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ウォール街株価指数
不透明な外部環境の中、5月までの株価上昇を牽引していた米景気回復期待は、今月に入り急速に不透明感を増している。
そして先導役を失った株式市場は日々の材料に一喜一憂する展開となっているが、深刻化する欧州債務危機、史上最悪となったメキシコ湾の原油流出事故そして東アジアの地政学的リスクの高まり等を受け、株式市場はショートバイアスが強まっている。
このようにリスクが世界中に点在する中、FRBは依然として米雇用情勢が今後の景気回復のキーファクターと考えているようだが、もうひとつの重要ファクターとして、金融規制策がどの程度のレベルにおさまるかが焦点となりそうだ。バーナンキFRB議長は、金融市場の安定化が欧州債務危機の影響度合いを和らげることになるとの見通しを示しているが、上記の金融規制策が当初想定された現実的な内容よりも、厳しいものになるとの見通しがドット上院銀行住宅都市委員会のスワップ取引を銀行業務から分離する案に関して言及したことにより、急速に強まっている。
リスク回避傾向が強まる中では、資源系での積極的な買いは期待できない状況の中、金融規制策がネックとなり金融株でもショートバイアスが継続すれば、他のセクターへの影響は避けられそうもない。本日もこの件に関し、新たな展開が見られるかが注目ポイントだろう。
仮に景気敏感株である金融&資源セクターでリスク回避継続となれば、昨年10月上旬以来となる心理的水準9500ブレイクが視野に入る可能性も出てこよう。
上記を踏まえ、チャートで直近の動向を確認すると、次第に1万の心理的ラインがレジスタンスとして意識されつつある。5月まではこの水準を下抜けた後、再び1万の大台を回復していたが、その勢いは薄れつつあり、チャート上でも投資家のリスク許容度が縮小していることがうかがえる。
目先、上は1万&フィボナッチ23.60%レベルが意識される展開となりそうだ。ただ、この水準を突破しても21日MA及び月をまたいでレジスタンスとして意識された10280レベルも控えており高値追いは避けたいところ。
むしろショートバイアスが強まっていることを考えるなら、6月7日安値レベルでダブルボトムを形成するか、この点に注目した方が良さそうだ。このレベルでボトム形成となれば、幾分か買い安心感も広がるだろうが、ブレイクするようだと、先述した9500レベルが視野に入ると思われる。
NY原油先物7月限
米株式市場が上昇し、ユーロが反発するなど、リスク資産への投資環境が改善している。 ロイター通信の報道では、中国政府高官が5月の輸出高が前年同月比で約50%増になるとの見通しを示した。実際は48.5%増とのことだが、4月の30.5%を大きく上回る内容となった。これにより、欧州債務問題や米金融規制策でグローバル経済自体への先行き懸念も強まっていた矢先に、中国の持続的経済成長があらためて確認できたことから、本日の商品市場でも投資家のリスク懸念を和らげるかたちとなった。
また、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、慎重な姿勢は崩さないまでも、景気回復が、財政政策などに下支えされる状況から民間最終需要が主導する状況へと「重要な移行」を遂げたとの認識を示したことも本日のリスクテイクを占う上で、ポイントとなるかも知れない。
ただ、それには雇用情勢の改善が前提となろう。なぜなら同議長は、労働市場が2008年から2009年のグローバルリセッションで失われた約850万人の雇用を取り戻すには、数年かかる可能性があるとの慎重姿勢も同時に示していることからである。マーケットもこの点に焦点をあて、本日のトレンドを見極める可能性もある。このため本日発表される新規失業保険の申請者数如何では、更なるリスクテイクも回避も考えられるため注視したい。
上記を踏まえ直近の原油市場をチャートで見ると、株価と連動した状況が続いている。 上値追いするまでの相場ではないにしても、70ドルの心理的水準では下げ過ぎであることを確認する時期になってきたと思われる。
もちろん、再びドル相場が急上昇する場面があった場合に下落リスクが高まる可能性は残されているが、ボリンジャー・バンドの下値ラインが意識されている展開を考えると、70ドル割れから下の価格水準に滞留する時間は、限定的となる可能性がチャート上から見てとれる。
実際、高値も74.96ドルとなり、まずは狙い通り75ドルの心理的水準を試しにきている。問題はこれから先の展開だろう。
5月28日の75.72ドル、6月4日の75.42ドルと、直近の上値はやや右肩下がり気味となっているため、ここで本日のアジア市場の流れを背景にした続騰により、76.00ドルを試す展開となるかが焦点となりそうだ。MACDではロングバイアスが点灯しているが。