日本銀行の白川方明総裁は31日、東京の日本記者クラブで講演した。白川総裁は講演で、日本経済が直面している課題を解決する上で重要な鍵を握っているのが、経済活動における「イノベーション」とした。さらに、イノベーション実現において、金融機関の果たす役割が大きいと述べた。
日銀ホームページに掲載された講演内容によると、白川総裁は、現在日本経済が直面している最大の課題は、「潜在成長率の低下」や、その背後にある「人口減少や生産性の低迷」にあると指摘。日本経済のデフレも、成長期待の低下という日本経済が抱える根源的な問題が、集約的に現れた現象であるとの見方を示した。
その上で、日本経済が直面している課題を解決する上で重要な鍵を握っているのが、経済活動における「イノベーション」とし、イノベーションや生産性の向上に関し、金融機関の果たす役割が大きいと述べた。
これらの点を踏まえ、日本銀行では、金融緩和政策や金融市場安定化の措置に加え、日本経済の成長基盤強化のための資金供給の仕組みを導入することを決定。白川総裁は、現在、その詳細について、金融機関とも意見交換を重ねながら検討を行っていることを明かした。
基本的には、成長基盤強化に資する融資や投資を行う金融機関に対し、その実績に基づき日本銀行が資金を供給。その際、金融機関による取り組みを支援するために、政策金利と同水準、今であれば0.1%という低金利で、1年を超える利用が可能なかたちで、長めの資金の貸付を行うことを考えているという。
白川総裁はこの仕組みについて、「中央銀行として有する機能を使い、日本経済の成長基盤の強化を金融面から支援していくことにも意味があると判断した」としている。