ノートンは、子どものオンライン利用に関する実態や保護者の認識・理解をまとめたグローバル調査結果「ノートン オンライン ファミリー レポート 2010」を発表した。これは、14カ国7,000人以上の保護者と、8歳から17歳の子ども2,800人以上に対して行われた調査である。
ノートン オンライン ファミリー レポート 2010の結果から
レポートの報告を行ったのは、ノートンのインターネットセーフティ推進担当者のマリアン・メリット(Marian Merritt)氏。
今回の調査結果では、子どもたちがインターネットを利用する時間がますます長くなっていること、保護者たちはそれをおおむね理解していることなどが明らかになった。その一方で、いくつかの点においては、各国によって結果が大きく異なる結果となった。マリアン氏は、今回の調査で、保護者と子ども間の認識のギャップに焦点を当てていた。誰しも危険なサイトやわいせつな画像から子どもを守りたいと考えており、子どもの多くも不快な経験をしている(世界で45%)。しかし、保護者が作ったルールは子どもが古いと感じていたり、子どもが自宅以外や携帯電話からインターネットにアクセスし、そのことを保護者が知っている割合が低いこともギャップとして指摘された。
マリアン氏は「保護者は性犯罪については心配していますが、ネットいじめなどのより一般的な脅威については見過ごしてしまっているようです。また、半数以上の家族はチェックすることもなく子どもが行うダウンロードによって危険にさらされています。解決策にはテクノロジも含まれますが、その大部分は良いしつけに拠るものが大きいのです。オンラインでの子どもたちの安全を守るために最も効果的なただ1つの方法は、子どもたちと継続的に対話をすることです。子どもたちがオンラインで好ましくない体験をしないために、保護者が果たすべき重要な役割は明確に存在します」と語った。
日本の特徴と世界の違い
このレポートで、日本での調査結果について見られた差異や特徴について以下のようなものがあった。
- 子どものインターネット利用について家族のルールを定めている(日本38%、世界平均66%)
- インターネットを安全に使うための習慣について子どもと話したことがある(日本35%、世界平均71%)
- 子どもがインターネットで見ている内容を把握している(日本83%、世界平均95%)
- 「子どもがインターネット上で好ましくない経験をしたことがある」と考える保護者の割合は日本が最も低い結果となった(日本17%、世界平均45%)
- 「オンラインで好ましくない経験をしたことがある」という子どもの割合は日本が最も低い結果となった(日本19%、世界平均62%)
- 「コンピュータのプログラムを自分でダウンロードしてはいけないと保護者から言われている」と回答した子ども割合は日本が高い(日本65%、世界平均49%)
- 「オンライン上で個人情報を偽ったことがある」という子どもは日本が最も少ない(日本29%、世界平均45%)
- オンライン上の各種行動について違法性や倫理性を理解している子どもの割合は、日本が他の国よりもかなり多い
日本では保護者の子どものインターネット利用について関心の薄さが浮き彫りになった。一方で、子どものオンライン上でのセキュリティ意識は高いものの、実際に自分の身を守る手段などについては、知識不足の面もあった。具体的には、
- 検索アドバイザーを使って、不適切なサイトをブロックすると回答したのは、13%(世界平均27%)
- URL「http」の後に「s」が付いているかどうかいつも確認すると回答したのはわずか3%(世界平均13%)
という結果となった。
日本での子どものインターネット環境
次いで登壇したのは、ネット教育アナリストの尾花紀子氏である。
尾花氏は、もはや子どものインターネット利用は当たり前のものであり、『使わせない』から『いずれ使うことを前提に学ばせる』という時代を迎えている、と述べた。教育指導要領などでもその扱いは変化をしてきており、旧来の危険だから使わせないや不適切な内容をブロックするだけでは、意味がないとする。子どもの年齢や環境にあわせた対策が必要になるとのことだ。たとえば、小学生ならば「ルールを守りながら使う」習慣をつけ、常にコミュニケーションをとり、ルールを作ったままにしないことも重要であると述べた。テクノロジにのみ頼らず、話し合い、人の力を育てることがとても重要であるとのことだ。
子どもの安全なインターネット利用と保護者への安心を提供
シマンテックは、このレポートの発表と同時に「ノートン オンライン ファミリー」の公開した。当日はシマンテックのコンシューマ事業部門、リージョナルプロダクトマーケッティングシニアマネージャの風間彩氏によるデモが行われた。
「ノートン オンライン ファミリー」は保護者の意見をもとに開発されたもので、子どもたちがインターネットで何をしているのかをいつでもどこからでも確認することができるものだ。同サービスは、正式版のWebサイトから無償で入手できる。主な機能として以下がある。
- Webの監視と遮断
- 検索監視
- カスタム警告
- 時間制限
- ソーシャルネットワーク監視
- チャット監視
日常生活と同じレベルのしつけや教育をインターネット上でも可能になる。上述のWebサイトからオンラインでサインアップを行うことで、簡単にインストールできる。ノートン オンライン ファミリーを使うと、保護者はインターネット接続環境があれば、どこからでも(iPhone、iPad、iPod Touch含む)レポートを閲覧でき、選択した活動に関するレポートを電子メールで受け取ることができる。ノートン オンライン ファミリーは、これまでのフィルタリングソフトとは異なる部分がある。たとえば、子どもは、禁止されたWebサイトにアクセスしたい場合や許可されていないユーザとチャットをしようとした場合、まずはノートン オンライン ファミリーによりブロックされる(図4)。
しかし、図4では子どもがチャットを行いたい希望をリアルタイムで保護者にメッセージを送ることができる(中央のボックスにメッセージを入力する)。こうして入力されたメッセージは、すぐさま保護者に送られる。iPhoneでそのメッセージを表示したのが図5である。
フィルタリングソフトのように、無差別に禁止するといった厳しい対応はしないのである。そして、これがコミュニケーションのきっかけとなるのである。場合によっては、なぜそのアクセスが必要なのか、このメールをきっかけに子どもと話し合うことでルールを再構築できるであろう。
最後に質疑応答があったが、そこで印象的な尾花氏の発言があったので、ぜひ紹介したい。ある日、マリアン氏の娘が動画サイトから意図せず危険なWebサイトに誘導されてしまったとのことである。マリアン氏は娘に対し「危なくなかった?大丈夫?」と声をかけたとのことである。これが日本では「なぜそんなところへ行ったの!」と叱責になることがほとんであろうと尾花氏は語る。
しかし、叱責すると子どもは、友人や学校のPCを使う、携帯を使うといったように保護者に見つからないような行動にでることが普通であるとする。レポートにもあったように、コミュニケーションをとること、そして互いに守れるルールを親子で構築していくことこそ、根本的な解決策となるだろう。ノートン オンライン ファミリーを使えば、こういったコミュニケーションもとりやすくなるだろう。