ソニーは7月8日、コンパクトデジタルカメラ「サイバーショット(Cyber-shot)」の新製品「DSC-WX5」「DSC-TX9」「DSC-T99」「DSC-T99D」の説明会を開催した。製品紹介やデモンストレーションが行なわれ、質疑応答では「トップシェアを目指す」というコメントも聞かれた。
カメラ市場活性化のため、新しい価値を提案
今回発表されたのは「DSC-WX5」「DSC-TX9」「DSC-T99」「DSC-T99D」の4モデル。挨拶に立ったソニーマーケティングの下野裕 統括部長は、デジタルカメラの単価が下落している中では、新たな価値を提案するカメラが必要だと解説した。資料によると、2007年度の一眼レフを含めたデジタルカメラの平均価格は3万1000円程度だったが、2009年度は2万6000円程度まで下がっている。「こういった状況のなかで、なんとかカメラを活性化したい。そのためには既存のカテゴリーの中で新しい商品を出すだけでなく、新しいマーケットを開拓する製品、新しい楽しみ方を提案できる製品が必要」と語った。
例に挙げられたのは、今年2月に発売したフルハイビジョン動画対応のコンパクトカメラ「TX7」「HX5V」、そして6月に発売した一眼カメラ「NEX-5」「NEX-3」だった。下野氏は「これらの発売によってソニーのシェアは大きく伸びました。デジタルカメラとビデオカメラを合わせた市場では金額ベースでシェア25%を越え、トップになっています」とのこと。スチルカメラでもフルハイビジョン動画が人気となり、一眼カメラは従来の一眼レフとコンパクトカメラの間に新しいマーケットを創造したという。
今回の製品も新しい価値を提案するもので、カメラ市場の創造・拡大を目指す。具体的にはフルハイビジョンの高精細動画はもちろん、高画質の写真(プレミアムおまかせオート)、新撮影体験(3Dスイングパノラマ)を中心に訴求していくという。また、新しいカメラの楽しみ方の提案として、プレイステーション3用アプリケーション「プレイメモリーズ」、写真・動画の共有サービス「Personal Space」を提供する。
続いて登場したソニーマーケティングの水野雅夫氏は、新製品の機能について解説した。コンパクトデジタルカメラのユーザーはオートモードでの撮影が圧倒的に多く、約3割はフルオート以外使っていないことを挙げ、従来は別のモードだった「手持ち撮影夜景」モード、「人物ブレ軽減」モード、「逆光補正HDR」モードをひとつにまとめた「プレミアムおまかせオート」モードを設定。これでモードの切り替えの必要がなく、最高画質の写真が誰にでも撮影できるという。
すでにNEXなどに「スイングパノラマ」「3Dスイングパノラマ」が搭載されているが、新製品では「スイングマルチアングル」を追加した。これは3Dテレビがなくても、カメラ本体で疑似的に3D風の画像が楽しめる機能。撮影ポイントを変えて撮影した静止画を、カメラを傾けることで順に表示し、3Dのように見ることができるという。
続いて質疑応答が行なわれた。シェアについては、現在13~15%(コンパクトデジタルカメラ市場、以下同)で2位か3位にあたるが、今回の製品投入によって20%を目指すという。これはコンパクトカメラ市場でのトップになることを意味する。
3Dをカメラで楽しむシーンにはどういったものがあるかという質問に対しては、3Dテレビのマーケット開拓を挙げた。下野氏は「パーソナルコンテンツを3Dで楽しむことが非常に重要なポイントになると思います。3Dの(楽しみ方の)提案をどんどん行なっていきたいと思います」と語った。
製品説明会の様子。多くのジャーナリストやカメラ雑誌のスタッフが集まった |
ソニーマーケティング コンスーマーAVマーケティング部門 デジタルイメージングマーケティング部 統括部長 下野裕氏 |
ソニーマーケティング コンスーマーAVマーケティング部門 デジタルイメージングマーケティング部 パーソナルイメージングマーケティング課 水野雅夫氏 |
会場に並べられた新製品。ケースなどのアクセサリーもたくさん用意された |
今回の主役「DSC-WX5」と「DSC-TX9」。新機能はほとんどがこちらに搭載されたもの |
デザインを重視する女性・若年層向けの「DSC-T99」「DSC-T99D」。T99Dは非常にきらびやかだ |
可能性を感じる画像の重ね合わせ
説明会場のとなりでは、新機能のデモンストレーションが行なわれた。もっとも人だかりが多かったのは「3Dスイングパノラマ」。最近機能ではないが、ごく普通のスチルカメラで3D映像が撮影できるというのはやはり不思議なものだ。しかし3Dメガネを掛けると、見事に映像が立体に見えてくる。しっかりした奥行きのある映像である。
「スイングマルチアングル」は、自分で操作してみないとわかりづらいかもしれない。そのままでは普通の1枚画像なのだが、カメラを傾けると、まるでモニターに奥行きがあるかのように、画像が次々と切り替わる。みんなでカメラを楽しむのに最適な機能だろう。
「プレミアムおまかせオート」は、連続して撮影した画像の重ね合わせによる各種の機能をまとめたものだが、この画像の連続撮影や重ね合わせには可能性が感じられた。一眼カメラなどに比べてコンパクトカメラは撮像素子のサイズが非常に小さく、受光量が限られる。これが画質面で一眼カメラに劣る大きな理由となっているが、複数の画像を使用すれば、これを補うことはもちろん、新しい表現も考えられる。夜景の撮影では画像を重ねることでノイズを低減し、逆光では明るさの異なる画像を重ねることで暗部も明部も同時に表現できる。「背景ぼかし」は、ピント位置を変えた画像を参照し、背景部分だけぼかしている。デジタルカメラはもっと楽しくなりそうだ。
「プレイメモリーズ」は、画像をプレイステーション3のハードディスクに取り込み、管理するソフト。3Dテレビに接続すれば、3D画像の表示も可能になる。ただし、書き出しはできない。ソフトは9月下旬より「PlayStation Store」にて無料で配布される。
「Personal Space」は、撮影した画像や動画を共有できる無料サービス。Webではたくさんの画像共有サービスがあるが、これは広く公開するものではなく、友人や親戚などへのプライベートな共有を想定している。専用ソフトを使った手軽さが特徴で、誰でも簡単に使用できる。容量は1GBまで。今後はパソコンだけでなく、スマートフォンやソニーの他の機器との連携も深めていくという。