今年は猛暑で熱中症患者が激増。高齢者が室内で死亡するケースも相次いだ。「若いから……」と油断するのは危険。特に外回りの営業や、屋外作業の多い人は要注意だ。4日から約1週間は「梅雨明け直後と同じ程度の暑さになる可能性もある」(気象庁天気相談所)とのこと。今のうちに予防策を確認しておこう!
今夏の熱中症患者の増加は「最速ペース」
国立環境研究所の小野雅司氏によると、今年の熱中症患者の増加は「(比較できる)過去10年間でもっとも速いペース」。昨年5~9月に東京都内で熱中症とみられる症状で病院に運ばれた人は759人だが、今年は7月だけで1,464人(東京消防庁発表)。いかにハイペースかがわかる。
熱中症患者急増の理由だが、小野氏は「本来は梅雨明けから徐々に気温が上がっていくものだが、今年はまだ体が暑さに慣れていない梅雨明け直後に非常に暑い日が続き、しかも湿度も高かった。また夜も気温が下がらず体力が回復しにくかった」と話している。
気になる今後だが、気象庁では8月4日から約1週間について「気温が平年よりかなり高くなる確率が30%以上」として、7月30日に「異常天候早期警戒情報」を、北海道を除く全地域に出している。「35℃を超えることも各地でそれなりにあるだろう」(同庁天気相談所)とのことだ。
働き盛りの男性にも多い熱中症
「熱中症はほとんどが高齢者」というイメージを持つ人もいるかもしれないが、国立環境研究所がまとめた報告によると、昨年5月~9月の東京都内の熱中症患者(緊急搬送された患者)759人のうち、「65歳以上」は245人(32%)と3分の1程度。一方、「19~39歳」は183人、「40歳~65歳」は193人で、働き盛りの世代が暑さに"倒れる"ことも実はかなり多い。
熱中症になった場所をみると、「65歳以上」では半数以上が「自宅(居室)」だったのに対し「19~65歳」では、駅やデパートなどの「公衆出入り場所」や「作業所」、「運動中」が多かった。「屋外で長時間にわたって作業するような場合や自転車などで一軒一軒家を回るような仕事は特に注意が必要。外回りの営業などでもノルマや時間に追われて休みなしで動いているときは熱中症になりやすいでしょう」(小野氏)とのことだ。
男女別ではなんと約7割が男性。国立環境研究所の小野氏は「女性に比べ男性は、屋外での作業をしたり、激しいスポーツをしたりすることが多いことはあるだろうが(そうした理由があまり当てはまらない)高齢者でも男性が圧倒的に多い。理由ははっきりしない」と話している。
熱中症予防はまずは水分補給から
最後に具体的な熱中症の予防策を厚生労働省の「熱中症環境保健マニュアル」を参考に紹介する。
1. こまめな水分補給、ビールは×
「水分を採りすぎで体がバテる」というのは間違い。のどが渇いたと感じる前に水分を補給しよう。ちなみにアルコールでは水分補給にならない。尿の量を増やし体内の水分を排泄するので、飲んだ以上の水分が尿で失われてしまうそうだ。
2. 服装を工夫
クールビズは環境にやさしいだけでなく熱中症予防にも有効。吸汗・速乾素材や軽・涼スーツもおすすめ。黒色系の素材は避け、できるだけ襟元をゆるめ、通気を心がけよう。
3. 暑さを避ける
当たり前かもしれないが、猛暑のときには無理をせず日中の外出をできるだけ避ける。環境省では「熱中症予防情報サイト」を開設中。地域別の「暑さ指数」を確認できるので参考にするのもよいかも。
それでも熱中症になってしまったときは―。「職場における熱中症予防対策」によると、熱中症を疑ったときには風通しのよい日陰や、冷房が効いている室内に移動した上で服を脱がせて体を冷やし、水分や塩分を補給する。「意識がない」「呼びかけに応じない」「返事がおかしい」など重症が疑われる場合、自分で水分の摂取ができない場合は重症が疑われるのですぐに救急車を要請する。