"どうせ二番煎じを作るなら、自分たちでセルフパロディを作ってしまおう"と確信犯的にやったんです」
――かなり描写は陰惨な作品なのですが、アイドル映画として成立しているのが凄いですよね。
井口「企画ありきか、タレントありきかという選択があるのですが、今回はアイドル映画としてスプラッタをやったらどうなんだろうというのがありました。撮影したら、どの監督も、意外とリリカルな仕上がりで、アイドル映画として成立していたのは嬉しいですね」
――本作の監督のひとりで、アクション俳優としても有名な坂口拓さんが、凄い女装して出演されていたのにも驚きました。
井口「キサラギというキャラクターを坂口さんからの希望で女装メイクでやってみたのですが、僕が悪ノリしすぎて、白塗りメイクにしたら、女というよりマイケル・ジャクソンになってしまいました(笑)」
――今回、井口監督は映像特典のスピンオフ短編も監督されていますよね。
井口「森田涼花さん演じるコスプレナース 佳恵と、坂口さん演じるキサラギのふたりだけが、劇中で過去が描かれていないので、後付けで設定を考えてDVD用に短編を作ったんです」
――井口監督の作品は海外でも高い評価を受けています。今作に関しては、いかがですか?
井口「7月に、ニューヨークの映画祭で上映されたのですが、爆笑が起こってました。朝の食卓のシーンですら笑っていただいたので、嬉しかったですね。カツ丼を食べながら防衛大臣が血まみれで死ぬというシーンも受けていたので、安心しました」