文部科学省が発表した「平成21年度(2009年度)学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(速報値)」によると、小中高等学校における2010年3月時点でのコンピュータ1台あたりの児童生徒数は6.4人となり、2009年3月時点の7.2人から進展。さらに、教員の校務用コンピュータの整備率は、2009年3月時点の61.6%から、98.3%へと大幅に改善した。同様に、普通教室の校内LAN整備率は81.2%、高速インターネット接続率は96.7%となり、ネットワーク環境も急速に整備されていることを示すものとなった。
しかし、教育分野におけるPCの整備および利活用では、日本はまだ遅れている。
米国では、2005年の段階で3.8人に1台という状況を実現しており、英国では2008年の段階で初等教育で6.3人、中等教育で3.6人、韓国では小中高校をあわせて5.1人という状況だ。
日本で最も整備が進んでいる山梨県が4.2人、鹿児島県が4.5人はその水準に達しているといえるが、逆に最も進んでいない愛知県は8.1人、次いで東京都は7.9人、埼玉県7.8人という結果になっており、大都市圏での整備の遅れが気になるところだ。
政府では、IT新改革戦略のなかで、学校におけるICT整備目標として、2011年度までに、コンピュータ教室に42台、稼働できるクラス用コンピュータとして40台、普通教室に各2台、特別教室に6台を整備し、1台あたりの児童生徒数を3.6人とする計画を打ち出している。さらに、普通教室における校内LAN整備率を概ね100%に、教員の校務用コンピュータの整備率でも教員1人1台の整備目標を掲げている。
政府の目標は、他の先進国並の整備率を行い、電子黒板やPCを利用することで、教科書やノートを大きく表示したり、映像を活用することで、わかりやすい授業を実現することにある。他の先進国並の整備率とすることで、教育効果が高いとされるICT利活用の促進と、効果的な指導も実現する考えである。
政府は、学校ICT環境整備事業として、2009年度に国庫予算で4,081億円を配分。コンピュータ整備で196万台を計画。これだけで2,491億円の予算を計上したほか、LAN整備で310億円、44万台の電子黒板機能付きを含むデジタルテレビの整備で1,183億円、アンテナ工事で87億円をそれぞれ計上した。
この政策が推進されたことによって、2011年度の目標達成がかなり現実的にものになってきた。
とくに、年度末を迎える2010年1 - 3月のPCの整備は急ピッチで進められた。IDC Japanの調査によると、この期間に教育市場に向けて、スクールニューディール対象として約51万台の教育用PC特需があり、前年同期比256.7%増の73万台のPCが教育分野向けに出荷されたとしている。
この分野においては、国内PCメーカーが強く、NECと富士通の2社で、1 - 3月のスクールニューディール向け出荷の約84%を占めたという。
一方で、電子黒板の整備台数も、2009年3月には1万6,403台だったものが、2010年3月末には約5万,6000台となっている。5万6,000台のうち、テレビ一体型が2万4,000台、ボード型が1万1,000台、ユニット型が2万1,000台。教室のなかで、電子黒板を活用した教育が実用化されている。
もうひとつの指標として注目されるのが、教員のICT活用指導力である。
教材研究/指導の準備/評価などにICTを活用する能力という点では73.9%の教員ができるとしているが、授業中にICTを活用して指導する能力では、「ある」と回答した教員は58.5%に留まっている。
日本の教育分野でより効果的なICT活用を進める上では、この点の改善が求められることになろう。