米Appleのハードウェアエンジニアリング担当幹部であるMark Papermaster氏が同社を辞めたことが判明した。米New York Timesが8月7日(現地時間)に伝えている。辞任の理由は不明。同氏はIBMの半導体部門トップからの転身で、iPodならびにiPhoneのハードウェアエンジニアリングの最高責任者に就任してからわずか1年半での離職となった。
Papermaster氏のAppleへの移籍話は2008年11月までさかのぼる。当時、同氏はIBMに在籍しており、その経歴は半導体部門の開発責任者を歴任し、最終的な役職は同社ブレードサーバ部門の責任者だった。当時Papermaster氏のApple移籍が話題になったのは、まず同氏のAppleでの役職が、iPod生みの親であるTony Fadell氏の後任で主力商品のiPod/ iPhoneの開発責任者であったこと、そしてAppleによるPapermaster氏引き抜きを巡ってIBMが裁判を起こしたことにある。当時Papermaster氏はIBMでも数少ない同社の企業秘密へとアクセスできる権限を持った上級幹部であり、こうした人物の競合他社への移籍を禁止する非競争契約書に違反するのではないかという理由だ。この裁判のためにPapermaster氏はたびたび裁判所へと出廷せねばならない状態が続くことになり、両社の関係に遺恨を残すとともに、同氏自身が疲弊する結果にもつながっている。逆にいえば、そこまでしてAppleはPapermaster氏を引き抜いて同社ポータブルデバイス部門のテコ入れを行いたかったのかもしれない。
今回のPapermaster氏の辞職について、その理由が個人的あるいはビジネス的な部分のどちらにあるかはわからない。さらにいえば、辞任と解任のどちらであるかも不明だ。だがタイミングの点から、現在大きな話題となっているiPhone 4のアンテナ問題が背景にあり、この責任をとって辞任または解任につながったという噂が広がっている。なお、Papermaster氏の後任にはBob Mansfield氏が就任する。Mansfield氏はMacのハードウェアエンジニアリングを担当しているシニアバイスプレジデントだ。