645Dでは、従来の「カスタムイメージ」に、新たに「リバーサルフィルム」が加わった。
前川「開発にあたり、大型フィルムユーザーの方々を対象に、フルサイズのデジカメに満足していない部分についての聞き取り調査を行ったのです。そこで目立ったのが"絵作りが良くない"という意見でした。ではどんな絵がほしいのかというと、陰影に富んだ、こってりした絵作り、いわゆる"ベルビア調"を希望される方が非常に多かった。そういった意見を取り入れて作ったのが、『リバーサルフィルム』です。これは、イベントやセミナーなどでも受けが良いですね。
そのほか良くいわれるのが、"思ったより軽い"というご意見。実は、今までの(フィルムの)645より100g重いんです。ただ、グリップを改善してバランスが良くなっているのです。これが軽くなった印象に繋がっていると思います。開発中、粘土のグリップを女性を含め100人ほどの人に握ってもらったんですよ。そこで得た意見を細かく吸い上げて余分なところを削って行き、理想的なグリップ形状に仕上げました」
こういった"ユーザー視点での物作り"の姿勢は、PCを使わない人のことを考えた「ボディ内RAW現像」機能、遊びの要素を排除し、絵作りに使えるもののみを残した「デジタルフィルター」など、数多くの箇所・機能に表れている。前述の定評あるUIも、この基本姿勢の一つの象徴といえるのではないだろうか。
これだけの充実した内容を持ちながら、レンズ付きで100万円を切る645Dの価格設定は、かなり挑戦的と思われる。どのようにコストダウンをおこなっているのだろうか。
前川「たとえば、ローパスフィルターをカットしたことです。ローパスフィルターはセンサーについで高額ですから。その代わりにIRカットフィルターで色被りなどを防いでいます。それに、ローパスフィルターがない方が解像力の点でも有利なので、付けることはできますが、付ける予定はありません。また、バッテリーがk-7と共用であることも、コストダウンに繋がっていますね。
様々な調査の結果、ペンタックスがこのモデルを扱うならば、ハイアマチュアを対象にするべきと感じました。販売価格で100万円を切るためには、数を出さなければなりません。フィールドに持ち出して風景を撮るならローパスフィルターは不要。そして、他社のようなプロサポートパッケージをなくすことで、コストを下げる。プロ市場のみを意識せず、できるだけ多くの風景写真愛好家に使ってほしい、そう割り切って設定した価格です」
ペンタックスでは、今後も全国各地でタッチ&トライイベントを行っていく予定だ。大都市だけでなく、「地方にお住まいの方々にも触っていただける方法を考えたい」と前川氏は語る。
前川「台数が限られているため、草の根運動のようになってしまいますが、体験イベント兼勉強会のようなものを続けていきたいと思っています。半年でモデルチェンジはありませんから(笑)、どうぞご安心ください。ファームアップで育てて行くカメラにするつもりですので、みなさんに長く使っていただきたいですね」