ひまわり証券は、6月30日から、投資信託『ひまわり&WVI・システムトレード・オープン』の販売を開始した。前回は、この投資信託が、投資信託の名前がついているものの、「システムトレードである」「デイトレードで完結する」「運用対象が先物・為替」などの特徴から、従来の投資信託よりもはるかに幅の広い利用法ができるといったことをご紹介した。
すでに先物やFXをやっている人が、リスクヘッジの意味で自分のポートフォリオに組み込む。あるいは、これから先物やFXを始めたいが、少しハードルの高さを感じている人が、入門編として投資してみる。そして、もちろん、従来の投資信託と同じように、高額の資金を長期に投資することもできる。使う人のニーズに合せて、さまざまな使い方ができる投資信託なのだ。今回は、その心臓部であるトレードシステムがどのような考え方の元に開発されたのかをご紹介したい。
二重の安全弁を設けることで「リスク管理」を実現
「システムトレード・オープン」のシステムは、二層構造になっている。株価指数先物6システム、為替5システムが基本になっていて、これは従来のシステムトレードの分散投資によるリスク分散の考え方と同じだ。そして、その上にシステム全体のマネーマネジメントをする構造がある。つまり、マネーマネジメントにより、どのシステムにどのくらい資金を投入するかということを判断している。
このトレードシステム、マネーマネジメントシステムのいずれもが、新たに開発されたもの。「開発の段階から、ひまわり証券と弊社West Village Investment(WVI)の間で、共通認識となったのが、リスクを限定する仕組みにしましょうということでした」(WVI 代表取締役 西村貴郁氏)。
一般的な投資信託は、驚くべきことに、リスクを限定する仕組みをもっていないものがほとんどだ。多くの投資信託は、債券や株式、不動産といった「目に見える資産」を中心に投資するが、このような保有資産は値下がりすることはあっても、価値がゼロになってしまうことは極めて考えづらい。これが従来の投資信託の、一つのリスク管理になっている。
しかし、「システムトレード・オープン」の場合、株価指数先物、為替なので、運用方法がまずければ、どこまでも損失が出てしまう可能性がある。だからこそ、リスク限定の仕組みが極めて重要になるのだ。
「システムトレード・オープン」のリスク管理は、二重の安全弁を設けることで実現されている。株価指数先物、為替に11のトレードシステムが存在していて、それぞれのタイミングで、買いまたは売りのポジションを入れるので、11のシステムがいつもポジションを持っているわけではない。ポジションを持っているシステムには、利益のでそうなもの、損失のでそうなものとがある。当然、利益は追求し損失は一定の水準で損切りを行う。ここまでは、ごく一般的なトレードシステムと同じだ。
「システムトレード・オープン」では、さらにこの11のシステムに対して、どの程度資金を投入するか管理するマネーマネジメントシステムがある。万が一、11のシステムによる全体の評価損益が一定水準を割り込んでしまった場合は、いったん11のシステムすべてを停止する仕組みになっている。すべての売買システムはデイトレードなので、いったん仕切り直して、翌日から再びトレードを開始する。つまり、個々のシステムが損切りをし、全体でもトータルの損切りが行われるわけだ。
マネーマネージメントシステムが11のシステムを"監督"
この「システムトレード・オープン」の運用成績は、二層のシステムのパフォーマンスによって決まってくる。一つは、11の個々のシステムが優秀であるかどうか。この点で、システムを開発したWVIは、海外の著名なシステムトレード社と業務提携、共同開発も行っており、国内でも定評を得ているので安心できる。
そして、マネーマネジメントシステムの性能も、運用成績を大きく左右する。どの段階で、どのシステムにどのくらいの資金を割り振るのかを決定しているのだから、まさに"ファンドマネージャー"の役割をしているのだ。「マネーマネジメントシステムは、サッカーでいうところの監督、それぞれの11のシステムが個々のプレイヤーだと考えていただけるとわかりやすいかと思います」(西村)。
このプレイヤー=11のシステムは、なぜ11もあるのだろうか。投資対象は日経225先物、TOPIX先物、ドル円、ユーロドルと4つしかない。ただし、同じ市場に対して、複数のトレードシステムが用意されている。それは性格の異なるシステムを適宜使うためだ。
「例えば、仮に順張りだけのシステムであったら、トレンドが出ているときは利益が出ますが、トレンドがなくなると損失が出てしまう。逆張りのシステムであれば、トレンドが出ているときはあまり利益が出ませんが、トレンドがなくなると利益が出る。これを適宜、組み合わせて使い、市場がどのような状況でも利益に結びつけるのです。つまり、絶対利益追求型なのです」(WVI 取締役 岩本祐介氏)。
市場の素早い動きに対応、新しい投資信託「システムトレード・オープン」
システム全体の性格を一言で表現するのは難しいが、西村氏は、「イチローのようなタイプです」という。「ホームランは狙いません。コツコツ出塁を積み重ねていく。その代わり三振もしません。投資信託という商品の性格上、お客様に損失を与えないようにすることを最も重視して開発しました」(西村)。
株式保有に比重を置いた従来の投資信託は株価があがり続けている状況ではいいパフォーマンスが出せる。そういう状況では、「システムトレード・オープン」は、ひょっとすると従来の投資信託のパフォーマンスを下回ってしまうこともあるかもしれない。しかし、株価が下落していく局面では、従来の投資信託が苦しくなるのに対して、「システムトレード・オープン」は同じように利益を積み重ねていくのだ。どのような状況になっても、小さな利益をコツコツと積みあげていく。そして、リスク管理がされている。これが「システムトレード・オープン」全体の構造だ。
投資信託というと、2008年のリーマン・ショック以来、運用成績は芳しくないのではないかと思われる方も多いだろう。事実、年金基金などがファンドで運用をして、大きな含み損を抱えてしまったなどという報道もよく耳にする。しかし、すべてのファンドの運用成績が悪かったわけではない。厳しいことになったのは、株式や不動産といった資産保有中心の中長期型のファンドだ。
「今、市場の動きはとても速くなってきています。リーマン・ショックだって、市場では実は2日間の出来事でしかなかった。変動が短い時間で、集中して起きるようになってきています。ですから、長期ファンドは大きな損失を被りましたが、短期型のファンドは成績がいい。機関投資家の間でも、明らかに長期から短期へのシフトという現象が起きています」(WVC代表取締役 成田博之氏)。
従来の投資信託は、ずばり長期型。一方で、デイトレードを基本とする「システムトレード・オープン」は短期型の投資信託。その意味では、機関投資家の間で起きているトレンドをいち早く取り入れ、それを個人でも利用できる商品にしたのが「システムトレード・オープン」だ。
「投資信託というのは、本来そうあるべきだと思います。個人のお客様ではできないこと、システムを用意する、資金管理をする、市場を探すといったことを、私たちプロがお客様に成り代わって行う。それが投資信託です。ですから、時代にあった投資手法の投資信託をご用意することは、当然のことなのです」(西村)。
すでに投資信託を買っていて、「塩漬けにするしかない」と嘆いている方は、この生まれ変わった投資信託「システムトレード・オープン」を考えてみる価値があると思う。「システムトレード・オープン」は、塩漬けにならない投資信託なのだ。