NTTドコモは18日、携帯電話の夏モデルとして20機種を発表した。同社の山田隆持社長は、注力する方向として「スマートフォンラインナップの充実」と「5つの商品シリーズの進化」の2点を挙げ、特にスマートフォンを今後さらに5機種投入することを明らかにしている。
多様化するニーズに多彩なスマートフォンで応える
山田社長は、「日本の携帯市場は大きな変化の時期を迎えている」と指摘。ユーザーの多様化するニーズの中で、中心となるのがスマートフォンだという。「スマートフォン新時代の到来」(山田社長)という認識だ。
ソフトバンクが扱うiPhone対抗として力を入れるAndroid搭載端末「Xperia」は「大変好評」(同)で、9月にはiモードメール対応、10月以降には現在のAndroid OS 1.6からOS 2.1へのバージョンアップを行う。
さらに、ラインナップの拡充として、QWERTYキーボード搭載のAndroid端末「LYNX」、 Windows Mobile 6.5.3搭載の「dynapocket」、BlackBerry搭載の「BlackBerry Bold 9700」の3機種を投入する。LYNXとdynapocketは、ベースはすでにKDDIが発表している「IS01」「IS02」と同等だが、特にLYNXはIS01とは異なるデザインとUIを採用したほか、ドコモマーケットなどの独自機能も搭載している。
これまでに同社が発売してきたスマートフォンを加えると、同社のラインナップは8機種となり、新たな製品カテゴリとして「ドコモスマートフォン」を新設。さらにラインナップを拡大していく方針だ。
スマートフォンラインナップの拡充の中で、山田社長は今年秋にもサムスン製のAndroid端末「Galaxy S」をベースにした製品を発売することを明らかにした。山田社長は、次回端末発表が「秋冬モデル」になるから、このタイミングで公表したとしており、それよりも早い段階で登場する見込みだ。このGalaxy Sを含め、ドコモではさらに5機種を追加するという。
スマートフォン向けのiモードメール対応に向けて、新たに「spモード」を9月にも開始する。スマートフォン(Smartphone)向けの「iモードに相当する」(同)サービスという位置づけで、iモードメールやフィルタリング、そしてコンテンツ決済サービスが提供される。
iモードメールは、専用アプリ上で送受信する形で、絵文字にも対応する。メールのプッシュ配信もサポートしており、機能的にはiモードメールと同等だ。iモードネットワーク側とは専用ゲートウェイで接続するということで、やり方としてはKDDIのEZwebメール対応と同じような形になるようだ。
コンテンツ決済サービスは、Android Marketでのアプリ購入などで、携帯料金と一緒に支払えるようにする。従来の携帯では一般的だったが、これをスマートフォン向けにも提供する。
そのほか、Android Marketのアプリを紹介するなど、独自コンテンツを用意する「ドコモマーケット」では、現在100コンテンツを提供するが、これを今年度中に700まで拡充する。
さらに、東京・丸ノ内に「ドコモスマートフォンラウンジ(仮称)」を夏にも開設する予定で、スマートフォンを体験したり、専門スタッフのコンサルティングを受けて、安心してスマートフォンを購入できる環境作りを行う。
山田社長は、ラインナップにおける「スマートフォンの比重を高めていくつもり」と強調。スマートフォンに注力していく方針を示す。
山田社長は、カバーエリアが広く安定した「高品質のネットワーク」と「充実したサービス」の2点を「ドコモ品質」と強調し、これに磨きをかけることで他社と差別化していきたい考えだ。
今年度100万台を目指す
ソフトバンクも注力するように、携帯業界でも無線LANの活用が進んでいる。ドコモでは従来、無線LAN内蔵の携帯をアクセスポイント(AP)として利用し、ほかの機器を接続する機能を提供していた。これまで2機種を投入したが、1つの端末しか接続できなかった。
今夏の新モデルでは、「N-04B」「N-08B」「F-06B」の3機種でAP機能を搭載。さらに4機種までを同時接続できるようにした。AP利用時は、通話やSMSの受信は可能だが、iモードのパケット通信は行えなくなる。それでも、パケット定額制の料金内でPCや携帯ゲーム機、iPod touchやiPadといった無線LAN対応機器で通信が行えるようになる。
これをさらに強化し、モバイルルーター「ポータブルWi-Fi」を投入する。バッファローとNTTブロードバンドプラットフォームが共同開発したもので、6月下旬から発売する。重さ105gのコンパクトサイズで、連続通信時間6時間、待受時間30時間を実現。ドコモの3G回線に加え、LANポートも備えるので、自宅の固定回線を使った通常のルーター利用も可能だ。無線LAN機器を最大6台まで接続できる。
これにあわせて、新たに「定額データプラン」の料金割引キャンペーンも実施。6月1日から9月30日までの間に契約すると、同料金プランの上限額を1,575円割り引き、契約月の翌月から1年間(全体では13カ月間)、上限金額を月額4,410円で利用可能になる。従来のデータ通信専用端末とポータブルWi-Fiが対象で、月額利用料を抑え、多くのユーザーに利用してもらいたい考えだ。この場合、2年契約を前提としているが、ポータブルWi-Fi自体は回線契約とは別に単体で販売されるため、定額データプランを利用しないならば、既存の携帯のSIMカードを挿して利用することも可能だという。
アップルのiPadの3Gモデルは、ソフトバンクのSIMロックが設定されるようになり、回線提供を目指していたドコモは肩すかしを食らった格好だが、「ぜひドコモの回線で(iPadを)使いたいという人はいると思う」(同)という認識で、ポータブルWi-FiやAP機能の提供によって、無線LANのみのiPadなどは、「FOMAネットワークをいつでも使える」(同)ようになる、と山田社長はアピールする。
山田社長は、10年度のスマートフォン市場を300万台と予測。その中で最大のシェアはiPhoneとしつつ、機種やモデルの拡充で力を入れ、100万台を獲得したい考えだ。