0.9W以下という数値がどの程度のものなのかは、機種によって差はあるが、デスクトップPCがシャットダウン時の状態でも2W近くを消費していることを考えるとわかりやすい。 「省エネのため、こまめにプリンタの電源をオフにしようという取り組みもありますが、常時起動でも省エネ性を極限まで追及し、エンドユーザーの利便性も犠牲にせず、コスト削減もできるという状態を目指しました」と杉村氏は語る。
「スリープモードといっても、機種によって最小電力で可動する時間には大きな差があります。たとえば、USBでPC等に接続している間は通信のために消費電力が増えてしまうような機種が多いですし、ネットワークプリンタとして稼働している間も、頻繁にポーリングに対する応答により消費電力が増える場合があります。その時にどれだけ電力を使っているのか、どのくらいの時間で最小電力になるのかは機種によって大きな差があります」と、商品開発本部 第三商品開発部の武井健一氏は語る。
「DocuPrint C3350」の場合、USB接続時でもスリープモードにできる工夫が施されているほか、接続機器との応答などで一時的に消費電力が大きくなっても、すぐに省エネ状態へ移行する技術が組み込まれているという。
実際に、「DocuPrint C3350」に電力計を接続して動作状態を確認したところ、スリープモードの間は、ほとんど0.8Wという表示になった。一時的に2W前後まで消費電力が増えた場合でも、5秒程度で0.8Wの表示に戻り、待機中は非常に少ない電力で動作していることがわかる。
「0.9W以下というのは、定期的なポーリング応答などにより、消費電力が増えることも織り込んだ平均電力です。スリープモードでの最小値ではないことに注目してほしいですね」と武井氏は語る。
実際にユーザーがプリンタの機種選定を行う際には、複数メーカーの機種を並べて電力計で実消費電力を確認するというのは非常に難しい。 「電力計を実際につないでみるまで、私たちも他社製品のことはわかりません。スペック表には現れない部分だけに難しいですね」と杉村氏。省エネ大賞のように第三者が評価した指標を頼りにするしかなさそうだ。
ウォームアップタイム15秒以下、リカバリータイム12秒以下の使いやすい省エネモデル
「DocuPrint C3350」で行われている省エネ化は、ある意味で「限界値」ではない。たとえば、ネットワークからの問い合わせに即時に応えられなくても良いならば、もっとスリープ時の消費電力をさらに下げることはできるという。しかし、それでは使い勝手が悪い。
「たとえば、Pingでネットワーク機器の稼働状況を確認して動くプログラムがあるとします。ネットワーク応答性をある程度見限っている場合、4回の問い合わせのうち、最初の2回には応えられなかったりするのです。このような場合、プログラムの作りによっては、プリンタがSleep状態であるにも関わらず、電源がOFFされていると誤って認識してしまう場合があります。そうした不具合が起こらないよう、消費電力が最小となるモードを使用しないこととなり、結局は、消費電力が増えてしまうことになります。本当に、お客様に省エネモードでプリンタを使っていただくためには、消費電力を最小化したモードでもネットワークの応答性は確保しなければなりません」と、 武井氏は指摘する。
同時に、スリープモードからの復帰時間(リカバリータイム)も考慮しなければならない。いくらスリープ電力が低くても、印刷の指示を出してから実際の印刷が行われるまで何分も待たされるのでは、仕事にならないからだ。その点「DocuPrint C3350」は、スリープモードからの復帰が12秒(電源オンからの復帰(ウォームアップタイム)は15秒)、ウォームアップが完了して最初の1枚が出力されるファーストプリントタイムが9.9秒(カラー時。モノクロ時は8.3秒)と短時間で印刷を完了してくれる。省エネでも待たせない機種なのだ。
今回は、待機電力の削減を中心にレポートしたが、「DocuPrint C3350」の省電力化には、従来の設計常識を見直すレベルの技術が採用されている。次回は、そのあたりの技術的な部分を深堀りして紹介したい。