ボサノヴァ、ジャズ、ソウル、クラブミュージックが溶け合う、ただひたすら良質なPOPミュージック。それを発信し続けるアーティスト paris match(※paris matchのインタビューはこちら)。デビュー前からPro Toolsを導入し、「スタジオと同じレベルのレコーディング」を自宅スタジオで実現させていたというparis matchの全楽曲を手掛ける杉山洋介氏に、レコーディングとペンタブレット「Intuos4」との親和性などについて話を訊いた。

Logic ProとPro Toolsをどう使い分けているのか

自宅スタジオで作業するparis match 杉山氏。このスタジオで楽曲制作からレコーディング、最終的なマスタリングまで、すべての作業が行われる

――杉山さんは、どのような手順で自宅レコーディングを行っているのでしょうか?

杉山洋介(以下、杉山)「僕の場合は、AppleのLogic Proを長年使用していて、これで曲を作っています。PCのキーボードにも、Logicに対応したショートカットキーのカバーが装着されています」

――楽曲制作は全てPC上で行うのでしょうか?

杉山「そうですね。普段自分がよく使う音色の楽器のプラグインが、Logic上に置いてあって、それをPC上でシミュレートして作業しています。簡単な流れとしては、Logicでプログラミングして作った音のデータを、最終的にPro Toolsでミックスしています」

――LogicとPro Toolsを使い分けているのは、なぜなのでしょうか?

杉山「LogicやCubaseなどのソフトは元々、ミュージシャン向けで、MIDIシーケンサーから始まったソフトなんです。それに対してPro toolsはエンジニアさんが使う録音のミキサーやテープレコーダをシミュレートした部分からスタートしたソフトなんです。現在ではどちらでも同じ作業ができるようになっているのですが、単に慣れですね。スタジオから来るエンジニアさんはPro Toolsに慣れているので、僕がLogicで作った音声データをPro toolsに並べて作業するという感じです。どちらのソフトでも、プラグインも共通しているものがほとんどなので、問題なく作業できます」

――生演奏部分やボーカルに関してはどのような手順なのでしょうか?

杉山「生演奏の部分に関しては、Logicでデモ音源を作って、そのデータをミュージシャンの方に聴かせて、それを参考に演奏してもらうという場合が多いです。同じLogicを使われているミュージシャンの方には、データをWeb上でお渡しして、演奏していただき、データを送り返して頂くという場合もあります。そうして出来た生演奏のデータを、デモの打ち込みデータと差し替えていきます。曲のイメージによっては、リズムだけなく、ストリングスや管楽器なども打ち込みデータでやる場合もありますが、生演奏が最適な場合は、打ち込みデータはあくまでも、デモとなります。曲単位で、僕の場合はどちらのケースもありですね」

――前回のお話でもありましたが、「スタジオと同等のツールが自宅に用意できる」という部分だけでなく、Web環境の変化もレコーディングを大きく変えましたね。

杉山「そうですね。演奏データのやり取りはもちろんですが、譜面をPDFで送ったり、MP3でデモを送って、『ちょっと聴いてみてください』という事も簡単に出来ます。インターネットが出始めた頃に『出来る』と言われていたことが、最近は普通に出来るようになったので、レコーディングが本当に楽になりました」

杉山氏のレコーディング風景。録音した音データの波形を編集中。ミキシング、ミックスダウン、マスタリングも、このスタジオで行われる

次のページでは、杉山洋介が「Intuos4」をレコーディングに活用する。