左右どちらの耳にも装着可能

米プラントロニクス社のBluetooth対応ヘッドセット「Discovery 975」は、8gの軽量ボディながら2重のノイズキャンセルテクノロジーを搭載し、業界最高レベルの音質を実現したハイエンド機だ。スマートフォンと携帯電話を両方所有しているユーザーも珍しくないこのご時世、最大2台のBluetooth搭載機器の同時待ち受けが可能なのも嬉しいところ。本稿では製品の基本的な特徴を押さえつつ、使用感をお伝えしていきたい。

本製品は、評判の高かったDiscovery 925(2008年発売)の後継モデルにあたる。デザインも操作性もシンプルだった前機種の特徴を受け継ぎ、機能を更に進化させた。価格はオープン。現在の市場価格はマイコミジャーナル価格情報をご覧いただきたい。

2009年度に、CESイノベーションエンジニアリング賞やイフ・デザイン賞など4つの賞を受賞した美しいデザイン。イヤーピース本体には必要最低限の2つのボタンしかついていない

柄杓形状の柄の部分にマイクを搭載し、2重のノイズキャンセルテクノロジーにより音質の向上を実現した。ひとつは3層マイク構造のWindSmartテクノロジーで、風切り音をブロックする役割を果たすもの。もうひとつはAudioIQ2と呼ばれる、ユーザー側の周辺ノイズを取り除いて通話品質を良好にするものだ。この2重の機能により、強風の屋外や騒音の大きい雑踏の中でも、自然で歪みのないクリアな音声通話が可能になった。記者も実際に街中で使用してみたが、相手側の声は明瞭に聞こえ、こちら側の声も相手によく伝わっている様子だった。当初、マイクから口まで距離があるのが気になっていたが、通話相手には電話口で話しているように聞こえるようだ。大声で話さなければならないということもなく、ひそひそと話すような小声でも普通に会話できたのが新鮮な驚きだった。

インジケーターライトは白と赤に点灯する(左)。ライトの部分がちょうどコールコントロールボタンになっており、着信時に押せばすぐに通話ができる仕組みだ

スリットからわずかに見えるマイク部分(左)。イヤチップは標準でMサイズが取り付けられているが、付属のSサイズ、Lサイズのものに交換することも可能

ジェルイヤチップを耳にはめ込むタイプの本製品。8gと軽量なこともあり、慣れると装着しているのを忘れるほどだった。耳にかけるタイプと違い、眼鏡をしながら使用できるのも利点のひとつ。耳に合うサイズのイヤチップを選択できるので、安定感も申し分なかった。

ペアリング作業は、端末側で本製品を検出し、PINコード(パスキー)を「0000」と入力すれば完了する。本製品側で行わなければいけない作業は、電源を入れることくらいだ。ペアリングに関する特筆すべき特長は、マルチポイント接続により2つのBluetooth搭載機器を同時に使用できる点だ。これにより、例えば仕事用とプライベート用の2つの携帯電話を持ち歩くビジネスマンや、スマートフォンと普通の携帯電話を併用しているユーザーは、どちらにかかってきた電話も本製品で一括して応答することができるようになる。

なお、注意しなければならないのは、本製品が対応するBluetoothプロファイルはHSP (Headset Profile)とHFP(Hands-Free Profile)であることだ。これはヘッドセットとの通信やハンズフリー通話を実現するためのプロファイルであり、ステレオ音声や高音質に対応したA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)ではない。このため、例えばiPhoneの音楽ファイルや携帯のワンセグの音声を本製品で聴くことはできない。

PCとペアリングすれば、一応、動画や音楽ファイルの音声を聴くことはできる(右)。動画は、映像と音声がズレるようなこともなかった。ただ、音質は良くない。音声チャットやパソコン電話(Skypeなど)での利用をお勧めする

本製品の操作はいたって簡単だ。着信時、終話時にはコールコントロールボタンを1回押すだけ。着信時に2秒間長押しすれば、着信を拒否して通話相手にボイスメールを送ることができる。また、待ち受け時に2回押せば、最後にダイヤルした番号へリダイヤルすることが可能。鞄から電話を取り出さずにこれら一連の操作ができるので、重宝すること請け合いだ。

連続通話時間は、最大で約5時間。連続待ち受け時間は、マルチポイント接続がオフの場合(デフォルト)で、最大約7日間となっている(オンの場合は最大約4日間)。また、付属品の充電用携帯ケースを電源にして、2回分のフル充電をすることもできる。

充電用携帯ケース。側面にMicro USBポートを備える

充電用携帯ケースの充電には、1.5時間ほどかかる(左)。小窓のディスプレイから、ケースの残り電力とイヤーピース本体の現在の充電状況が確認できる

イヤーピース本体もMicro USBポートを備えているので、充電用携帯ケースを使わず、直接ACアダプターを差し込んで充電することも可能だ

非常に利便性が高く、携帯にも便利な本製品。ビジネス用途だけでなく、普段の日常生活の中でもアイデア次第で、様々な利用方法が考えられそうだ。また、スマートフォンの需要が高まる中で、NTTドコモのAndroid端末「LYNX SH-10B」(シャープ製)のように、初めからある程度、ヘッドセットでの通話を想定して開発された端末も登場してきている。そんな「手持ちのスマートフォンでの通話はちょっと苦手」というユーザーにも是非、本製品を試してみて欲しい。