東京証券取引所グループは18日、同社代表執行役社長の斉藤惇氏による定例の記者会見を行った。斉藤氏は、決算書の虚偽記載で同日に上場廃止を決定されたエフオーアイの新規上場時の審査について、「東証としてできることはやった」と述べた。
報道によると、エフオーアイは、金融商品取引法違反(有価証券届出書などの虚偽記載)容疑で、証券取引等監視委員会の捜索を受けた。
東証によると、エフオーアイはこの問題で、5月16日、2009年3月期の財務諸表について、おおむね「上場時に提出した有価証券届出書に売上高を過大に計上するなどした虚偽の決算情報を記載し、粉飾額は100億円規模に上がるとみられる」との報道の内容のとおりである旨と、東証への新規上場申請書類においても虚偽の決算情報を記載し、上場申請時に提出し、上場承認を得た旨について開示を行った。
新規上場申請書類に記載された虚偽の内容は、会社の状況を示す最も基本的な情報である決算情報に係るもので、「その規模は同社の新規上場直前事業年度である2009年3月期の連結売上高118億円に対して100億円にも上るものであって、売上の大部分に係る極めて重要かつ巨額なものであったと認められる」(東証)。
東証は、「新規上場申請に係る宣誓書において宣誓した事項について重大な違反を行ったものと認められる」とし、エフオーアイの上場廃止を18日に決定。斉藤社長は同日の定例会見で、この問題について説明した。
斉藤氏は、「上場会社がこうした事態にいたったことは、大変遺憾なことである」とした上で、東証による上場審査において、監査報告書に監査法人による適正意見が記載されていることの確認や、受注から売上、入金にいたる実際の帳簿を参照して、売上高の計上に関する実務が適正に処理されていることを確認したことなどを説明した。
また、エフオーアイを推薦した幹事証券会社に対し、その推薦の理由などについて詳細に確認したことなども挙げ、「エフオーアイの審査において、上場審査基準に従って、ルール通りに行った」とした。今後の対応については、「直ちに審査内容などについて検証を開始した」ことを明らかにした。検証については、捜査機関などにより事件の全容が明らかになった上でさらに調査・分析を行い、その結果を生かして必要な対応を行う方針を示した。
記者からの、悪意を持って上場申請書類を偽って開示した場合、現在の審査のシステムでは見抜けないのかという質問に対しては、「東証は司法とか検察ではないので、引受幹事会社が持ってくるものを、我々は善意として受けなければならない」とし、「パーフェクトに(犯罪)を仕組んできた場合、東証だけでは見抜けない」と、犯罪を見抜く困難さを説明した。
また、「架空売上していたのではないかという情報が、審査の過程で外部から寄せられていたと聞いたが」との記者からの問いかけには、「あったようですね」とその事実を認め、具体的な情報提供方法に関する質問には、「紙で、投書みたいな形で来た」と明かした。
情報提供に対する対応については、「うちの審査の人は、情報の逆裏づけをして、ちゃんと(売上は)あるという結論になったようだ」と説明。「東証として、できることはやった」と述べた。