夏だから焼肉。でもその焼き方でいいの?
連日の猛暑で「暑いぃ~」が口癖のようになっているアナタ! 暑い夏だからこそおいしいものがあるんですよ!! 皆さんもうおわかりかと思うが、焼肉だ。焼肉でスタミナつけて、この夏を乗り切りたいものだ。
なんて、勢いに任せて肉をジュージュー焼いていて、ふと思うことがある。本当にこの焼き方でいいのだろうか。せっかくの肉を台無しにするような焼き方はしていないだろうか。
そこで今回は、東京・麻布の焼肉店「焼肉おくむら」で、焼肉のいろはを指南していただくことにした。同店は、目黒の老舗高級焼肉店で料理長を務めた奥村守さんが、自分の納得できる高品質の肉を提供したいと開いたこだわりの焼肉店である。奥村さん流の"本当においしい焼肉の焼き方"を教えていただくこととしよう。
掟その1・牛タンはしゃぶしゃぶの手つきで
まずは、ファーストオーダーの定番「牛タン」から。同店では通称"黒タン"と呼ばれる黒毛和牛のタンのみを使用。輸入物と比べて非常に脂のりがよく、やわらかいのが特徴だ。薄切りにした牛タンの場合、同店では塩、胡椒、ゴマ油をかけて提供する。これをまず焼き網にのせて片面を焼き、レア状態ながら少し火が入ってきて、外側が少し反り上がってきたところで素早くひっくり返す。肉を返すときに、しゃぶしゃぶの時のような手つきで、焼き網の上を"引きずる"ようにするのがポイントとのこと。
これは脂ののった部位を焼く際に、全体を温めて脂をしっとり仕上げるために必要な動作なのだという。ひっくり返す作業(つまり、引きずる作業も含む)を2回ずつ繰り返し、両面にうっすらと焼き色が付く程度で焼き上がり。「お食事の最初なので、まずはさっぱりと食べてほしい」という奥村さんは、塩やレモンなどさっぱりした味付けをオススメしている。同店では、梅干しをベースにした塩味で、さっぱりとした上品な味わいの「梅ダレ」を合わせる。焼きあがった牛タンの方はというと、独特のサクッとした食感がありつつ、温められた脂がやわらかくとろけるほど。
カルビという部位はない
次は、みんな大好き1番人気の「カルビ」。いきなり水をさすようだが、「実は"カルビ"という部位はない」というのは、皆さんご存じだろうか。多くの店が、脂ののった部位を「カルビ」、赤身が多い部位を「ロース」と大別して名付け、商品化している。同店では、複数の部位を使い分けて数種類のカルビを用意しており、バラ肉部分を"こってりした脂質のカルビ"、リブロースを"あっさりした脂質のカルビ"として紹介。自分好みの"カルビ"を見つけることができる。
写真の「カルビ」は、肩ロース部分を使用したもので、脂はさっぱりめ。「タン」のときと同じく、返すときに"引きずる"動作を入れながら焼く。返し(引きずり含む)を2回ほど繰り返し、やはり焼き色がつく程度で終了。こちらもある程度の食感がありつつやわらかく、肉から旨みのある脂がじわりとにじみ出る。同店では、ちょっと甘口な醤油ベースのもみダレでもんで提供し、焼いた後にはさっぱりめのつけダレで食べてもらっている。脂に甘みがあるので、やはりある程度甘みのあるタレ味と相性がよいそう。ごはんにのせたり、サンチュで巻いて食べるのももちろんオススメだ。
掟その2・とにかく焼きすぎるな
ここで、「よく"表面をカリッと焼く"とよく聞きますが、それはダメなのでしょうか」と奥村さんにお聞きすると、「それは厚く切った肉の場合ですね。ステーキカットでは、強火で表面をこんがり焼いて肉汁を閉じ込め、中はレアで仕上げることができます。薄切りの肉だと、表面がカリッとしてきたら焼き過ぎで焦げているようなものです」。
掟その3・ロースはできる限りレアに
次は、こちらも定番の「ロース」だが、「カルビ」と比べてパサパサする、という印象があるのではないだろうか。その要因は、やはり焼き過ぎ。「ロース」の場合はできるだけ動かさず、レアに仕上げるのがポイントだという。同店では、モモの一部のイチボと芯玉を使用。焼き網にのせて片面を焼き、上面の周り部分に肉汁が少し出てきた位で返す。返した面に焼き色が付くかどうかぐらいで再度返し、今度は焼き色がつくかどうか位で焼き上がりとなる。タンと異なり返す際には引きずりはしない。やや歯ごたえがありつつやわらかく、肉自体の味わいがしっかりとしている。肉本来の旨みを楽しんでもらうため、味付けは塩がオススメ。塩が薄いと味がぼやけるので、しっかりと強めに塩で味付けするとよいそうだ。
奥村さんによれば、脂の味が主体となる「カルビ」より、脂の少ない「ロース」こそ、肉本来の味わいを感じやすいという。芯玉やカイノミなど細かな部位ごとの味わいの違いもかなりはっきりしているので、通ならば自分好みのロースを探してみてはいかがだろう。
掟その4・新鮮なホルモンは脂が温まる程度に
さて、内臓肉系からは、定番の「ホルモン」。ホルモンというと内臓系全般も指すが、商品名の場合、小腸や大腸を使うことが多い。同店では、きれいな白い脂がたっぷりの、黒毛和牛のシマチョウ(大腸)を使用。大きめにカットし、表面には少し切り込みを入れている。まずシマチョウのヒダのある側を下にして、しっかり焼く。ここで7分(ぶ)程度まで火を通す。返した後は、あまり焼かず脂を温める程度。肉がそってくるので、その時は押さえよう。鮮度のよい同店の「ホルモン」は、フワフワした食感。口の中で、繊維も残らず脂が溶けていく。塩、胡椒、ゴマ油、ニンニクでつくる塩ダレをもみ込んで提供し、ダイダイ酢を使ったポン酢でさっぱりと食べるのが同店流。
いかがだろうか。これまでの焼き方とかなり違う! という方も多いことだろう。せっかくのおいしい焼肉。もっとおいしくするためにぜひ実践してほしい。おいしく肉を焼いて、暑い夏を乗り切ろう!
東京・麻布十番「焼肉おくむら」
肉にこだわりのある店主が、その時々のベストな状態のA5ランクの肉を生の状態で仕入れ、生で提供。仲卸を通さず直接仕入れを行なうことで中間コストを省き、それを価格に反映させているので、コストパフォーマンスの高さはお墨付き。特に店のお勧めなのが、「ヒレ」と「ホルモン」。肉の切り付け方やタレなども色々工夫していて、他では味わえない商品が揃う。焼肉メニューが900円~1,200円で楽しめる、お得なセットが揃ったランチタイムも人気だ。店舗詳細はこちら。
東京都港区麻布十番1-5-29
客単価: 5,000~6,000円