電子書籍が教育分野、特に電子教科書の領域で大きくブレイクしていくことが予想されている。教育ソリューションを手がけるXplanaが実施した最新の調査報告によれば、米国での教科書市場に占める高等教育での電子教科書の割合が2010年に1%程度だったものが、4年後の2014年には18.8%と、実に全市場の2割程度まで急成長するとの予測されている。一般向けの電子書籍に比べて教育市場での電子化は比較的相性がいいとみられるが、その理由はどこにあるのだろうか?
今後5年間での電子教科書販売シェアの推移予測(出典:Xplana) |
このデータはXplana Blogの「教科書出版社がデジタル世界でフォローすべき戦略計画の6つのルール」という投稿の一番下にある、「Digital Textbook Sales in U.S. Higher Education - A Five-Year Projection」というレポートへのリンクから確認できる。Xplanaが電子教科書ブレイクの理由として挙げているのが、環境面でまず電子教科書と電子コンテンツの登場と価格付け、学生の関心の高さ、そしてeラーニングの成長などにあるという。一方でこれらコンテンツを利用する媒体としてiPadなどのタブレット製品、ネットブックやChrome OS搭載のスマートブック、そしてスマートフォンの普及台数が増加しつつあり、この相乗効果がコンテンツの可能性を広げているようだ。
では2010年半ばの現状はといえば、そのシェアは0.5%程度だという。だが多くの出版社の参入が続くことで紙版の教科書の半分程度で電子版が提供されるなど、価格競争がシェアを躍進する要因となっているようだ。例えばFlat World Knowledgeでは昨年、オンライン版教科書を割引価格または無料で提供し、代わりに紙版またはPOD (Print-On-Demand)版教科書で稼ぐというビジネスモデルを打ち出している。またCourseSmartやMBS Directなども、現行の紙版教科書の2割程度が電子版に移行していくとみているという。こうした状況を背景に、2010年内で5,400万ドルだった市場が、2014年には11億ドル規模にまで成長するというのがXplanaの予測だ。
またこうした電子教科書とは、どういったものになるのだろうか。ReadWriteWebでは、その一例としてWolfram AlphaのiPadアプリと電子ブックコンテンツを紹介している。画面は元素記号の書籍だが、リファレンス機能と同時に、Wolframの検索機能を組み合わせてインタラクティブな学習が可能になっている。ReadWriteWebでは懸念として、こうしたインタラクティブコンテンツの制作は従来のコンテンツと比べてよりコストがかかることを挙げている。だが出版コストが少ないこと、そして流通における中間マージンが少ないことで、結果的に高騰した制作費を吸収できるのではと考えているようだ。