東京証券取引所グループ 代表執行役社長の斉藤惇氏は22日、定例の記者会見において、中国人民銀行が発表した人民元の弾力化に関し、「米中が恐らく最悪の政治状況になっていた中で、まずはジェスチャーが先に出た。経済的にはまだそれほど効果が出たわけではない」と述べた。
斉藤氏は記者会見で、今後人民元の切り上げが進んだ場合の東京市場に与える影響について問われ、以下のように回答した。
斉藤氏はまず、「私は人民元の本体である中国が、国家戦略上自信があって、10年、20年単位で本当に中国がアジア・世界の重要なパワーを占めようというのであれば、人民元を上げるんじゃないかと思う」とし、その根拠として、「弱い通貨では、世界のスタンダードにはなれないということを歴史が示している」「購買力を弱くして覇権を握るのは理論矛盾」であることを指摘した。
続けて、「中国が購買力を持ってきたら、さらにすごい国になってしまう」とし、「購買力が上昇すると、いやおうなしに(元の)自由化をする」と強調。「元の力が上がってきて、それを受けた形で金利も自由化され、為替も自由化され、さらに奥深く寛大になってある程度の社会的言論の自由、政治思想の自由が実現できたら、中国は素晴らしい国になると思う」と述べた。
さらに、人民元の切り上げの背景として、「日本の新聞では意外に報道していないが、米中間というのは、ここ数カ月ものすごく緊張していて、恐らく政治的に最悪の状況になっていた」と指摘。その上で、今回の人民元弾力化は、「中国はある程度の妥協の姿勢を見せた。まずはジェスチャーが先に出た。米国のものすごいテンションに対し、中国が前向きというか、友好的に反応するということを政治的に出した段階が今だと思う」とし、「経済的にはまだそれほど効果が出たわけではない」と述べた。
だが最終的には、「中国は恐らくどこかで、強い元をもって開放政策に出てくると思う」と予測した。
一方、菅直人首相が超党派での議論を呼びかけている消費税増税についての質問には、「国民全体が真剣に考えなければいけない」とし、「何パーセントがいいのかいろいろあると思うが、ある程度(国民が)自分で負担を負って、自分の社会保障を受けるというのは、やむをえない」との認識を示した。
ただ、「税金アップが先にあるというのは間違いと思う」と述べ、「この国は、社会的効率性や市場効率性を無視して、相当無駄なことをやってきている」と指摘。「資金・資本というものを最適配分して国家運営をやって、それでも十分な社会福祉・社会保障に足りないなら、増税も当然やむをえないのではないか」と述べた。
その上で、「(まず無駄を省いてから増税するという)順序を間違わないで、国民に対する説明をしっかりやる必要がある。(その際は)国民は十分に理解した上で反応すべき」とし、政府による国民への十分な説明と、国民の側の冷静な対応が不可欠であるとの考えを示していた。