米国では初となる4G規格に対応した携帯電話「HTC Evo 4G」の販売が好調だ。アナリストらの集計によれば、6月4日の販売開始からの累計販売台数は30万台を突破し、いまだ品切れ状態が続いているという。この予想以上という好調な販売はHTCの業績を大きく押し上げる一方で、部品供給に絡む製造問題なども指摘されている。
HTC Evoは今年3月に米ネバダ州ラスベガスで開催されたCTIA Wirelessで発表された。HTCが開発したWiMAXを標準通信機能として搭載した初の携帯電話で、米国では米Sprintから提供されている。Sprintはパートナー企業の米Clearwireと共同でWiMAXによる4G携帯電話サービスを展開しており(WiMAXを4Gとすることに異議を唱える方がいるかもしれないが、便宜上4Gサービスと表記する)、HTC Evoは携帯電話としては初めてこの通信網をフル活用できる端末となるものだ。通信速度のほか、1GHzのSnapdragonプロセッサを搭載し、画面はこのクラスでは最大となる4.3インチタッチスクリーンを搭載している(HTC開発のNexus Oneは3.7インチ)。現時点ではAndroid 2.1 "Eclair"を搭載して出荷されているものの、Android 2.2 "Froyo"へのアップデートがHTCから保証されており、Android携帯としては現時点でほぼ最上位に位置する製品といえるだろう。
現時点での累計販売台数30万台というのも、ほぼ予約開始から発売開始後の数日間で売り切った台数で、すでに1カ月あまりにわたって品切れが続いている。現在Sprintのオンラインストアにアクセスしても「Sorry, this device is so hot we can’t keep it on our virtual shelves. Check back later - more are on their way!」というメッセージが表示されるだけだ。実際、ここ立て続けに人気のAndroid携帯をリリースしてきた台湾HTCは、先週発表された2010年第2四半期決算で前年同期比63%の売上アップを達成しており、これが好調なAndroid携帯に支えられたものであることを認めている。
米Wall Street Journalが7月12日(現地時間)に公開した記事によれば、米Sprint Nextel CEOのDan Hesse氏は同紙のインタビューの中でHTC Evoが予想以上の売れ行きとなったことに触れており、一方で品不足が商機を逃していることを指摘している。Sprintでは詳細について語っていないものの、この品不足は特定コンポーネントの供給不足に起因するもので、Samsung Electronics製の液晶パネルがその問題の中心であると解説されている。Samsungでは22億ドル規模で工場設置を進めているものの、稼働は2012年以降であり、今回の需要急増に対応するにはいささか遅いというのが実情だ。液晶パネルに関してはAppleもiPad/iPhone 4でLGを含む複数メーカーからのパネル供給不足で完成品の供給が全体に遅れ気味となっており、スマートフォンやタブレットの急なブームの盛り上がりが、これら市場へのダメージとしてのしかかっている。