米AppleがNFC(Near Field Communication)と呼ばれる分野の専門家を最近になり雇い入れていると、米Near Field Communication Worldが8月13日(現地時間)に報じている。今回話題となっているのはBenjamin Vigierという人物で、同氏のLinkedInのプロフィールには米Appleのモバイルコマース担当製品マネージャと現在のステータスが記述されている。NFCとは、いわゆるRFIDなどに代表される近距離無線通信技術の総称で、将来的にAppleがiPhoneを使ったモバイル決済システムに参入するのではないかという説に真実味を持たせている。
日本では「オサイフケータイ」の総称で、モバイルSuicaやEdyといった携帯電話を使ったさまざまなモバイル決済システムが実用化され、すでに広く利用されている。ただ、日本や香港など、アジア地域でこそ広く普及している電子マネーだが、欧米ではこうしたシステムの導入は比較的遅れており、特に米国においては従来型の磁気カードを用いた接触型カードリーダーシステムが一般的で、モバイル決済システムについてはいまだフィールド実験段階にある。つい先日には、米AT&T、米Verizon Wireless、米T-Mobile USAの携帯キャリア3社によるスマートフォンを使った決済システム構築のアナウンスがあったばかりだ。
今回話題となっているVigier氏はモバイルコマース分野では10年以上の実績を持つベテランで、Apple参画以前にはmFoundryという企業でPayPal MobileやStarbucksのモバイル決済システムの開発にあたっていたという。そんな同氏がAppleのモバイルコマース担当製品マネージャに就任したことが意味するのは、Apple内で同種のシステムを構築しようとしていることにほかならない。Appleがモバイル決済システムに興味を持っていることは、以前に紹介した「Concert Ticket +」の電子チケットの特許申請などでも見て取れる。このほか、iPhoneを使ったRFIDタグの実験を行うサードパーティも存在しており、そう遠くない未来にNFCを利用したモバイル決済システム市場へとAppleが参入してくることになるかもしれない。