次に、ユーザーに実際に体験してもらいたい機能についてヒューズ氏は「難しい質問ですね」と述べながらも次のように答えてくれた。

「現在Photoshopに寄せられるユーザーニーズは多様化しており、一言で表すのは大変困難です。ただ、私自身、写真家ということもあり、写真の世界の中で是非体験してほしい機能ということであれば『コンテンツに応じた塗り』ですね。デモを見たユーザーから大きな反響があり、『これは魔法のような技術だ!』という感想をいただきました。今までできなかった、もしくは、できると思わなかったことを可能にした技術であったこと。オブジェクトの追加や除去を、難しい技術を駆使せずとも手軽にパッとできること。この使い勝手の良さは、幅広いユーザーにアピールできます。『コンテンツに応じた塗り』は、Photoshop CS5に新たな価値を加え、さらにはPhotoshop CS5に価格以上の価値があるということを実感していただけるのではないでしょうか」

クリエイティブ業界でPhotoshopを利用するユーザーにとって、この「コンテンツに応じた塗り」がどれほど便利で、どれほど作業効率を向上させる機能であるかは明白だろう。ひと昔前であれば職人技とも言えるほどの技能を、誰もが容易に使いこなすことを可能にした。このようにPhotoshop CS5で図られた機能強化がどれほどのものか、想像に難くないのではないだろうか。

「そのほかにも、利用するユーザーが限定されるかもしれませんが、『ダイレクトマニピュレーション』という、直接マニピュレーション操作が行える機能も体験してもらいたいですね。それを具現化した『パペット』は、パワフルでありながら直感的に使うことができます。もうひとつは、セレクションとマスキングの強化によってもたらされた機能。例えば、人物を切り抜く際に髪の毛などに洗練されたエッジ感を出す。これはどんな分野、どんな業種のユーザーであっても必ず使うものではないでしょうか」

そう力強く語ったヒューズ氏。「できたらいいな」と思う機能を具現化し、その機能を誰もが使いこなせるようにする。コア技術の革新はもちろん、今まで以上にユーザー目線に立ち利便性を向上させていくというスタンスは、我々ユーザーにとってもありがたいことだ。そしてヒューズ氏に、「コンテンツに応じた塗り」で見せた"魔法"のような革新的な新技術を今後も見せてくれるのか伺ってみた。

「ノートPC、タブレット型デバイス、テレビなど、Photoshopを活用する場はますます広がっていくと考えられます。それだけ私たちの機会、チャンスも大きいと感じています。またPhotoshop CS5では、様々な研究所や大学の研究機関、企業と協力することにより、新たな技術を実現できたと思っています。ですから、Photoshop CS5をお使いになった方々の声を聞き、それらを吸い上げながら将来皆様に多くの魔法のような新技術をお見せすることができると思いますし、私もそれを楽しみにしているひとりです」

ワンソース・マルチユース、それに加えマルチデバイス。近い将来、様々なデバイスで何処にいても作業を行うことができるようになると力強く語ったヒューズ氏。Photoshopが切り拓いていく世界は、我々ユーザーに驚きや喜びをもたらすのはもちろん、画像編集や画像加工をより身近なものに変えてくれるに違いないと確信した。

インタビュー撮影:石井健