"ワンクリック"でコンピュータに降り掛かるトラブルを未然に守る「Acronis True Image Home 2009」登場より1年。さらに利便性とユーザー目線に立った機能に磨きを掛けて登場した「Acronis True Image Home 2010(以下、ATIH2010)」。最新版で盛り込んだ機能やユーザーに対する想いをアクロニス・ジャパン、プロダクトマネージャー甲斐崎由加子氏、同社セールスエンジニア吉田幸春氏、同社マーケティングマネージャー今村康弘氏にお話を伺った。
約1年前、筆者が既報のようにお話を伺ったメンバーに加え、Acronis最高執行責任者ヘルムート・ヘプトナー氏、アクロニス・ジャパン代表取締役村上督氏にお話を伺った際、村上氏は「更なる驚きを提供すべく開発を進めている」と仰っていた。いったいどんな驚きを「ATIH2010」で提供してくれたのか、核心に迫ってみよう。
「今回リリースした「ATIH2010」では、初めてコンシューマ向けに継続的なデータ保護がカンタンに行える「Acronisノンストップバックアップ」を搭載致しました。バックアップする対象を選択し、保存先を決めて「Acronisノンストップバックアップ」を"有効"にするだけ。あとは一切、難しい設定などは不要となっております。"有効"にしていただくと、5分ごとに増分のバックアップを永遠に取り続け、トラブルに纏わる万が一からお守り致します」と説明していただいたのは、プロダクトマネージャーの甲斐崎氏。
従来製品の「Acronisワンクリックプロテクション」をより一層推し進め、コンピュータの万一に備えることが可能になったと言えよう。しかも、取得したバックアップファイルはWindowsのエクスプローラーライクなインタフェースを備えた「タイムエクスプローラー」によって階層的に表示される。「ファイル単位での復元にも力を入れ、目的のファイルかどうかを確かめながら復元することができるのです」とのこと。「間違えてファイルを消去してしまった!」などというケースは、筆者にも経験がある。こういった場合、HDD全体をリカバリーするのは難儀である。そんな面倒からも「ATIH2010」は解放してくれる。
「Acronisノンストップバックアップ」を利用することで、5分ごとに増分のみを永遠にバックアップをとることが可能。万一の事態にも「備えあれば憂いなし」だ。また、ご覧のように「タイムエクスプローラー」によって復元させたい目的のファイルが探しやすくなるなど、ユーザーインタフェースにも工夫がなされている |
増分のみのバックアップなのでストレージも気にせずオーケー
しかし、「5分ごとにバックアップを取得し続けるということは、大容量のディスクスペースを必要とするのでは?」と読者の方々は疑問を抱くのではないだろうか。その疑問をストレートにお伺いしたところ、「増分だけ、変更点だけを取得していきますので、5分ごととはいっても非常に少ないサイズになるよう工夫しています。また1日に1回統合処理がされますし、30日ごとにも統合処理がかけられます。ですので、ストレージの容量は最低限に抑えることが可能なのです」との回答が得られた。最低限、バックアップしたいボリュームの容量がまかなえる分だけのストレージを用意しておけばいいのだから安心だ。
また、「ハードディスク自体が物理的に壊れてしまうと可能性もあるので、そういった観点から別のHDDを用意して、そこにバックアップファイルを保存することを強くお勧め致します」と「ATIH2010」の活用方法を教えてくださったのはセールスエンジニア吉田氏。「バックアップデータのサイズに関しては、ユーザー様がお使いになっている環境によって異なるので一概には言えませんが、「ATIH2010」で作成する"TIV"形式のバックアップファイルは圧縮率が高いうえにデータの圧縮率も選択できます。圧縮率による差異は、処理にかかる時間のみなのでご安心下さい」とアクロニス独自のTIV形式でのバックアップ自体のメリットを話す。
さらにマーケティングマネージャー今村氏は「外付けHDDの価格が下落していることもコンシューマ向けバックアップ製品のシェア向上に寄与していますね。テラバイトのディスク容量でも1万円を下回る価格ですから。気軽に大容量HDDを購入できるという環境もあるので、やはり1枚あたりの容量が限られ何度もメディアを交換しなければならないDVDなどのメディアではなく、外付けHDDのほうが利便性もいいでしょう」と言葉を繋いだ。
確かに何枚ものDVDメディアを用意してせっせとバックアップする、というのではユーザー心理として"手間"と感じてしまう部分は否めない。それがきっかけとなり、せっかくバックアップソフトを導入しても次第に疎かになってしまっては意味がない。そういった面倒から解放されるため、安全にバックアップを行うためにも値頃感のあるHDDを購入しても良さそうだ。
今村氏は「"ATIH2010"はある意味"保険"のようなものです。ユーザーのなかには"なにか起きない限りは別にバックアップをとってなくてもいいんじゃないの"とお思いの方も多いのではないでしょうか。実際にPCがクラッシュする等の具体例が出てこないと必要性を感じない。ですが、本来であればセキュリティソフト同様にWindowsが起動するたびに保護されるという状況がバックアップソフトにも必要なのです。ですので、"Acronisワンクリックバックアップ"や"Acronisノンストップバックアップ"は画期的な機能と言えると思います」と述べる。
確かにバックアップソフトもセキュリティソフトも"被害を未然に防ぐ"という意味においては、どちらも我々PCを利用するユーザーにとっては必需品と言える。昨今では様々なものが電子ファイル化され、場合によっては名刺などの連絡先情報もデジタル化している。iPadやEvernoteなどの最近の潮流を見ると、さらに3D化。こういう流れは止まることなく進んでいくに違いないとつくづく思う。デジタル資産は総量が増えていくのと同様にさらに重要性が高まっていくという感じを筆者は強く受けている。それらがある日を境に消失したら……そう考えると「私は大丈夫」とは言っていられないだろう。今村氏は保険とおっしゃったが、今後は必須の機能なのではないだろうか。
定期的なアップデートでより良い製品に仕上がっていく「カスタマエクスペリエンスプログラム」
甲斐崎氏から非常に興味深い取り組みを「ATIH2010」で取り入れたことが明かされた。それは、Microsoftなどでも行われているカスタマーエクスペリエンスプログラムというユーザーの利用動向をメーカーに伝える機能だ。「カスタマエクスペリエンスプログラムは、個人情報は一切取得せず製品の利用状況等を吸い上げるものです。即効性、即時性といったメリットはありませんが、使用している環境の構成や、どの機能を一番使っていただいているのか、製品で何かエラーが起きてしまった場合の原因究明、それからヘルプの使用頻度などの情報をもとに、より良い製品へと導く指標となると考えています。
ユーザーのニーズを把握・分析し、それに応えることができると期待しています」。直接メーカーへ意見を述べるのは誰もが躊躇してしまうし、面倒だと感じる方も多いだろう。そういった手間を省く工夫が、このカスタマーエクスペリエンスプログラムというわけだ。また、アクロニス・ジャパンでは定期的なマイナーアップデートを展開していくという。
「コンシューマ向け、企業向けにかかわらず、約3カ月に1回はマイナーアップデート、もしくはメンテナンスアップデートを計画しています。ですので、メジャーアップデートに限らず新機能を追加する場合もあるのです。代表的な例は「ATIH2009」のWindows 7への対応ですね。これは日本でのみ行われた施策です。カスタマエクスペリエンスプログラムやユーザーサポート等で頂戴した声に応じて、新バージョンを待たなくても反映させていくことを考えております」とのこと。ユーザーもただ漫然と使用するだけではなく、ちょっとした勇気を振り絞って想いを伝えれば、より一層使いやすく、そしてより便利な機能が追加されるかもしれない。
コンピュータを使うすべての人を守る。それがアクロニスの願い
最後に、これからどのように「ATIH」を育てていくのか、その想いや方向性について甲斐崎氏に伺った。
「我々は、まだまだ市場のニーズというのを完全にとらえ切れてないという思いが強くあります。そういう意味でも、もちろん私たちから積極的にニーズを吸い上げる努力をしてまいりますし、カスタマーエクスペリエンスプログラムで収集した情報を十二分に役立てたいと思っています。また、どうしてもメーカー側としていいと思うものと、実際のお客様のニーズにズレが生じてしまう。特に開発を行っているのは日本ではありませんので尚更です。そういったニーズのズレを修正していくために、積極的に本国へのフィードバックを心がけたいと思っています。
そして、コンピュータを使うすべての人々を守りたい。コンピュータは、必ず物理的に不具合が起きてしまうリスクを内包しており、そのリスクに対処するためにもバックアップは必要だと考えています。千差万別なユーザーのコンピュータリテラシーを問わず、簡単にバックアップを行え、簡単に復元できる存在であり続けたい。また一方で、上級ユーザー、PCを自作しているリテラシーの高い方にもご満足いただけるような幅広いものにしていきたいですね」
利便性の向上はもちろん、誰もがカンタンに"データの消失"といういつ襲われるかわからない惨事から未然に守る「Acronis True Image Home」。もう、我々の生活からPCという存在は切っても切り離せない。ましてや、様々な情報が電子化された今、バックアップソフトの存在意義を再確認し、万一の備えとして導入せねばならない時代へとシフトしていくのではないだろうか。今後もアクロニス・ジャパンにはより一層ユーザー目線に則した製品を創り上げ続けることを切に願うばかりだ。